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● みずき先生 明日も大変 --- −1− ●

 みずき先生 明日も大変。

 「瑞樹。荷物はこれで最後ですか」
にこやかに微笑んでくる男に、高校教師、阪永瑞樹は苦笑しながらも、小さく頷く。
「じゃあ、すみません。先にこのマンションのこの部屋に…。僕たちはあとから行きますから」
いつみても整った顔立ちの長身の恋人、海堂司は、引越し会社の業者の方に礼儀正しくそういうと、トラックを出発させた。
 トラックと行っても、男の一人暮しの…しかもワンルームマンションの中に入っていた荷物だ。そんな大荷物でもない。それなんのに、わざわざ業者を呼んだのは司の意地悪と言ったところか。
 と言うのも、司は瑞樹に何度となく一緒に暮そうと言って来たのを、瑞樹はいつもあーだこーだと言って避けてきていたのだ。けれど、とうとうそのいい訳も底をついてしまって…丸め込まれる勢いで引越しの手続きから、荷物をまとめる事まですべてこの1週間で司に全てやられてしまったのだ。
 半ば強引なやり方で。
 そう考えると、男として…ちょっと情けない。
 だって、そう…恋人である海堂司は…高校の教え子で、年下で…まだ高校生なのだ。
 …はぁ。俺…いいのかな。本当。
 心の中では、海堂を好きな事をちゃんと認めてる。けれど、頭ではそうはいかない。まだどっかで、自分がイケナイことをしているという気持ちが残っているのだ。
 でも、海堂が自分を好きだって気持ちにはちゃんとこたえたい…だから、今回の引越しも…一応認めたんだけど…。
「なあ…海堂」
今だ苗字でしか呼ばない恋人に、司は優しい笑みを向ける。
「なんですか、瑞樹」
敬語だけれど、ちゃんと名前は恋人らしく呼ぶ海堂。こいつはなかなかの曲者なのだ。学校で、高木―――瑞樹の教職する学校の理事長で司の実父―――の前で、瑞樹の前でと態度が180度変わるヤツなのだ。
 本当器用というか、なんていうか。
 もう一度すの美しい姿に見入る。この外面に騙されているヤツが何人いることか。
 逢ってすぐに強姦された瑞樹としては、苦苦しいくらいのその態度の違いに、少々腹がたったときもあったり。
 まあ、今では恋に落ちてしまった自分もいるので、大きな声ではいえないんだけれど。
「変……じゃないか?」
「変…?何がですか」
何がですか?じゃない。わかってるだろうに…コイツは。
 誰よりも頭が良くて、嵯峨山学園始まって以来の秀才といわれていて、生徒会長まで務めている海堂のこと、本当はわかっているのだ。瑞樹の心配していることなど。ただ、それを口にしないのは、こちらはこちらで少し怒っているから。
 だって、この引越しは夏休み中…いや、その前の予定では夏休み始まる前には終わらせるはずだったのに…。
 あれよあれよのうちに、すっかり寒くなった12月23日。
 両親がすでになく、木は実父であるが自分は愛人の息子の形にあるので素直に甘えられない。そんな悲しい自分や、その過去の淋しいクリスマスを切々と訴え、瑞樹の同情を買い、プレゼントをくれるようにねだったのだ。
 両親の遺産や、後継人の高木の援助によって、かなり裕福な生活をしている海堂に何をねだられるのか、びくびくしながらサイフを確認したが、そこは人のよい瑞樹。なんでも欲しいものを言え!そう…大口を叩いてしまったのだ。
 なんで、あんなことをいったんだか。
 それを言ったのが、丁度1週間前。
 海堂の望みは…つまり、瑞樹の引越しだった。
 大反対したのだが、海堂にはずっと前から言われいていたことだし、あんな話しをされたあとだから、ずっと見つめられるとどうしようもなくなってしまって、瑞樹はその全てを海堂にまかせてしまったのだ。
 そして、今になって怖くなってる。
 もし、学校の誰かにばれたら?
 司の兄であり、嵯峨山学園の校長と理事長の高木は知っているとしても…他の教師、生徒にはまったく秘密な関係だ。
 誰かにばらす気などまったくない瑞樹としては、考えるとぞっとする。
 公表していいと思っている司は、余裕なんだろうけど…。
「俺は教師なんだぞ…お前たちの。それなのに、一生徒……と一緒に住むなんて」
「僕は一生徒じゃないでしょう」
海堂の声が少しだけ、低くなって、機嫌が悪くなったのがわかった。
 さっきまではあんなに上機嫌だったのに…。まったく。
「そりゃ…そうなんだけどさ」
それでも腑に落ちない。やっぱり、この決断は間違ったものだったんじゃないかな。
 それがあからさまに顔に出たのか、海堂は瑞樹の腰に手を回し、身体を後から抱きこむように密着させた。
 これが、どちらかの部屋ならば別にどうもしないんだけど、往来の道の真中で、こんな恋人、恋人した格好させられると、瑞樹はどうも焦ってしまう。
 普通にしてれば、そんなにアヤシイことでもないのに。恥ずかしがるからばれるのだ。そんなことも気付かない瑞樹のうなじに、海堂は愛しそうにキスをする。
「だって、あなたをコレ以上僕の側から離していたら心配で、僕のほうが狂ってしまいそうです。あなたを狙っているやつらは、兄だけじゃないんですよ」
兄…。その響きにこんな中でも瑞樹は少し微笑んでしまいそうになる。
 数ヶ月前、その兄である校長といざこざがあったばかりなのだ。複雑な生い立ちのせいで、そうなってしまったのだが、なんだかその空気も少しずつ変化してきたようだ。
しかし、その校長は今は瑞樹のことが本気で気に入ってしまったと言って言い寄って来ているのだ。これには苦笑いするしかない。
「う、うん…わかってるんだけど…さ」
最近、生徒たちからもそういう目で見られているということをようやく理解してきた瑞樹は、わだかまりを込めながら返事をすると、海堂に一括された。
「わかってないんですよ、瑞樹は。あなたがどんなに魅力的で、どれだけ人を引き寄せているかを……。俺は俺以外にあなたを触れさせたくない…わかってくれているでしょう?」
俺だって…海堂以外に触れられるなんて嫌だよ。
 そう言いたいのだが、恥ずかしくて上手く言葉にできない。
 瑞樹は再び深くうなずいた。
 瑞樹のことは、瑞樹以上にわかっている海堂は、その表情から自分に都合のいい返事を想像し、じゃあ…と口を開いた。
「行きましょうか。俺のマンションに」
「……ん」
二人は徒歩で、マンションに向った。

 海堂のマンションにつくと、そこにはもうすでに業者のトラックはなく、荷物はすでに運ばれたあとだったようだ。
 何回も呆れるほどきたマンションを下から眺め、今日からここが自分の家になると言われても実感のわかない瑞樹は、ぼけーっと見てしまう。
 自分の今まで暮していたマンションとは次元が違うくらい、立派なつくりなうえ、これから海堂と毎日ここで暮すのか…と思うと、ドキドキして1歩目が踏み出せないのだ。
 海堂はそんな瑞樹の手をやさしくつかむと、まるで姫でも城に向えいれるように、入り口へと導いた。
「瑞樹…どうぞ」
部屋のドアを開き、瑞樹を中に入るよう促す。
「…おじゃまします…」
丁寧に言った瑞樹に海堂は優しく嗜める。
「違いますよ」
「ぁ…」
違う…といわれた意味を咄嗟に悟り、瑞樹は口篭る。
「……ただいま?」
「おかえり。瑞樹」
海堂は優しく微笑んだ。

 やっぱり失敗だった…。
 海堂の家に引っ越して1週間。瑞樹はまともに寝ていない。
 教師という仕事をしているから、別に残業が多くて…とかではない。もちろん、恋人が離してくれないのだ。
 どんなに疲れていても、どんなに遅くなっても…一緒に暮せることになった悦びでご満悦な恋人の欲望は、瑞樹を毎日高みへと昇らせていた。
「瑞樹ちゃーん大丈夫?」
「本当、顔色悪いじゃん」
「どうしたのさ〜」
生徒たちにもこう言われる始末だ。瑞樹は作り笑いで、ヘラヘラと無理をしながらかわし、保健室に逃げ込む。
 もともと身体がそんなに丈夫ではない瑞樹は、これ以上は無理だと早々と感じたのだ。身体さえ丈夫だったら、瑞樹は今ごろ教師なんてしてなくて、大好きな中国を堪能していただろう。
「ん……あーあ」
保健室の先生がいなかったから、勝手に横にならせてもらったが、ベッドの上に乗ると自然とまぶたが下りてくる。
「眠い……」
一応保健室の先生が戻ってくるまでは、横になってるだけにしようと思っていたのだが、耐えきれず眠りの世界に入りこんでいく。
 ちくしょ〜…これも、それも全部海堂のせいだ!
 もう絶対……毎日なんてやらせてやるもんか。
 俺の体力を考えろっての。
 頭の中で、恋人をののしりつつ、瑞樹はすっかり寝入ってしまった。
 
どれくらい眠っただろう。
 なぜか身体が重たい。瑞樹はまだ眠りたい気分だったが、思いきって目を開けて、びっくりする。
「こ、校長!?」
自分の身体…というか下半身に乗っていたのは、ここの校長。そして、海堂の義兄である男で。
「阪永先生があんまり気持ちよさそうに寝ていたので…ね」
海堂に似た容貌で、これまた綺麗な顔の持ち主の校長は、当然のように瑞樹の足に手をかけてくる。
「あ、え、い、今起きるところですからっ。降りてくださいっ」
瑞樹は上半身を起こして、慌てて逃げ出そうとしたのに、校長はどんどん上半身に近づいてきて、とうとう丁度腰の手前あたりで、瑞樹をまたぐ形で座っている。
 これじゃあ、どんなに鈍感な人でも襲われている事がわかる。
 瑞樹は冷や汗が流れていくのを感じた。こんなの…海堂に見られたらどうなることか。朝まで抱かれる…くらいじゃすまされなくなってしまう。
「いやいや、阪永先生はまだ具合が悪そうだ…。もしかして、義弟が朝まで求めてくるのかな…?」
「なっ…」
見透かされたように、いやらしく微笑みながら言う校長の言葉に、こんなに動揺してしまっては、否定もできない。
 瑞樹はいたたまれない気持ちのまま、校長をみつめていた。
 すると…。
「阪永先生っ!」
ドアがすごい音を出して開いたかと思ったら、急にあの男の声がして、閉められていたカーテンが開いた。
「瑞樹……と校長…」
その二人のベッドの上の状況を見て、海堂は苦苦そうに兄を睨む。たとえ、未遂でも関係無いのだ。瑞樹に触って良いのは自分だけ…と考える海堂は、乗っかるのなんて問題外だったのだ。
「残念、阪永先生。じゃあまた今度…」
弟のすごい形相に肩をすくめ、校長は保健室をあとにした。
 ああ、なんでそんな…。こんな状況にしておいて…。
 瑞樹は校長の出ていったドアを恨めしそうに見つめていた。
 その直後、海堂は瑞樹を怒鳴る。
「なんであなたはそんなに無防備なんだっ!」
「なんでって…」
「あなたを狙っているのはここの学校関係者が多いんですよ?それなのに、鍵もかけない、保健室の先生もいない保健室で眠っているなんて…無防備すぎます」
「そうかもしれないけど…」
「けど!?けど、なんですか。もしかして、兄を誘ったんじゃないですよね」
そこまで言われると瑞樹も、逆にムッとしてしまう。
「なんだよっ!海堂が毎晩毎晩……するから、俺倒れそうになって保健室に逃げ込んだんじゃないか」
顔を真っ赤にして、怒ってくる内容が自分のことで、司は嬉しくなる。
「僕……のせいですか?」
ヤバイ。何かコイツを悦ばせてしまったみたいだ。瑞樹はそれでもなお、怒りつづける。
「いいかっ!俺は悪くないんだからな。悪いのはお前じゃないか」
「校長は…兄は悪くないっていうんですか?」
やはり、さっきの格好が司はきになってしかたないみたいだ。
 けど、売り言葉に買い言葉。瑞樹は校長よりも司に怒りを向けてしまった。
「当たり前だろっ。悪いのはお前だ」
そう言ったとたん、瑞樹の両腕は司にがっちり抑えこまれて、ベッドに押し倒される。
「海堂っ!」
「そうですね、悪いのは僕です。だったらせめて、瑞樹がアイツになんかなびかないように、悪役に徹しましょう」
まさか…まさか。ここで…するきなのか?
「止めろっ。ここは学校だぞ…誰かに見られたら…」
そこまでいって、このセリフは何の効果も持たない事を思い出す。
「見せましょうか。あ、兄なんていいですね」
「馬鹿…んんっ」
暴れる瑞樹の唇を封じると、その熱い舌を滑り込ませてくる。口内が海堂の蜜でいっぱいに埋め尽くされ、蹂躙されていく。
 呼吸なんてする暇もないほどなんどとなく角度を変えて攻められて、吸い尽くされる。
「…海堂…あっ…やっ」
保健室のベッドがいやらしくきしむと、海堂もその身をベッドに乗せてきた。すぐさま慣れたようすでネクタイをはずされ、ボタンを器用にはずされる。
 その中からでてきた白い肌には、昨晩…翌朝まで愛し合った愛撫のあとが鮮明に残っている。司はそれを見て微笑むと、同じ場所に噛みつくように吸いついていく。
「ああっ…か…海堂…んっ…」
すっかりならされた身体は、少しの刺激でいってしまいそうなる。
 瑞樹は翻弄されつつある頭をどうにか、理性で押さえると、司の厚い胸板を押しやろうとした。
「駄目…だ……ここじゃ…」
言葉ではそう言っていても、身体はそうじゃない。瑞樹のそこはすっかり勃ちあがっていて、ヒクヒクと先走りの蜜を滴らせている。
「じゃあ、教室でも移動しましょうか?」
「なっ…嫌…っ…あああっ」
意地悪そうな言葉をかけながら、海堂は瑞樹のすっかり男を受け入れるのに慣れた蕾みへ、一気に指を二本突っ込んだ。
 朝型まで突っ込まれ過ぎで、瑞樹の先走りの蜜を絡めていた指をいれたおかげで、痛みはほとんどなかったが、やっぱり挿入したときの異物感は大きい。
「嫌…も…海堂ぉ…」
けれど、快感をしっている瑞樹は腰をゆらして、もっと大きな快楽をねだる。
 瑞樹の誘うような媚態に司も余裕がなくなって、ずぼんのジッパーを下げると、猛ったそれを出して、瑞樹の入り口へと押しやった。
 それは燃えるように熱く、瑞樹は羞恥に飲み込まれていく。
「んぁ…はあっ…かい…どう」
「今あげますよ…瑞樹の欲しいものをね」
海堂はそう告げると、中にいれてある指を九の字にまげて、瑞樹の内壁を弄くる。
「ああっ!」
瑞樹の身体を知り尽くした司は、瑞樹の性感帯をめざとく見つけ、そこを執拗に嬲る。
 触れるか触れないかで戻したり、すぐそばを突いたりと焦らしに、焦らし、瑞樹の顔を歪ませる。
「ああ…ぁん…海堂…もう…」
「もう我慢できませんか?」
「お願……い…ひゃっ」
感じすぎて、身体を後にはねらせる。
 こんなところで、こんなことをしている。その事実が瑞樹をいつもより感じさせていた。
「朝までしてたのに…瑞樹だってもう欲しがってる…」
「んっ……ぁ…はぁっ…そんなっ…嘘」
「嘘じゃないでしょ。現に見てください…ここもヒクヒクしてて、俺を誘っているんですよ」
そこがどこだか見なくてもわかる。瑞樹は目をぎゅっと閉じて、恥ずかしい言葉攻めに耐える。
「でも………誘うのは俺だけにしてくださいね」
「ぇ?…あああーっ」
海堂のモノが押しこまれ、瑞樹は学校だということも忘れて喘ぎ声を漏らす。
 甘美なその声をきいて、海堂はますます腰を動かす。
「はっ…あっ…ああっ」
引きぬかれ、押しこまれる…その繰り返しで、瑞樹はその声が枯れるまで叫び続ける。
「ああ…海堂っ…あ」
「愛してます…瑞樹」
海堂は今一度、入り口近くまで引きぬくと、瑞樹の足を抱えなおして、思いきり押しこんだ。
「あーーーーっ」
瑞樹の嬌声が保健室を満たしたとき、海堂に蹂躙された内部に、白濁とした液が広がった。そして、瑞樹も保健室の清潔そうなシーツに、自分の欲望を放っていた。

 「はぁ……」
司には珍しい、大きなため息を、マンションの部屋の入り口の前で司は何度もついていた。
 今日は瑞樹に酷い事をしてしまった。いくら義兄に襲われかけていたからと言って、疲れていた瑞樹を、わかっていて抱いてしまうなんて。
 最近の瑞樹を疲れさせていたのも自分なわけで。罪悪感が蘇る。
 でも、ここ1週間は、帰ったら瑞樹がいるという幸せに、自分の理性がきかなくなっていたのだ。だから、しかたないと言っても過言じゃないのだが…。
 それでも、体力の無い恋人のことは考えてあげるべきだった。
 司は再びため息をつくと、ドアの金で出来たノブに手をかけた。
 もしかしたらいないかもしれない。怒って、親友の真利香嬢の家にいったとか…まさか兄の家にいってたりして…。
 体力の疲労をカバーするどころか増してしまった瑞樹は、午後の授業をセンパイの先生に任せて、早々と早退してしまったのだ。
 さっきマンションの下についたとき、怖くて部屋の電気を確認できなかった。今だって、開けて真っ暗だったら…と思うと、どうしてもドアが開けられないのだ。
 ずっと…一人暮しをしてきた司にとって一人暮しなんてどうってことなかったのだが、瑞樹と暮し初めて、家にかえって誰もいないという寂しさがとても大きなものになってしまったのだ。
 でも、ここにいつまでいても仕方がない。司はぎゅっとドアノブを掴むと、思いきってひねった。
 すると、ドアは鍵をさしこんでいにのにちゃんと開き、ドアの中からはおいしそうなカレーの匂いがしてきた。
「海堂。おかえり」
目の前にいたのは、真っ赤なエプロンをつけた、愛する恋人の姿で。
「瑞樹……」
司はあまりの嬉しさで、リビングに戻りかけだった瑞樹の身体を抱きしめる。
「瑞樹…瑞樹…」
「な、なんだよ。ほら、もう飯できてるんだから、食べるぞ」
「…もういないのかと思ったんですよ。俺に愛想つかして出ていったかと…」
いつもは余裕たっぷりなのに、切羽詰ったようにいう司がなんだか可愛くて、本当ならちょっとは怒鳴ってやろうと思ったのに、どうでもよくなってしまって、海堂の背中をさする。
「……ったく、俺が出てたって、お前は俺を逃がしたりしないだろ。どうせ」
瑞樹がそういうと、海堂はその美形なに満面の笑みを浮かべて微笑む。
「ええ」
「だったら、逃げてもしかたないだろ!」
恥ずかしさを紛らわすように、ぶっきらぼうにそういう。
 でも、司には十分過ぎるくらい瑞樹のいいたいことはわかっていた。
 俺がここにいるのは……。
 司は瑞樹をぎゅっと抱きしめた。
 好きになった相手がこの人でよかった。
 司は本気でそのときそう思った。
 この人が大好きだ…手放したりするものか。
 数分無言で抱き合っていたけれど、瑞樹は司の胸を押しやり離すとリビングへもどろうとした。
「ほら、食べるぞ」
気恥ずかしそうに話しかける瑞樹に、慌てて司は答える。
「あ、はい…じゃあ着替えてきますね」
「違う」
「ぇ?」
瑞樹に否定されて、なんのことだかわからない司は頭をひねる。
「帰ってきたらいうことがあるだろ」
自分に背中を向けたままで、耳の裏まで真っ赤にして瑞樹が言う。
「ぁ……」
司はようやくその言葉の意味に気付いて、言葉を失う。
「…ただいま…」
そう呟くと、瑞樹はくるりと向きを変えてニコッと笑った。
「おかえり」
そう告げたとたん、身体は再び司に捕らえられていた。
「すみません…もう無理です。やってもいいですか?」
「………お前は…」
ちょっと諦めた口調の瑞樹のその返事は、YESを指していた。
 そのまま瑞樹の身体を軽々と持ち上げると、買い換えたキングサイズのベッドの上へ。
 朝まで抱いてしまうのは、あなたのせいもあるのに…。
 そんな文句を言われながら、再び愛し合い続ける二人。

「やっぱり俺は、瑞樹を手放せそうにありません」
二人暮しの良さをかみ締めながら、ぐっすりと寝こむ恋人にそっと言ってみせる。
「一生愛し合いましょう」
瑞樹の苦労と比例して、司の欲望も増していくのだった。

完。

【作者コメント】
はい!終了です。これは、原作井村仁美殿、絵:明神翼殿の小説です。少々前にオークラ出版で出されたやつをプランタン出版が今年再発行いたしまして、それ田中が目をつけたwと、言うわけです。
と、言うのも、田中、年下攻め、生徒×教師とかにめっぽう弱い!それなのに、これはもう……ツボ!
かっこいい最高な司と、可愛くてそれでも先生な瑞樹のラブストーリーです。
1冊目【みずき先生 気をつけて】はラブラブになるまでのお話。
2冊目【みずき先生 危機一髪】は恋人になってからの話。こちらは司兄(現在の校長ですね)が登場して、騒ぎを起こしてくれます。
ちょっとシリアス入ってる話なんで、田中のツボなのかもしれません。田中は結構BLには、せつなさとドキドキとラブを求めてたりするんでw
あんまりお笑い度に走ってる作品は苦手・・・?だったりします。
とにかく、これは面白いんで、ぜひぜひ読んでみてください。
以上!

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