うさぎ

小説。 100。 最初。



男子校の寮はたいていがやがやざわざわしていて煩い。
 そのたびに寮長がしかりに行くんだけど、この寮だけはちょっと違う。
 どんなに騒いでも文句なし、門限破り当たり前。自由恋愛に門戸を開く。
 それは……それは、寮長でもある僕のルームメイトのせいっ。
「あゆむ……起きろよ、あゆむ」
 あれ、僕……眠ってたのか。
 腰と頭が痛くて、僕はぼんやり目をあける。
「あゆむっ」
「わっ、あっ……うさ…ぎっ」
 目を開くと顔面真正面のそこにはルームメイトの兎馬竜之介(とば りゅうのすけ)。
 幼馴染で、仲はいいのに、なぜか体格、性格は正反対の僕と兎。
 小さい頃は、兎も僕と同じくらいで可愛かったから、兎なんてあだ名をつけてあげたのに、今じゃプレイボーイって呼ばれるほどもてる。
 まぁ、兎にプレイボーイで、間違っては無いのかな?
 僕は慌てて二段ベッドの梯子伝いに上に来ていた兎を落としかける。もし、落ちたって死ぬ事は絶対無いだろうけど……そのかわり、僕に下される制裁は大きい。
「ご丁寧だなあゆむ。せっかく起こしてあげたっていうのに」
「ご……ごめん……あ、あれ?」
 僕は自分の周りの異変に気づく。
 だって、起こすって言えば朝だよね。けど、周りはカーテンを開けているっていうのに薄暗闇。まるで夜中みたいって思って、僕は愛用の目覚し時計を持って確かめると。
「ちょ、え、まだ夜の11時過ぎじゃんっ」
 正常な寮ならば消灯の時間。
 なのに、寮長に起こされる僕って……。
「お前、覚えてないの?」
 呆れて兎を見ると、兎も呆れて僕を見てる。
 覚えてない、って何を。
「だから、お前が寝る前に俺と何してたか」
 兎はその形の良い唇をいやらしく笑わせて、そう言った。
 寝る前、寝る前……えーと。
 学校終わって、放課後は図書委員の仕事が少しあって、それ終わってから弓道部に顔出そうと思ってたら兎にあって……。
「あ――っ」
 僕はすっかり頭から抜け落ちていた部分を思い出して、かぁあっと顔を赤くする。
「そだ僕、高橋君に呼ばれてたから部室に顔出そうと思ったのに、無理やり兎がっ」
「そ。俺が無理やりあゆむを気持ちよーくさせちゃったから、すっかり高橋のことなんて忘れちゃったんだよな。めでたし、めでたし」
 全然めでたくないっ!
 っていうか、高橋君何か大事な話があるから絶対来てくれって言ってたのにっ。なんで弓道部でもない兎が今日に限って弓道場に向かう道に……。
「まだ11時だよね。高橋君起きてるかな……僕、ちょっと」
 僕が二段ベッドの階段を暗闇の中下りようとすると、兎はちょっとムッとした顔でこっちを睨みつけてきた。
「お前……今、11時過ぎてるってこと知ってるよな。消灯の時間なんだけど」
「そんなの兎だっていつも守って無いじゃんっ」
「それは、兎が可愛い声で『もっとぉ』とか言うからだろ」
「い、言ってないよ、そんなこと」
「いーや言ってるね。だから、俺は寮長なのに仕方なく起きててやってるんだろ」
 これ以上兎と話してても絶対無意味!
 そう思った僕は、階段をジャンプして下りると、靴を履こうと部屋の玄関へと向かった。
 けど。
「え」
 固まる僕。
「まぁ、お前がどうしても今すぐ高橋の部屋いかなきゃなんないっていうのなら話は別だけどな。その格好でもいいんだったら」
「よくないっ!!」
 玄関のすぐ横には姿見の大きな鏡があるのだ。
 ほら、学校行く前に身だしなみ整えられるようにね。
 で、今その姿身に映った自分の格好を見て、僕は本気で兎を殴りたいと思った。
 もちろん……僕が殴ったって兎にはなんの痛みもないんだろうけどさ。
 でも、うん……矢で射ればどうにか……。
 って、そんなの考えている前に、その前にコレっ!コレなんなのさぁ。
「……何、コレ」
 このまま部屋を出る事は諦めて僕が踵を戻せば、兎は余裕の表情で自分のベッドに腰掛け両手を開いて待っている。
「うさぎコスプレグッズ。1万8千円、お買い得商品だろ」
 そう。僕の格好といえば、ピンクの長いウサギ耳を頭につけられて、ピンクのファーのついた短めのへそ出しタンクトップに、ももの上までしかこない超短い短ぱん。そして、足と手にはピンクのフワフワの靴下と手袋が。
 ってか、目覚し時計持った時点で気づこうよ……僕。
「無駄遣い……」
「何言ってんだよ。セックスの醍醐味だろ、コスプレは」
 僕には二万近くも僕に着せるためだけにつかえる兎の頭の中がよくわかりません。
 だって、僕だったら二万円あったらまずゲーム買って、お菓子かって、ちょっと遠出して買い物もしたいし。
 なのに、兎はそういうのにはまったく興味なくって、いっつもいっつも変なものばーっかり買ってくる。
 そして、それを試されるのは決まって僕なのだ。
「ねぇ、もう脱いでもいい?これ……嫌なんだけど」
 僕は女の子みたいに綺麗な顔立ちねって良く言われるけど、そういう趣味は断じてない。むしろ、嫌いなくらいなんだ。
 小さい頃から冗談半分でからかわれてきたから、こういうイタズラは今でも本当に嫌。
 学園祭やなんかでよく女装コンテストとかあるけど、僕絶対断ってきたし。
 兎もよく僕にこういうコスプレグッズを買ってきたけど、今まで絶対着たことはなかった。
 まさか、寝ている間に着替えさせられるなんて。
「駄・目」
「ぁっ、ちょっ、うさ…ぎ……やだって、さっきあんなにいっぱい……」
「忘れるようなウサギにはお仕置きしないとな」
 僕は兎に強く手首を引っ張られて、驚くほどの速さで兎のベッドの兎の胸の中に。
 いくら僕だって、記憶がおぼろげでも、身体がどんなにねちっこくエッチされたかはちゃんと覚えている。
 げんに、腰や頭が痛い。
「っ……兎…明日起きれなくなるってばっ」
「大丈夫。明日は創立記念日でお休みだから」
 そ、そういえば先生がそんな話をしてたかも。
 だ、だからって……。
「……ひゃぁっ…ぁっ……」
「ふぅん、本当……身体って正直だよなぁ……気持ちよければ、そう表現するしかないもんな」
「駄目…って……さっき……ぁあっん」
 兎の冷たい指が僕の胸の飾りを弄くって、それだけで僕は嬌声を漏らしてしまう。
 兎はどうなのか僕は知らないけど、僕は兎に一人エッチの方法まで教えてもらったくらいで、本当に兎以外の人に触られたことなんてなくて、だから、兎が触ると過敏に反応する癖が身体に染み付いているのだ。
「っいや……あっ、そこ舐めちゃ…」
「あゆむって……体中どこも甘いよな」
 太もものあたり舌で撫でまわすように舐められて、僕は左右に大きく首をふる。
「甘…くぅ…ないっ」
 人の身体が甘いなんてことそんなの僕は信じないけれど、兎はよく僕の身体を撫でたり舐めたりしながらそういう。
「ぁあっ痛い……」
 甘いなんてことあるわけないと思いながら、兎の与えてくれる快感に身を捩っていると、兎はいきなり今まで舐めていたそこを吸い上げる。
「駄目ぇ……痕…あとがついちゃう」
 兎はよくエッチの最中に僕の体中にキスマークをつけようとする。
 痕つけられるとみんなと一緒にお風呂に入れなくなるんだ。だって、ほらみんなにキスマークなんて見させられないし。
 この寮はお風呂共同だから、本当に困るのに!
 お風呂だけじゃない。体育の着替えの時だって、首から赤いマークが見えちゃうと、思春期の集まりだもんどうしてもキスマークしか言いようがないじゃんか。
 誰も蚊にさされたなんて言い訳聞きやしないんだから。
「こんなとこ…誰かに見せるのかよ」
 オクターブ低くなった兎の声がして、僕はビクッと身体を縮める。
「み、見せるわけないだろ……そんなっ、んんっ……ぅんっ」
 舌の先が、ももよりも更に奥の部分を軽くペロリと舐める。
 体中が一本の糸になったようでその一部分が揺さぶられると、全てが揺れる。
「どうだか……お前、高橋に呼び出されてのこのこ会いに行こうとしてるしな」
 のこのこって……だって、用事があるって言われれば普通会いに行くでしょう。
 なのに、なんでそんな……。
「ああっ……っ……ぁあっ」
「……高橋もかわいそうにな。惚れたヤツがこんな鈍感で」
「何、何ゆって……ひゃっ、あ、も……駄目それ……っ」
 入り口をぐちゅぐちゅと指で遊ばれて、僕は耳も口もつかえなくなって、ただただ兎の指とあわせて喘ぐだけ。
「俺が一番かわいそうだけどな」
「うっん……何…を、ぁああっ……ひゃあっ」
 兎の長い人差し指が僕の小さな入り口から入り込んで中の襞を弄ぶ。
「お前はどうせ俺がどんな気持ちでお前を抱いているなんて知らないんだろ…」
「ぅあうう……ひゃっ、あぁん、うさぎぃ……」
身体を反転させられて、まるで獣のように指で中を犯される。
 気持ちいいのと痛いのとが混ぜあって頭の中がぐちゃぐちゃになる。
「気持ちよければ誰でもいいんだろ……お前は…」
「っん……ァアッ」
「俺がお前を――……」
「アッ、んんぁあ――」
 兎が何か言いかけた言葉を遮って、僕は後ろを指で弄られただけで欲望を放ってしまった。
 その欲望を舐め取りながら兎はため息一つついて、少し落ち着いた僕の耳元で恐ろしく囁く。
「――お前、このコスプレまだ終わりじゃないって知ってたか?」
「ぇ」
 荒ぐ呼吸の合間からそんな間抜けな言葉を漏らせば、苦しい姿勢で振り返り見た兎の顔は鬼か悪魔のよう。
 そしてその小悪魔の手にもたれていたのは、なんだか変な形……のもの。
 まさか、これって。
 ね、まさか……。
「しっぽ」
「しっぽ……って」
 確かにしっぽみたいなんだけど、そうなんだけど…。
 何かしっぽの後ろに大きなものがついてるんですけど。
「そ、それってヒモとかで腰につけるんじゃない……の?」
 絶対違うだろうけど、神頼みでそう聞いてみる。
「何言ってんだよ見ればわかるだろ。お前のソコに挿れるんだよ」
 そうかなとも思ったけれど、やっぱりそういわれると信じられない。
 最低!最低!そんなの入るわけないじゃんっ。
「い、嫌だっ……やっ、はいんない……はいんないって」
「俺のより小せぇよ、大丈夫だっての」
「いや、あっ……アアーッ」
 ぐちゃぐちゃと言う生々しい音を出しながら、バイブが僕の中に埋め込まれていく。そのバイブの身体から出ている先端の部分には服や耳とおそろいのピンクのファーがついているから、本当まるで丸々としたピンクの兎の尻尾が揺れているよう。
「ぁうっ、アアッ、んっ、も、いやぁっ」
 恥ずかしい以外のなにものでもなくて、僕は枕に顔を埋めて弾むように出てくる声をどうにか抑えようとする。
「ぁっ、も、嫌いっ、嫌いなんだからっ、うさぎーっ」
 体中に再び熱いものがこみあげてきて、僕は我武者羅に兎に文句をぶつける。
 なのに、兎は幸せそうに笑って、優しい声をだした。
「嫌よ嫌よも好きのうち、だもんな」
「ち、違うそれっ、あぁっんん……ひゃあっ…」
 勝手な解釈で悦に入った兎にバイブの連動を早くされて、僕はただ高くあげた腰を揺らすだけ。
 バイブは今まで何度か兎に試されたことがあったけれど、いつも僕が嫌がるから結構すぐに抜いてくれたのに、今回は長い。
「嫌だぁッ……取って……お願……取ってよぉ…」
 僕は枕に必死にしがみつきながら、兎に取ってくれるよう懇願する。
 確かに、バイブは気持ちいいのかもしれないけれど、僕はどうしても苦手。
 固くて冷たくて、なんだか無機質な気がしてならないから。
「なんで嫌なんだ」
 兎に聞かれて、僕は少し考える。
「だって……ぁっ……これ違うっ…」
「何と違うって?」
「う……うさぎじゃ……ない……っ、やぁ、恐いっ」
 機械で身体を弄られて達くなんて嫌だった。
 なんでだかはわからないけれど。
「なんで恐いんだ、これでも気持ちいいんだろ」
「ぁあっ……そだけど、でも、嫌、恐い……うさぎがいいっ」
「俺じゃなきゃ……嫌?」
 そう兎に問われて、僕は再び悩む。
 兎じゃなきゃ嫌だなんて考えたことなかったけど……。
 でも、それは他の人とこんなことするなんて考えた事もなかったから。
 兎以外の人に身体を触られたいなんて思ったことも無い。
「兎がいいっ……兎じゃなきゃ……嫌ぁ……」
 朦朧とする意識のうちでそう叫べば、その視界の隅に本当に優しく僕を抱きしめる兎を見た気がした。
「俺も……あゆむじゃなきゃ嫌……なんだ」
「アアッ、アッ……も、嫌取ってぇ……っ」
「ああ、そうだな。俺も限界だし、少しはお前が俺のこと思ってるかもって思えたし」
 僕が只管淫らに喘ぐ事しかできなくなっているのに、それでも兎は自分に言い聞かせるように何かポツポツ呟いていた。
「はあっん」
 大きな圧迫感とともにバイブ式ウサギのしっぽが僕の中から抜かれたと思ったら、今度は兎の大きなソレが僕の中に入り込む。
 バイブより1,5倍は大きなソレなのに、身体の中に入り込んだその瞬間に、感じる快感の大きさの違いに驚かされる。
 指先一本に至るまで、兎に支配される感覚。
「ぁっ、あ兎っ……うさぎぃ」
「んっ……やっぱりお前の中……一番興奮する…」
「ぁ、アアーッ」
 限界を訴える僕の高い鼻にかかった声を聞いて兎はニッコリ笑う。
 その瞬間、僕の中で兎も白濁とした液を放っていた。

「早く気づけよ……」
 幼馴染で、学校もずっと一緒で、寮まで一緒で、近すぎた僕たちはまだ恋の告白もしていない。
 まして、兎は僕の甘い心が育ち始める前から身体の関係を教えたから……不安でどうしようもないらしい。
 言ってくれないのは自分だって同じくせに。
 僕は少し起きていたけれど、眠っていると思っている兎のために眠ったふりをしつづける。
 こうでもしなきゃ、兎は本心なんて言ってくれないんだ。
 僕は兎みたいに器用じゃないから、言ってくれないとわからないのに。
「……あゆむ……愛してる」
「!」
 どんなことされても、どんな言葉かけらてもやっぱり許しちゃうのは、何か理由があるのに。
 僕も、って言いそうになって僕はぎゅっと言葉をこらえる。
 朝がきたら言ってみよう。
『兎、おはよ。大好きだよ』って。
 そうしたら兎はどんな顔をするんだろ……。
 兎は一般的に寂しいと死んじゃうっていうけど、幸せだとどうなるんだろ。
 いっぱい生きるのかな?いっぱい元気になるのかな。
 そうだといいな。
 そう思いながら、僕は幸せの中瞳を閉じた。

 終わり。


『田中感想』
こにゃにゃちわ〜。田中です。
うわ〜……間が開いちゃいましたね、この100のお題。みんな順番なんて考えず好きにやっているみたいですが、田中はそうするとわけがわからなくなりそうなんて(お馬鹿なんでw)順番ずつやってて、『う、うさぎぃ〜』でつまづいてました。
 いや、うさぎっていえば結構使えそうな題材だったんですけど、むしろイロイロ浮かんじゃって一つにならなくって。最初は、全開が甘エロ(あまあまでえろえろw)だったんで、今度はシリアスで行こうかなって思ったんです。けれど、そうなると話が本当くどくどとなっちゃって、エッチ出てこないしw、なんだかズドーンとした話になりそうだったので、甘エロで行ってみました。どうだったでしょうか?(^^)
 全寮制学校で寮長(幼馴染)×ぼけてるけど結構しっかりものの受けでした。w
 寮長って結構美味しいなぁと思ってしまって、全寮制物書くなら寮長で行こうと思いましたw
 ちなみに高橋君は、前前からあゆむに気があった弓道部員で、うさぎはひやひやしていたようです。
 宇佐美という人はよくウサギとあだ名がつけられるので最初そっちにしようかと思ったのですが、やっぱり違う名前の方がいいと思ったので兎馬(とば)でウサギ君にしましたw
 竜之介とか古風な名前は大好きなのでこれからも登場しそうです。
 
 感想待ってます(^^;)





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