僕のお医者様

最初。 小説。



「あ、あの…やめてください」
僕は執拗に僕に触れてくる手を必死になって払いながら、引きつる笑顔で言った。
 なんで嫌なのに笑顔…?それは、ここが病院で、触って来るのが患者さんの一人で、僕は看護士だから。
 看護士って言っても、まだなりたて一年生なんだけど。
「ええやん、蛍ちゃん気持ちええ身体してんやもん」
「そんなの、説明になりません〜っ」
うう…。本当にそろそろやめてくれないと…。
 先生がきちゃうんだけどぉ…。
関西弁の彼。彼は長距離ダンプの運転手らしいのだけれど、神奈川のこの地で事故に会い入院。つまり、お見舞いには誰もこれない状況で……淋しいんだろうな。
 怪我をしちゃって不安だろうし。痛かったろうし。
 そのせいか、なんか僕を好いてくれてて。
 それはすっごくすっごく嬉しい。
 だって、僕、看護士なりたてでしょ?
 童顔ってのがあって、同じ看護士のみんなからも結構下に見られてるし…。絶対、先生たちの間じゃ…使えないって言われてるんだろうなぁ…。
 注射のやり方とか、すっごいすっごい勉強したんだけどね。これでも。
「ほ、ほら、そろそろ注射の時間ですっ。長谷川さん〜」
まだ腰と背中で不穏な両手を動かす手から逃れるように言う。
 けど。
「かまへん!蛍ちゃん注射上手やもん。失敗なんてせーへんって」
そ、そりゃ失敗はしないようにするけどぉ…。
 気になって集中できないよぉ〜。
 ね、お願い…本当にお願いだから…。
 先生が来ちゃうんだってぇ!
「強情やなぁ…蛍ちゃんは。自分、恋人いませんっ!って言うたやないか。ちょっとくらい触っても平気やろ〜?」
「へぇ…蛍君には恋人…いないんだ」
はうぅ〜…。
 バッドタイミング…というか、グッドタイミングというか…。
 長谷川さんがそう言った瞬間、背後からした、艶のある大人な低い声に、僕はビクンと身体をびくつかせる。
 ……うわーん。もう嫌!なんで、なんで、なんでぇ〜?
 入ってきたのは、もちろん…僕の担当先生でる瀬名 智臣先生。
 そして……僕の恋人でもあったり…して。
 じゃあ、なんで長谷川さんに恋人いないなんて言ったかって?
 言えないでしょ〜!普通。だって、僕も先生も男なんだよ!男。
 だからって、僕は先生を大好きだし、先生もなぜかこんな僕を好きだと言ってくれるし、二人っきりのときはいいんだ。
 けど、やっぱり…まだ…大きな声では、僕はいえないんだ…。
「あ、先生やん。な、先生も蛍ちゃんなら恋人にしたい思わん?」
そ、そんな話題振らないで〜長谷川さん!
「ああ、彼なら私も悦んでだね…。ただ、彼の方が嫌みたいだけどね」
僕の引きつる様を上から下から舐めるような視線で見ると、無表情で先生は言った。
「あ、あのっ……」
違うんです!そう言おうとしたのに。
「じゃあ、治療を始めましょう。蛍君、いつもの準備して」
「…………はい…」
先生は何も言わず長谷川さんの治療を始めてしまった。

 「あの…先生、先生…」
治療が終わり、綿や消毒、注射などが乗っているキャスターを押しながら、僕は先生の後を追う。
 さっきから、何度となく呼びかけているんだけど…全部無視で。
 ここまでくると…悲しくなってくるよ。
「先生…あの、僕……誤解なんですっ」
「誤解。へぇ…誤解も何も無いと思うけど。僕たちはただの医者と看護士だろう」
酷い…。そんなこというなんて。
 でも、そうとう怒ってる証拠だ。
「そんな…僕、本当に、あれは誤解なんですっ!長谷川さんに言ったことは…」
そう言った瞬間、先生はいつも右にいく分かれ道を、左に曲がった。
 僕の腕をぎゅっと握って。
 痛い…痛いですって。
 「せ、先生!?」
だって、そっちは……消耗品倉庫しかないんですけど〜……。
 先生たちには、一人一人こういった場所の鍵が与えられているんだけど。
 案の定、先生はそこをがちゃっと開けると、俺を先に強引に押しこんだ。
 中は結構広くて、未使用の注射とか、ガーゼとかが大量に入っているんだ。
「先生…」
ここなら落ち着いて話せるって思ったのに、先生は話すだけじゃすまないみたいだ。
 僕の看護士の制服…僕が大好きなこの真っ白の純白の制服を、胸倉を掴んで壁に押しやると、鎖骨が広がって見えるようにガッと引っ張った。
そして、そこに何度も何度もキスをして、何度も何度も吸いついていく。
 どうしよう!こんなの…キスマークだってバレバレになっちゃう。
 この制服…男用だし、真っ白だから、肌すら少し透けちゃうのにぃ。
「先生…ん…や…やめて、下さい」
ああん!どうしてさ…こんな状況なのに僕…身体が熱くなってくるの!?
 どうして、先生はこんなに格好良いのさ。
 僕は病院でやるのだけはいやだったから…。
 そのままひきはなすように、先生の頭を押しやる。
 その頃にはもう、僕の胸から首筋にかけて、真っ赤な花が咲いていて…。
「蛍はそんなに俺以外に身体を触られたかったのかい」
酷い!僕、先生以外なんて嫌だよ!本当だよ。
 だって、本当、先生と知り合う前は、女の子と普通に結婚して、あたたかな家庭気づくんだろうな〜って思ってたもん。
 今は……先生が好きだから、先生と結婚できたらいいな〜って思ってるんだよ!?
 そんな事実なんてあるわけない!
 僕は必死になって、首を左右にふった。
 でも、先生にそう思われてたのが悲しくて…目には涙が溢れてくる。
「…じゃなかったら、どうして恋人がいないなんていったんだい」
それは、だから…。
 でも、その回答は先生を怒らせるって僕は知ってるんだ。
 だって、今までだって、先生はいろんな人に、僕たちのことを公表しようとしてるから。それは、僕が一つ一つ全て誤魔化してきちゃったんだけど。
 先生が僕とのことやましいって思ってないってことはすごく嬉しいんだよ?けどさ、けど…僕は…まだ勇気がないんだ。
「ごめんなさい」
ポツリとそう謝ると、先生はそのまま僕を睨みつけた。
「俺は蛍のなんなんだろうね」
「何って…恋人にきまって…」
「公表できないような………ね」
うう…。先生怖いです〜…。
「違います!ただ…僕…そのとき、ちょっと急だったから恥ずかしくて…」
「俺は急に君との関係を聞かれても、恥ずかしくともなんともないよ」
それは、先生が世間の地位的にも高い場所にいるから…。
 僕なんて、なりたて看護士だよ?
「まぁ、そんな蛍には……お仕置き…だね。嫌というくらい、恋人の存在を教えて上げるよ」
「ぇ………」
ここ…病院なんですけど…。
 俺は迫ってくる恋人に視界を全て奪われた。

「嫌…先生…ああっ」
僕は、壁に押しやられたまま、純白の制服を剥ぎ取られて、その全てを先生に見せている形になってしまった。
 ううん、したのは先生なんだけどさ。
 でも、先生はもちろん少しネクタイは緩ませたけど、ちゃんと服を上から下まで着てて、僕だけこうで…なんか…ね。恥ずかしさ倍増…。
 しかも…。
「お願い先生…そこ…とってぇ」
僕の先生に弄られて膨らんだそこは、勝手に欲望を放たないように、縛られてるんだ。しかも…縛ってるそれってのが…採血するときに、二の腕のとこにまく、あのゴム製の紐って言うか、ロープっていうかで…。
「ひゃぁっ…んん…」
「まだ…達かせないよ。お仕置きだからね…」
先生はニンマリわらって、僕のそこを扱きつづける。上下にその細い指を絡ませて、いたぶるように…。
 先生は楽しんでるんだよ。僕がこんなに苦しんでるのに。
 酷い。酷いよ。
「それで、何もって来るんだっけ?」
「そこの棚の、ガーゼよ。全部よ。早くしないと、また婦長さんに怒られちゃうわよ」
人の声!
 看護士の吉田さんと、田中さんだ…!
 僕はびくっとして、思わず口を手で塞ぐ。
 けど、それはまた先生の機嫌を損ねちゃったみたい。
「……ふぅっ!!」
急に指が僕の中にねじ込まれる。
 ならしてたとか全然ないんだよ。乾いた先生のをぐいっと。それも一本じゃなかったみたい。ものすごい圧迫感が、僕の中にあるんだ。
「ひぃ…痛っ…」
声が漏れる。
 お願いです。吉田さん、田中さん!今度……お昼おごっちゃいますから、今すぐここからでてってください〜。
 それなのに、足音は刻一刻とこちらのほうに近づいてきて。
 ガーゼの棚は、丁度僕がよっかかってる棚の反対側なんだ。
 こんなにギシギシ揺れてて…ばれないわけ…ない…。
 僕はなんとか震える足を地面に立たせて、身体を支えようとする。
 でも、前も後も攻められて、頭が真っ白で。
「あった、これこれ。えーと…全部よね」
「さっきもいったわよ、あたし。全部よ。ほら、早く」
棚からガーゼの箱を運び出す音がする。
 お願い…早くぅ…。
「はい、これで全部です」
「じゃあ、鍵かけて出てきてね、吉田さん」
田中さんのやや明るすぎる声が倉庫に響いて、二人分の出ていく足音がする。
 ガチャン…。
 僕はほっとして、その場に倒れこんじゃったんだ。
 身体はもうくたくただし…。
 今日、当直なのに…。
 はぁはぁ…と激しい呼吸を続けている僕を、先生は再び立ちあがらせると、また壁に押しやった。
「先生!?」
もう解放してくれるんじゃないの!?
 まだ、だめなの!?
「蛍……君がしたことを悪いと思うかい?」
コクコク…。もうくたくたで、頭の中はぐちゃぐちゃで思考が働かなくなった僕は、されるがままって感じに頷いた。
「今度、長谷川にちゃんと言うね?恋人がいるって」
うん、言うよ。嘘つきません。だから…。
「達きたい?」
「ん…ぁ…はい…」
先生……の熱く猛ったそこが僕の足にあたって、僕は顔を真っ赤にする。
「じゃあ、お願いして」
お願い?
 「なんて……ですか?」
「智臣さん、愛してますから、それを僕の中に挿れて、扱いて達かせてくださいって」
え、え、ええええ〜!?
「い、言えませんっ」
それに…僕、病院では先生のこと、名前で呼ばないって決めてるんだ。これだけは、僕のポリシーっていうか…。
 じゃないと、仕事とプライベートがまざっちゃいそうで。
 僕、この仕事大好きだから。先生を好きなのと同じくらい…好きだから。
「先生ぇ…」
「ここで名前を呼んだからって、誰も君をせめないだろう?」
何度病院でこのやりとりしたっけ。
 でも、だめ!絶対だめ〜!
「でも…僕は…今は看護士で、先生は、先生ですっ」
「そう…君がそういうのなら…」
先生はそう呟くと、僕の中にいれていた指を抜き去ってしまった。
「ああっ」
しってた?挿れるときもすごい感じがくるけど、抜く時も…すごいんだよぉ。
 だから、こんな急速に抜かれると、痛い…んだ。
 僕が朦朧としていると、先生は白衣のポッケからごそごそと、太い方の注射を取り出した。
「せ、先生!?嫌、嫌ですっ」
「大丈夫、針のほう挿れるわけじゃないから」
そういう問題でもないです!それって医療器具じゃないですかぁぁ!
「今、君は看護士で、私は先生なんだろう?じゃあ、医者らしく注射してあげようね」
「んっ……あぁっ…ふぁあぅ」
ピストンの方を押しこまれて、僕の身体は叫びをあげる。
 だって、大きいんだよ、これ。
 僕、これだったら先生の指のがいい。だって、これ…ただの道具じゃない。
「ひぃ…あぁ…先生ぇ…お願い…これじゃない…の」
ごめんなさい。家ではちゃんと名前も呼びます。長谷川さんにもちゃんと言います。だから、だから、お願い!これ抜いてぇ。
「君は、指もだめ、名前を呼ぶのもダメ。ねぇ…私は君の恋人なのに何一つ許してもらえないのかい?」
そんな声出さないでよ。僕が悪いみたいじゃない。こんな格好させられて、こんなの挿入されてるのは僕なのに。
 それに、いつもいつも僕先生くらい体力ないのに、朝まで先生の好きにされてるじゃない。
 それなのにさ!
「ああっ…んあぁ…達きたい…です」
僕の震えるような擦れた声は、先生の何かを刺激したみたい。
「そう…そうなんだぁ…じゃあ、こうお願いしてみて」
そう言うと先生は、僕の耳朶を一回甘噛みして、その中に直接言葉が入りこむように囁いた。
「…!?」
言えないい!そんなこと言えない!まだ、さっきのセリフのがいい。
「言わないと、ここも達かせないし…もちろん、後はこの無機質な注射をいれっぱなしだよ。蛍、今日当直だよね?働けるのかな?このままで」
は、働けるわけないじゃないですかぁ!拷問です。こんなの。
 僕は目じりにたまった涙をこぼしながら、先生の白衣にしがみついた。
「お願い…です…」
けど、先生はにっこりほほえんで。
「お願い…だけじゃないでしょ。言いなさい」
「ふぅ…ぁぁ…」
「ダメ。私はこの頃君を甘やかしすぎたみたいだからね」
嘘つけ〜!甘やかしてたら、僕はこんな疲れきってません!
 でも、でも、縛られて圧迫されている僕のソコは、もう達きたい、達きたいって叫んでて、先走りの露を滴らせてる。
 限界が近いんだ。
 このままじゃ、僕、達けなくて壊れちゃうよ。
 僕は、唇を噛み締め、先生の白衣にその顔を押し付けた。
 見ないで!真っ赤になっちゃうから。
「せ、先生…の欲しい…す」
「ん〜……聞こえないなぁ」
「せ、先生のその大っきなお注射が欲しいですぅ」
うわ〜ん。僕もう、絶対病院でえっちしないからねぇ!
「よく言えました」
微笑んだ先生に僕は勢い良くつきぬかれる。
 それがあまりにも性急だったから、先生も限界だったんだなって思う。
 酷いよ、それなのに僕にあんなこと言わせるんだもん。
 その後、放送が入って、急患で呼び出されるまで、僕と先生はしちゃったんだ。
 ああ、本当…僕、こ〜んな酷いことする先生だけど…智臣のこと愛してるんだ。
 世界一格好良くて、世界一立派な医者で、世界一のやきもち妬きな僕のダーリン。
 本当は、僕の方が毎日毎日女の人に囲まれてる先生見て、やきもちやいてるって知ってるのかな〜?
 知ってるだろうね。先生は。
 なんたって、最高な僕の恋人だもん。



最初。 小説。


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