小説。 | 100. | 最初。

● 夜明け  ●

重い……。
 腰や背中に今まで覚えた事のない痛みを感じ、俺は目覚める。
 小さなシングルベッドとタンスとテーブル。
 それくらいしかない小さな部屋の、やっぱり小さなベッドの上で、俺は小さく寝返りをうった。
 横に眠るもう一人の男を起こさない為に。
「あ〜……やっちゃった……」
 シーツにくるまってもなければ、世界中の人にばれそうなほど赤くなる顔で言ってしまう。
 や、やっぱり小声なのは、隣の男を起こさない為だけど。
 なのに、そんな俺の気遣いなんてなんその。
 いきなり背後から抱きすくめられ、俺はうわっ、と大きな声で叫ぶ。
「おはよう。気分はどう……腰大丈夫?」
「ちょ、お前っ!起きてたのかよ」
「ああ、敦也の寝顔見たかったから、ね」
「ああって……」
 涼しい顔していいやがって〜。
 ちくしょう。
「こんな事なれてらっしゃる我が校美貌の生徒会長様は、平然となされてよござんすねぇ」
 嫌味たらしく言葉で噛みつけば、男はちょっと無言になる。
「……なんだよ」
 ベッドで無言で抱き合ってると、恥ずかしすぎてどうにかなりそうなんだって。
 って、起きあがってシャワーにでも行けばいいんだけどさ。
 それをわかってて、男の腕を払わない俺も俺か。
 急に、俺の背中に髪の毛の感触がフワリとあたる。
 いつもサラサラなのに、少しだけ汗ばんだ髪の毛は、やっぱりちょっと汗ばんだ背中に絡みつくようにしっとりとくっつく。
「上条…何してんだよ…」
 だから沈黙は苦手なんだってば。
「っ……くすぐ…」
 今度は耳元で呼吸を感じ、その後耳朶で吐息を感じる。
 生暖かい感触に首を竦めても、ぎゅっと抱きしめられた身体は離れようとはしない。
「――――」
「っ」
 小さい部屋には、俺たち二人しかいないのに、上条は俺にしか聞こえない、俺にすら聞こえないような小さな声で、俺だけの為に聞かせるように耳から直接脳に送りこむ。
「なっ…な、な」
「何?ほら、朝ご飯食べようか」
 やっぱり涼しい顔して立ちあがる上条は、そのまま階下のキッチンへと向かう。
「なんなんだよ〜……」
 動けないんだよ。
 動けるわけないじゃん。
 あんなセリフ吐きやがって……。

 何度も何度も頭の中を回転する上条の言葉は、甘く甘く甘すぎて。
 俺を一生狂わせる麻薬となる。

『こんな素敵な朝は初めてだけどね』

 本当なんだか嘘なんだかとれないプレイボーイの言葉に、それでも俺は翻弄されっぱなしで。
 だけど。
 今日が世界で一番な夜明けになったことは、言うまでもない。

終わり。

キザな素敵攻め×素直じゃない元気受け。
初めてエッチしたその夜明けは、とっても素敵なのです?
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