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● 水曜日の秘密のお仕事番外編。 --- 恋する日曜日。 ●

夏も終わろうとしている頃、クーラーが利きすぎて寒いくらいのこの家の……家というよりは、御屋敷と言った感じのこの二階の一角で、藤岡霞(25)は、額から汗を滴らせ、必死に声を押し殺していた。
「……っ…ふっ…時緒様ぁ…」
 淫らと呼ぶには各が違いすぎる。
 着ていたはずのスーツは、くしゃくしゃになって広すぎるベッドの下に落ちている。そして、中に着ていたワイシャツは、ボタンが2、3個弾け飛び、霞の真っ白く、触り心地の良い肌を滑らかに見せつけていた。
 喘ぎ声ともとれる霞の艶めいた声で呼ばれた男は、至福の笑みを浮かべると、霞の肌に吸い付いた。
「ァア……ッ」
 自分を組み敷いている人間が急に動いたせいで、もとより繋がっているその部分に振動がおこり、自分でもわからない一番敏感な部分が擦れ、思わず口から声が漏れた。
 霞は白い肌に黒い瞳。そして真っ黒い髪の純日本人だったけれど、その美貌はテレビで活躍しているアイドル顔負けで、そして可愛さではなく不思議な魅力があった。
 女性的とも言われるその顔立ちは、けれど女性には見えず。
 頬のラインや顎のラインは、欲情してくれと言わんばかりの魅惑的な骨格をしていた。
 声を漏らした事に、羞恥を覚え、顔を真っ赤にし指を噛む霞のその指をはずしながら、時緒は甘い声で囁く。
「霞は恥ずかしがり屋だね。相変らず」
 セックスの時って、フルマラソンくらいの疲れがたまるらしいのだけれど、君島時緒(20)にとって、霞を抱いている時こそが一番の幸せで、そしてそれ以上の事なんてないのだから、呆れるくらいの執着で霞を抱き続けていた。
 霞が家に帰ってきてからだから既に5時間は経過しているだろうか。始めは玄関で。その後お風呂で2回。その後濡れたままの二人は縺れ込むようにベッドに倒れ、そのまましつづけているのだ。
 もともと体力のない霞は、5時間ほとんど繋がりっぱなしのため、息はあがり、その上仕事が終わってすぐだったため、眠気もピークに達していた。
「でもね、悪いのは霞だよね。ね、言ってごらん。俺とセックスしたいんだよね」
 セックスと言う直接的な表現の苦手な霞は再び耳まで真っ赤にした。
「どうしてそんなに恥ずかしがるかな。セックスも、それ以上も……いつもしてるのに」
「時雄様っ……ぁあん……あっ、いやっ、あっ」

 藤岡霞がこの大富豪君島家にいるのには理由があった。
 その昔、霞が中学校に入ったあたりの頃、霞は両親に売られた。
 その当時の君島家はとても貧乏で、子供を育てられなかったのであろうと考えられなくもないが、その後手紙一つ届かず、迎えにも来なかったところを見ると、金で売り払われた厄介物…だったのだろう。
 そして、その霞を買ったのがこの君島家だった。
 名目は、『君島家一人息子、時緒の愛玩人形になること』だった。
 霞は、その事をずっと心の重しとしながらも、恋仲になった二人は、ようやく今その柵も取れ、普通の恋人らしくなってきた……の、かな?

 「……と、時緒様ぁ…僕、あの、も、駄目っ」
「霞、ちゃんと言ってごらん。俺が怒ってるのを霞ならちゃんと知ってるよね」
 知ってます。
 知ってますよぉ……。
 だって、普段はそれでもまだ僕の体力に合わせてくれてるでしょ。
 でも、今日のお怒りは……駄目、収まらないみたい。
「僕が……土曜日なのに出勤したから……?ぁっ」
 足の腿の間を弄られ愛撫されるたびに、口から辱めいた声が漏れる。
 霞は近くにあったシルクのシーツを噛みながら、必死に甘ったるい自分の声を塞ぐ。
「そうだよね」
 時緒は霞の口元からソレを強引に引っ張り、態勢を変えて腰を突き上げる。
「ああぁっ……うぅん……はぁん」
 痺れるような感覚は、幾度この行為をこなしていようども、身体に甘い刺激を運んでくる。
 壊れかけた脳細胞を呼び覚まされるようなその激しい動きに、霞は獣のような格好で、必死に後の時緒を見つめ返す。
「ご、ごめんなさ……い、でも…でもっ」
「『でも』何?」
 時緒様のお声はいつでも落ちついていらっしゃって、こんな時でもすごく大人な声なんだけれど、僕はわかるんです。
 時雄様……本っ当に怒ってる…。
 時雄様は本当に怒れば怒るほど、その怒りをお隠しになるから…。
 みんなには気付かれにくいけれど、僕は、やっぱりわかっちゃうんです。
「……今日は、竜馬……しゃ、社長から…っああっ」
 竜馬、とついうっかり言ってしまった瞬間、霞の中の時緒は重量を増し、霞の中を乱暴に動いた。
 竜馬と言うのは、霞の勤めている会社の若社長で、霞の高校からの同級生だ。
 霞の事が好きだった……らしいのだけれど、その思いを断った後でも霞とは今だ親友で、霞の唯一の友達でもある。
「社長が……打ち合わせがあるって……急だけど…ごめんって……っ」
 金曜の晩、お風呂を終えた霞が時緒の部屋に呼び出された瞬間、霞の部屋の電話がなり、その事を告げてきた。
 話途中で切られその上、その後動けなくなるくらいまで攻められた霞は出勤なんてかなり無理な状況だったけれど、会社を休むなんてできない律儀な霞は、動かない体に鞭打って出勤し、先ほど7時過ぎ帰ってきたのだ。
 それからずっとまたエッチしてるから、随分身体に負担がかかっているのは言うまでもない。
 それでも、霞は時緒になかなか逆らえないのは、今だ霞の胸のうちに自分は買われた子供だと言うのがあるからなのだろうか。
 その事は既に解決済みのはずなのだが、霞にとって、やはり自分は異端児で、そんな自分をこんなにまでも愛してくれる時緒は、自分にとって、とってもとっても……大切な存在なのだ。
「……打ち合わせってなんだったの」
 時緒に尋ねられ、霞は思わずキュっと喉を鳴らした。
 それは、その問いに素直に答えられない事を意味し、時緒はそれを瞬時に悟った。
「……俺に言えないお仕事?」
 怒っているような、馬鹿にしているような感じで鼻で我々ながら問われ、霞は当惑したように顔を背けた。
 霞は以前、自分を買ったお金を返し、自由になって時緒を愛そうと思い立ち、二千万円溜める為、夜のお店、いわゆるお水で少し働いていた事があったのだ。
 もちろん、時緒には秘密で。
 まぁ、それは霞をスカウトした人が良い人で、霞を大切にしてくれたおかげで、霞は悪い男に手をかけられずにすんだんだけど。
 もし、霞が誰かに触れられていたら、この嫉妬深い君主時緒は、霞を二度と外に出さなかっただろうけど。
「ち、違います……あの、本当に普通の仕事の…っ」
 霞が戸惑ったように言い分けをしようとすると、今度は時緒が自らの大きな手で、霞の口を塞ぎ、押しこんでいる欲望をギリギリまで引きぬくと、最奥まで虐めるように挿入した。
 狭い霞の身体の中に、再び大きな圧迫が感じ、霞は口を抑えられているにも関わらず、声が漏れそうになり、苦しそうに顔を歪めた。
「ン――ッ……っ!」
 それが罰である事は霞にはわかっていた。
 土曜日なのに出勤し、あまつさえその理由がなんだったのか話せないような不貞な僕に、罰を強いていらっしゃるのだ。
 それはわかってるんですけどぉ……。
 痛い、じゃなくて、恥ずかしいの方が強い時緒様の罰は、本当に、本当にいつでも慣れなくて……。
 恥ずかしいコトを言わせようとしたり、あ、あんなコト…したり…。
 っ…!!
 そ、それでも僕はどうしても言いずらいんです…今日のお仕事のコトは。
 だって、だって…。
 絶対、絶対時緒様許してくれない…から。
「普段の仕事だって……普通かどうか怪しいけどね…?」
「ぇ…?あっ…ソレ駄目…っアアッ」
 霞の口から言ったわけではないけれど、時緒は竜馬が霞を慕っていた事をしっているようだ。しかも、現在進行形で考えてしまっている為、どうにもこの事については絡んでくる。
 もう……違うのに、竜馬とは…。
 時緒様と繋がったままで、身体をぐるりと反転させられ、今度は時緒様と向き合う形で抱かれる。
「……フゥッ……っ……ヒャッ、アッ時緒様ぁ、時緒様ぁ」
 繋がったコトにより、大きく開かれた秘部の周りを唾液でたっぷり濡らした指でなぞられると、頭が真っ白になりそうなってしまいそうだった。
 霞が達まえだというのにぐったりとベッドに肢体を投げ出すと、時緒は無理矢理自分にしがみつかせ、霞の耳朶を噛みながら、甘い声で恐ろしげに囁く。
「早く言わないと、抱き殺すよ?」
 言葉を聞いた瞬間に、霞はビクッとあからさまに身体を跳ねた。
 抱き殺すコトなんて実際ありえるのかどうなのかわからないけれど、時緒様ならやりかねない…んです。
 現に今まで、本当に死んじゃうかも…って思っちゃったくらい…その、あの…離してくれないコトあったし…。
 霞があまりに可愛らしい反応を見せるものだから、時緒はクスッと小さく笑い、 霞をベッドに押し倒す。
「ほら、言うの?言わないの」
「〜っ!……ぁっ…」
 悩みに悩み憂いている霞の表情は極上の色香を放つ。
 その上、抱かれている真っ最中なのだから、普段白い頬には赤みが混じり、淡白そうに見える霞の普段から想像もつかないくらい欲情しているのが見て取れる。
 霞はそれが時緒様に伝わらないように、自らの手で顔を隠すと、小さく謝った。
「ご……ごめんなさい。すみません…時雄様……」
 うわ言のように何度も何度も謝る霞に、時緒は少しだけ身体を離すと、汗ばむ霞の可愛らしい胸の突起に齧りつく。
「何をそんなに謝るの……?俺のお姫様は…」
 霞の身体は幼い時から時緒様に開発され、どこもかしこも敏感なのだけれど、その中でも敏感な方に入る胸の飾りの上で囁かれて、そこに吐息や歯があたるたび、霞は切なそうに息を吐く。
「あの……あの、僕ぅ…っ」
 今日の打ち合わせのことを話そうとした瞬間、時緒は霞の腰を抱えなおし、奥まで突き上げた。
 まるで、霞のその後の言葉なんて聞きたくない、とさえぎるかのように。
「駄目…ッ、あの、僕今度…っ……アアッ」
 舌足らずだった言葉すら紡ぎ出せなくなった霞の口から漏れるのは、既に嬌声か喘声か。
 時緒は少しだけしかめ面しながら、霞の身体を突き上げ続ける。
「……俺も甘くなったね……霞」
「っ…え?あ、アアーッ!!」
 ずっと繋がりっぱなしだったソコの中に、大きな欲望が放たれ、霞は真っ白い快感にドップリと浸かりながら、そのまま大きなベッドの上に意識を手放してしまった。
 時緒は小さく息づき瞳を閉じる霞の額にキスをすると、抱きしめながら土曜の夜を慈しんだ。

 「ええっ!」
 ベッドから起きた霞は、時緒がいらないから寝てろ、と言ったのも聞かず、メイド精神が働くのか、モーニングコーヒーを淹れてくると、時緒様に渡した。
 もちろん、時緒の分だけ。
 時緒は一口だけ飲むと、自分よりも声を枯らしているだろう霞に手渡した。
 そして、そんな霞がコーヒーを落としかねないような話題を、吹っかけたのだ。
 案の上、ベッドの中でしかほとんど叫ぶことのない霞が、大きな声で驚いていた。
「だから、俺知ってたよ。だって、霞が帰ってくる前に、アイツから電話あったから」
 アイツ…というのは、竜馬のことなんだろうけど。
 りょ、竜馬がまさか電話してるなんて〜……。
「今度の出張に霞を借り出したいから、一泊二日貸してください、って」
「……すみません……昨日、言えなくて…」
 でも、言えるわけない。
 だって、霞は執着心と独占欲の塊のような時緒の性格のため、修学旅行や友達との小旅行にすらこの歳になって行ったことがない。
 いくら、親友の会社安斉コーポレーションは宣伝会社だと言っても、いままで小さな出張に借り出されそうになったことは何度もあった。
 ただ、それはやっぱり時緒様にお尋ねしても絶対断られるだろうから、霞は事前に断っていたのだけれど。いろいろ良い訳をいれて。
 でも、今回の出張はどうしてもいきたかったのだ。
 普段は社長秘書の霞は、大きなプロジェクトに参加することはない。だけれど、霞の聡明な発想力と、霞自身のやる気が幸を呼んで、前回出した企画が向こうの会社に抜擢されたのだ。
 そして、その詳しい打ち合わせを依頼者のいる方で行うことになり、霞をご氏名で呼んで来たのだ。
 とっても行きたい……のだけれど、時緒様が許してくれるか、これだけが霞の心配だったように、竜馬にとっても心配だったのだ。
「……行きたいんだ?霞は。俺と離れる事になってでも」
「あ、あの僕……時緒様と離れるのは……とってもとっても淋しいです……でも」
 普段霞は時緒に意見を言うことは少ない。
 それは霞が時緒に遠慮しているとかではなくて、単に霞の性格上の問題だけれど。でも、だから、こうやって言葉を続けることは珍しかった。
「でも?」
 笑って尋ねる時緒様の顔が怖い……。
 で、でも言わなきゃ…。
「僕、行きたいんです……」
 言ってしまった。言ってしまった!
 霞は不安になりながらも、ベッドに座る時緒をジッと見つめた。
 駄目だ、って言われるだろうけど、怒られるかもしれないけれど、それでも僕は時緒様にこうして自分の気持ちを打ち明けられただけでも―――。
「……部屋は別々、それに一泊だけ……」
「ぇ?」
「泊まるホテルの部屋は霞用に俺がとってあげる。それなら安心だしね」
「そ、それって…」
 時緒は霞の驚いてまた落としそうなカップを受け取ると、一口飲んで、ベッド脇のチェストに置く。
「……行って良いよ」
「時雄様っ!」
 時緒は霞の手を取ると、チュッと口付した。
「霞が……仕事すきなのは知ってるし、霞が仕事をがんばってるのを、俺だってちゃんと知ってるんだから、ね……」
 少しだけ怒っている感じに言われ、霞は時緒に抱きついた。
 霞は普段、声に出して愛しているとか、好きとか言わない。ううん、恥ずかしくて言えないのだ。
 だから、こんな風に抱きしめてくることなんていままでなかったから、時緒はびっくりしたような顔をした。
「……ありがとうございます…っ」
 嬉しくて仕方がないと言う風な顔で抱きつかれると、時緒もこれ以上は何も言えなくなってしまったようだ。
 時緒は霞の顎指ですくい、恋人同士の深い口付をかわす。
「ん……っ…ふぅっ……時雄様ぁ…」
 一晩中愛を交わしたその身体は少しキスをしただけで、ねっとりと蜜が溢れ、歯列を舐めればドクンと心臓が揺らいだ。
 時緒様が自分の為に少しでも変ろうとしてくれているのが伝わってきて、霞は嬉しくて、必死に舌を絡ませる。
 それでも、この歯がゆい気持ちをどうして伝えたらいいのかわからなくて、霞はぎゅっと手に力を込め、時緒を抱きしめる。
 前の時緒は、自分が働きに出ることすら許してくれなかった。
 それなのに、今時雄様は、仕事を大好きな自分をわかっているとおっしゃってくれた。
 こんなに嬉しいことなんて、ない。
 時緒様と一緒にいられて、御互いの欲求を御互いが理解していられるなんて…。
 じゃあ、僕はどうしたら、時緒様の欲求に答えられるんだろう。
 どうしたら、こんな気持ちを伝えられるんだろう…。
 霞は少しだけ解放されたすきに口を離すと、その口を時緒を耳元に運び、時緒にしか聞こえないくらいの小さな声で囁く。
「いっぱい……抱いてください」
 霞が囁いた瞬間、時緒は霞をベッドに引きずりこみ、乱れたままのシーツの上で、昨晩よりも熱く抱き合う。
「霞、恥ずかしい?」
 真っ赤になったままの霞の顔に、愛しむように何度もキスをする時緒の傍で、霞は小さくうなずく。
「……可愛いよ」
「時雄様ぁ……っアアッ」
 せっかくの日曜日だけど、せっかくの日曜日だから、今日は時緒様とずっとずっと一緒にココにいるのもいいかもしれない。
 御仕事で忙しい二人の恋愛は365日続いているけど、こうしたのんびりした日曜日に深まるのかもしれない。
 これからどこまで一緒にいけるんだろう。
 僕はどこまでも時緒様についていきますから……。
 霞はそう思いながら、日曜日にたっぷり愛を育んだ。
 
完。
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