小説。 | 100. | 最初。

● 大丈夫か?  ●

パタパタといつも通り幼稚な足音が聞こえ、俺のクラス全員苦笑する。
 だって、ここはれっきとした男子高。
 こんな小動物か、女のような足音のするような場所じゃない。
 でも、許せてしまうのはそういうはそういうキャラだからだろうか。
「雪ーっ!うわぁ〜ん」
 足音の主は俺の教室に飛びこむや否や、教卓の前に泣き崩れる。
「今度はどうしたんだ〜、高山君」
「わかった腹痛?とうとう生理がはじまったんだねぇ」
「高ちゃん昨日のナスでもあたったんじゃないの」
「う、うるさいっ」
 俺のクラスのどうみてもガラの悪そうな部類に馬鹿にされながらも、涙をふきつつ高山は俺の元を目指す。
「雪ちゃんっ」
 明かに俺に助けを求める目は、どうみても……どうみても男子校高生じゃあないよなぁ……。
「雪ちゃぁ〜ん」
 さっきの輩のおふざけで呼ばれる名前が耳に入りこんできて、俺の堪忍袋の緒が切れる。
「来いよ、高っ」
「ゆ、雪ぃ」
「ひゅ〜!王子様の登場だぁ」
 俺はクラスメイト全てに苛立ちを感じながら、高を屋上へ連れ出す。
「馬鹿かお前。俺のクラスにくれば馬鹿にされることわかってんだろ……って、あ〜あ汚ねぇ顔。ちゃんと洗っとけよ」
 俺は高の涙でぐしょぐしょの頬を手で擦る。
「――で、今回はどうしたんだよ」
「…………テスト」
 高は長らく黙った後、小さく呟いた。
「テストって……期末か」
 今度は返事はなく、首だけで頷く。
「何個だよ」
「?」
「赤点。どうせ1個じゃないんだろ」
 毎度の事だと俺が聞けば、高は再び泣き出す。
「雪ちゃん酷い……俺だって俺だって……」
「何個だよ」
「……4個」
 おいおい。テスト8教科中4個赤点って、二分の一の確率じゃんかよ。
 馬鹿か、って言おうとしたけれど、高が再び瞳を潤ませてこちらを見ているので、ちょっと躊躇する。
「なんだよ」
「だって、だって……夏休みは雪ちゃんと初めての旅行だったのに……。りょ、旅行に行ったら普段は出来ないあ、あんな事やこんな事が出来ると思ったのにぃ」
 泣きながらそんな事を訴える高……。
 おいおい、何をする気だ!ナニを。
「馬鹿かお前……」
「ゆ、雪ちゃんって本当に俺を愛してる?なんだかいつも冷たいんだけど」
「赤点四つで、夏休み中補習の誰かさんに言われたくないね」
「うぅ……」
 確信を付かれいじけ始めた高は、俺にすら背を向け屋上に生えた雑草を弄る。
 ったく……。お前は本当に高校生か!
「別にいいだろ、旅行くらい。これからいつでもいけるんだから」
「ゆ、雪ちゃんっ!!」
 目の色変えた高は、俺の首筋あたりに腕をまわし、ぎゅっと抱きついてくる。
「った〜……馬鹿かお前っ!」
「馬鹿でいいもん。雪ちゃんになら馬鹿って言われても幸せ」
「あ〜……馬鹿」
 口悪くて、目つき悪いし、態度もでかいこの俺を愛している、大好きやら言ってくるこいつはどうかと思うけど。
 泣き虫で、頭悪くて、図体ばっかり大きなコイツを、可愛いとか思ってしまう俺も大分どうにかしてるよなぁ……。
「雪ちゃん愛してる〜」
「……ハイハイ」
 この状況を嬉しいと感じている俺……。
 大丈夫か?





★★★★★★★★田中の感想★★★★★★★★
えーと、ほのぼので行って見ました。
受け、攻めは内緒。どっちが受けで攻めがどっちかは、
ご想像におまかせします(^^)
旅行でする事っていったって、きっと、
「手を繋いで歩く」
とかそういうレベルなんでしょうねぇ……。
ふふふ。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
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