小説。 | 100. | 最初。

● 366  ●

清く正しい高校生が、昼間にカーテン引いた部屋でやることってなんだと思う?
 お勉強なんて……答えが出来るほど今の男の子たちは健全じゃあないみたいです……。
「お、お前学校ではやめろよなっ」
 授業終了と共に連れこまれたのは化学準備室。
 化学科の先生達は非常勤講師と呼ばれ、ホームルームが終わるやいなや帰ってしまうとわかっていての計画的反抗と呼べるだろう。
「なんでかな」
「……なんでって……」
 何いやらしい想像してるの?
 とか、
 何?義久ってばHな事してほしいの?
 とかからかってこないだけいいのか、悪いのか。
 いや、まだからかってくれた方が……。
 だって、これってどうみてもやる気まんまんの返事じゃないかぁ。
「お、お、お前ここが神聖なる学び舎って知ってるんだろうな」
 うろたえる俺の口から出たのは、精一杯の強がりだったはずなのに、何故だか時代風景が読めない文章に……。
「うん、だから白衣着てるんだろう?」
 ……そうか、そこを最初に突っ込むべきだったのか。
「直春!!なんでそんなモノ着てるんだよっ」
「……化学の先生と生徒って言うシチュエーションで、義久と馬鍬ろうかなぁって」
 ま、まぐわうってっ!
「し、しないからなっ」
 窓際にあるカーテンにしがみ付き、俺は絶対嫌だと拒否権を飛ばす。
 けれど、美貌の直春は普段かけていないのにわざわざ準備したのであろうフレームなしの眼鏡のずれを直し、憤慨する。
「なんで」
(なんでって……っ)
 学校でセックスしましょう、なんて誘いに乗れるほど、俺はまだ人生捨ててるわけじゃない。
「なんでわざわざ学校なんだよっ!い、家に帰ってからでも……良いだろっ」
 こんな場面で引かない事はもう既にわかってるから、妥協案を出してみたけれど、化学教師に扮した男は済ました顔で首を横に振る。
「帰ってる時間がもったいないだろう?まぁ、義久が電車の中で僕のモノを受けいれて電車エッチしてくれるって言うなら考えるけど」
「するかっ!」
「ね、でしょ。だから学校でエッチ。まぁ、今日は僕は先生と生徒シチュエーションやりかったからどっちでもいいんだけど」
 こ、この変態めっ……。
 初めて会った時に騙されたんだぁ。
 あの笑顔と物腰優しい態度に。
「だ、駄目だからなっ!俺、学校では絶対にしな……」
 今まで散々学校でやりたいと言っていたコイツは、とうとう俺を個室に閉じ込め、うん、と言うまで焦らす作戦にでたのだ。
 だんだん近づいてくる綺麗な顔に、俺は思わず顔をしかめる。
「ああ、義久は僕の顔見ただけで感じちゃうんだっけ」
 かぁああっ……。
 俺は顔がどんどん赤くなるのを感じた。
 丁度、リトマス紙に酸性の液体をかけたときみたいに、瞬時に。
「そして……僕の声を聞くと気持ち良くなっちゃうんだよね」
「直春っ!」
「僕は……義久に名前を呼ばれただけで熱く勃っちゃうんだけど、ね」
 直春はカーテンにくるまった俺を、その上から優しく包む。
 くそぉ……駄目なんだってこの声、この顔、この匂い……。
 恥ずかしい台詞を惜しみ無く吐くこの男に、俺はこいつが思っている以上にメロメロなんだ。
「……ここは……嫌…だ」
 耳の傍に熱い吐息を注ぎ込まれ、俺の否定意見も弱くなる。
 それでも頑なな俺に、直春はため息混じりに聞いてきた。
「じゃあどこなら良い?教室……だったら教卓とか机とか?体育倉庫ってのもいいけど……一番良いのは保健室?」
 ど……どこも学校じゃないか。
「なんで今日はそんなに……学校で……したがるんだよ」
 直春が学校でエッチしたいと言うのはいつもの事だ。
 でもいつもは適当に返事して家に帰ったらな、って宥めて家に帰って……し、死ぬほど……や、やってれば……うん……直春の我侭も落ちつくんだけどなぁ。
 今日の直春は、いつもの直春に輪をかけた何様男になってる。
「義久は今日、なんの日かしらないかな」
「……今日って……?」
 直春の誕生日でもないし、俺のでもないし……付き合った記念日とか、付き合った日記念日(毎月)とか、キスした記念日とかをマメに覚えているやつだから、俺もそういうのは絶対忘れない。
 だとしたら、今日は一体なんだ……?」
「今日って、2月29日だろ?」
 四年に一度の閏年ってやつだ。
 それがどうかしたのかな。
「そ。四年に一度恋人達に与えられる最高の日」
 直春は自信たっぷりに言うと、俺に纏わりついていたカーテンを剥がしはじめる。
「いつもの年より、一日多く義久と一緒にいられる日だよ」
 直春の台詞に俺は思わず隠していた顔をあげてしまった。
「神様が与えてくれた、恋人と一日多くエッチ出来る日なんだよ。1分1秒だってもったいないんだ」
 直春の手が俺の頬に触れながら、本当に頼み込むように擦る。
 直春の言葉は一つ一つがすごく恥ずかしいけど、全部全部愛しく聞こえるのは俺もそろそろヤヴァイからかな。
「ね、しよ」
 甘い声は、俺の理性と道徳と良心を打ち砕く。
「……〜っ」
 悔しいけど、後で絶対後悔するけど、俺はどうしようもないくらい今直春とキスしたいと思ってしまった。
「ね、義久……して良い…よね」
「……鍵……ちゃんと閉めろよなっ」
「了解」
 神様が与えてくれた四年に一度の366日目は、幸か不幸か俺を甘い誘惑へと落としていく。
「ぁ……直……っ」
「違うよ、義久。せ・ん・せ・い、だろ?」

 ……やっぱ不幸かも。

完。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
田中王国国王中田による感想。

皆様お楽しみ頂けたでしょうか?
小説には登場しませんでしたが、同い年の彼ら。
出会いは高校入学の時。
実は義久の方から、見目綺麗な直春に声をかけたらしいです。
後でちょっとだけ後悔する事になるんですけどね(笑)

もうラブラブで、ちょっと変態ちっくなの書きたくて、
仕方ない田中ですw

セクハラ探偵……とか書きたいなぁって思ってます(爆)

って、この話しの感想だった。
これは結構田中の中で、攻めが強気で結構好き。
今度はこれ以上の何様モノを書いてみようかしら。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



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