僕が先生に教えてあげる番外編。

小説。 | 教師。 | 最初。

もっと僕が教えてあげる。


 その日、その家の主である十文字北斗は地団太を踏んで、玄関から一歩も動こうとはしなかった。
 チラチラと十秒おきくらいに時計を確認する仕草は、もう癖のよう。
 使用人たちも寝静まったこの大きな家は、今までずっとこんな広さだったのに、あの人が来てからこんなに寂しく感じたのは久しぶりかもしれない。
「遅い……」
 北斗は再び時計を見る。
 時刻は十二時五分前。
 普段の、その最愛の彼が帰宅するより随分遅い時間だ。
 もちろん、これが無断だと言うのなら、北斗はヘリでもリムジンでもテレビでもネットでも何でもかんでも使って泉を探しただろうけれど、そうじゃないから厄介なのだ。
 唯一無二の恋人であり、最愛の人物である七瀬泉は、北斗の通う高校の教師であり、今日はその教師陣の飲み会の日なのだ。
 昨夜その話を告げられた時、北斗は当然のように行かせないと怒ったのだが、その時ばかりは泉も譲らなかった。
『馬鹿言うなよ。これは仕事のうちなんだからな。仕事には復帰させてくれるんだろっ』
 泉が大人なんだと、久しぶりに教えられた気がした瞬間だった。
 泉がどんなに可愛くて、大好きな恋人でも、泉は大人なのだ。
 少し前に、泉から家や仕事や頼る人までも奪って、やっとの事で泉を手に入れた北斗は、仕事復帰だけを渋々認めた。
 それは、泉がそれだけは何にも変えられない大切なものだと言い張ったから。
 それに、北斗自身泉と言う人物に教えられたくてわざわざ高校に編入してきたくらいだ。泉の教師としての評価は、誰もが認めるくらいすばらしいものだった。
 でも、認めなければ良かったとたまに思うことがある。
 もちろん、口に出したりする事はないんだけれど。
「……っ」
 ポーンポーン……。
 廊下にかけてある大きなはと時計が十二時を知らせる。
 今まで食事会や飲み会に良く誘われていた泉で、そのたびに口論しながらも十時くらいには必ず帰ってきていた泉が、こんなに遅くなるなんて。
 やっぱり何かあったんじゃないだろうか。
 今回の飲み会は、泉の一番の理解者であり相談役であった陣内と言う教師が出張から帰ってきたお祝いだと聞いていた。
 それだけで嫌な感じはしていたんだけれど。
 なにせ、陣内は大学からの泉との知り合いで、警戒した北斗に出張に出されてしまったのだ。
「やっぱり行かすんじゃなかったっ」
 イライラは頂点に募った。
 頭の中の悪い妄想は膨らむばかりで、いろんな教師やはたまた酔っ払った変態どもに身体を触られる泉の乱れる肢体がリアルに目の前に浮かんだ。
 北斗よりずっと年上なのに、華奢な身体。愛らしい白い肌、そして印象的な漆黒の瞳、艶やかな髪……。
 触るとしっとりと肌になじんで、離したくないと思ってしまう泉の身体の美しさ。
 俺以外に触られるなんて……想像しただけで吐き気がする。
 意を決した北斗は、泉が嫌がっていたけれど迎えに行こうと、その馬鹿でかいお屋敷の馬鹿でかい扉を開こうとした。
 その瞬間、玄関に来客を伝える甲高い音が響き渡る。
「泉っ!」
 怒っていた事も忘れその扉を勢い良く開けば、そこには泉とその身体をお姫様のように抱っこする陣内の姿があった。
 身体が固まると言う現象に北斗が襲われたのはこれが初めてだった。
 何事にも動じなく、今までピンチや危機に陥った事なんてない。今まで一番苦労と言う言葉を感じたのは泉を落とす事だった。
 そんな北斗は、金縛りにあったかのように目の前の光景から視線をそらせずにいた。
「夜分遅くに悪いな……。泉は今ここに住んでいるんだろ」
 陣内は大人の余裕とでも言うのか、軽々と泉を持ち直し玄関の中へと入ってきた。
 陣内の腕の中の泉がどうも大人しいと思ったら、小さな寝息を立てて幸せそうに眠っている。
 いや、いつだって陣内の傍に居る泉は素直で大人しくて、北斗と居るとなんでか怒ってばかりなんだけれど。
「ここまででいいっ」
 家の中にまで入ろうとした陣内に、やっとの事で北斗は静止をかける。
「でも泉は寝てるんだ。俺が運んだほうがいいだろ」
 まるで、北斗には運べやしないと言うようなその言い方に、天下の北斗様は陣内の腕から泉を奪う。
「ちょ、おいっ……」
「ここで結構です」
 急に手持ち無沙汰になったその腕を陣内はポケットの中にしまいこんだ。
 結構身体を揺らせて泉を抱きかかえたのにも関わらず、当の本人はすやすやと北斗の腕の中で眠っている。
 泉が腕の中にいるってだけで、それだけで何故だか少しだけホッとした気分になるから不思議だ。
 北斗は思わず蕩けるような笑みで泉を見つめた。
「……泉、今日ちょっと飲みすぎたんだよ」
「主役の貴方より……ですか」
 泉は陣内に多大なる信頼を置いている。
 それは、北斗よりも長い付き合いだって事もあるし、年上だけれどそんなに年が離れてないから親近感も持てるというのがあるだろう。
 だからきっと、こんなに飲んだんだ。
 普段泉は御酒は滅多に飲まない。
 未成年である北斗よりずっと弱いし、それに泉は堅いから。
 北斗と暮らしている以上、家ではまず飲む事は無い。
「回りもいろいろ浮かれてたからな……。ま、明日は休みだし寝かせてやってくれよ」
 陣内が言葉で泉を本当はどう思っているか言った事はないけれど、それはどうみても友情や後輩を見守るような純粋な心ではなく、恋愛色の濃いものだ。
 だからなのか、北斗が泉をそう言う意味で好きだと言うのもいち早く気づいていたらしい。
 さっきの言葉の意味は、北斗を挑発しているようにしか感じなかった。
「貴方に何か言われる筋合いはない」
 元担任で、一応教師に向かって北斗はあからさまに嫌悪の表情を浮かべる。
「泉は俺のモノだ」
「……泉の昔の話を聞いたんだろ、だったら」
「関係ない」
 泉は二年前、家庭教師をしていた男の子と恋愛のような感情になった。けれど、その少年は大切なトコロで泉を裏切り、泉を恋愛恐怖症にまで陥れたのだ。
「……そうか」
 陣内はそれだけ言うと、踵を返し玄関から外へと出て行った。
「じゃあ、泉によろしくな」
 絶対に北斗はそんな陣内の言葉を伝えないだろうと確信があったけれど、社交辞令気味にそういうと、ピシャリとドアを閉められた。
「……関係ない、か」
 自分は見守る事しか出来なかった陣内は、北斗の我が侭な子供の強さに苦笑する。
 泉が大切すぎて、暴挙に出る事が出来なかった。自分の気持ちすら打ち明ける事が出来なかった。恐がられてしまうくらいなら、先輩でいた方がずっと……。
 妥協案を考えてしまった自分は、北斗には一生敵わないのかもしれない。
 そう思うと、何故だか無償に笑えた。

 ほとんど両親が寄り付かず無駄に広い十文字家の二階の乙女チックなイギリス風の寝室は、泉が無理やりこの家につれてこられた日から二人の主寝室だ。
 北斗は泉をやや乱暴にフカフカのベッドに投げ出す。
「……んぅっ」
 いくらフカフカだと言っても、強く投げつけたから、泉は少しだけ声を出した。
「寝るなよ」
 北斗は自身を纏っていたシャツをボタンを外す時間すらイライラするからと頭から脱ぎ捨てると、泉の横たわる腰の辺りに跨る。
 真っ暗い寝室、重なる二人の身体。普段の泉ならば、可愛い抵抗を見せて、もう何度も抱いていると言うのにその行為に恥ずかしさや恐怖を見出すのか、ちょっとだけ逃げそうになるところだ。
 けれど、アルコールでうとうととしていて、頬を赤らめ思考を飛ばしている泉は、ぼんやりと枕を見つめ、小さな声を出している。
「んぅ〜……眠ぃ」
 自分をどんなにやきもきさせたのか、心配させたのかをまったくしらない泉の寝顔が、今は少しだけムッとくる。
 北斗は泉のスーツの上を脱がすと、皺になるといつも泉が嫌がるやり方でベッドの下へと投げ出す。
「……泉が悪いんだからな」
 北斗はまだ夢心地でむにゃむにゃと言いつづける泉のベルトに手をかけ、素早く外していく。
 教師と言う仕事がらもあって、堅い泉はほとんどをキチンとしたスーツで過ごす。その真面目の布で覆われた身体が実はものすごく魅力的で、煩悩を膨らませるかなんて知っているのは北斗だけだ。
 北斗はベルトも下へと投げると、泉のズボンのチャックを歯で挟み、広げる。
「――…誰ぇ……」
 こんな事するの自分しかいないはずなのに、そんな事を言う泉に、北斗はムッと顔を怒らせた。
「泉の相手をするのが俺以外にいるっていうのかよ」
 酔っている人間の思考がどんなもので、どれだけ頼りないものか、頭の良い北斗はもちろん把握済みだけれど、その対象が泉となると話は違う。
 泉が好きでどうしようもなくて高校まで替えて追いかけてきただけある北斗は、いつでも泉を困らせる覇王だけれど、泉が自分くらい自分を思ってくれているのか、それだけは自身がなかった。
 もともと、男の恋人に裏切られた傷心の泉の心に付け込み、さらに周りから何もかもを奪って自分に頼るようにしただけの事。
 泉が自分から北斗に振り向いたわけではないのだ。
 まだやんわりとした泉自身を下着の中から取り出し、指を絡める。
「ふぅっん……っあ、アッ」
 まだ頭の中はお酒いっぱい、アルコールいっぱいって感じで、目線もうろうろしがちだけれど、北斗が指先をちょっと強く締めると、泉は甘えた声で鳴いた。
 既にアルコールのせいで桃色に染まった肢体が、いやらしくベッドの上で揺れた。
「っ……そこぉ……っやっ」
「……ここ、そんなに気持ちいの」
「ぅんっ……アァッン」
 普段泉の口からは聞けないような、淫らな言葉が聞こえるたびに、北斗の心は昂ぶりながらも悔しさに溢れる。
 きっと、泉はこれが俺だなんて気づいていないからこう言うんだよな……。
 苦笑めいた言葉が頭に流れ、それを払拭する事が出来ない自分がいる。
 泉のワイシャツを乱暴に開くと、北斗は泉に指を絡ませたまま胸の突起に歯をたてる。
「ぁっ、痛っ……ぁあん」
 痛いと少し訴えながらも、泉は血色の良い頬を震わせ、唇を甘えた仕草で動かす。
 泉は普段胸を弄られるのを嫌がる。それは、胸を弄られるたびに、女の子のように感じる自分がいやで、それを見られるのも恥ずかしいから。
 もちろん、北斗にそうはっきり告げたことなどないけれど。
 北斗はここぞとばかりに飾りを舐め、いやらしく光らせる。
「んんっ……っ……ふぅっ」
 北斗が手を動かすたび、舌を動かすたび、泉はベッドを軋ませる。
 ギッ、ギッと大き目のキングサイズの洋物ベッドが揺れ、あからさまに情事の音を響き渡らせる。
 既に北斗の手の中で固くなってきているソコは、北斗の手で抑えられ可愛そうに雫を滴らせているだけだ。
「達かせないから」
 北斗は意地悪めいて、聞こえているはずの無い泉の耳元で掠れた声で囁く。
 掠れているのは、欲情しているから。
 素直に甘えてくる泉が愛いしくて、けれど憎くて、それに反応してしまう自分はそれ以上に愚かな生き物に思えた。
 泉が好きで、泉の愛情が欲しくて、泉の何もかもが欲しいけれど、それが手に入らなくても泉の身体には勃起してしまう。
 獣のような自分が、天使のような泉を汚すモノだと言う事は百も承知だ。
「ねぇっ……アッ……達かせてぇっ」
「っ……!」
 下半身にズキュンとくるような泉の言葉に、北斗は理性が弾けそうになる。
 自分の下で、悶えるように動く泉は顔を恥ずかしさで覆うことなく、その淫らな四肢を見せ付けている。
 好きで、好きでどうしようもない。
 手に入れた後も不安は耐えない。
 今日だってそうだ。なんで俺がいけない場所に行こうとするんだ。
 権力も、金も、伸長も泉よりあるけれど、たった一つ泉より遅く生まれた事だけが一生自分を苛める。
「ずるい」
 北斗は泉のこれまた嫌がる首筋に歯を立てる。
「ひゃぁっ……」
 眉と眉の間に皺をよせ、泉は苦痛の声をあげる。
 北斗は、泉の首筋から流れてくる血をその肉厚な舌で舐め取った。
「……ずるい」
 俺を虜にしておいて、俺の事は何も覚えていないなんて。
 あの時、あの場所で、北斗は泉に恋をした。
 教育実習に来た泉は、どこかオドオドとしていけれど授業はちゃんとこなして、いつも笑顔で、そこらへんの腐った教師とは全然違っていた。
 何か特別なモノがあったんじゃない。
 泉の泉らしいところ全部が、北斗の心を揺るがした。
「あんたは俺がどんなに我慢してるか……全然知らないんだろっ」
 毎日身体を求める北斗に、泉は困ったように文句を言う。
 高校生のお前に毎日こんなに夜更かしさせられない、とか。
 毎日じゃ身体に悪い、とか。
 でも、北斗は泉が思っている以上に我慢をしているのだ。
「んっ……ぅっぁ……はっ、ン」
「……俺は誰だよ……言ってみろよ」
 酔っ払いの、寝呆けている泉に、北斗はマジな顔でそう言った。
 いつもは聞けない……から。
 泉にとって自分はなんなのか、なんて。
 恐い、から。
 その思考と、行動とは裏腹に純愛気質の北斗にとって、世界で一番恐ろしいもの。
「っ……アッ」
 泉の蕾の中に指を挿し入れ、温かな中の襞を苛める。
 どこが気持ちいいとか、どこが痛いとか把握済みの北斗は、わざと刺激が足りない場所に指を突きつけ、泉の表情を悩ましげにかえる。
「言えよ……」
 泉の昔の恋人の名前である、俊介と言われたら、どうしよう。
 たぶん、死にたくなる。
 北斗は本気でそう思った。
 初めて泉を抱こうとした日もその名前が出て、怒りで狂ったけれど、本当は泣き出しそうだった。
 その男はもちろん殺したいほど憎いけれど、そうじゃない。
 どうして俺がその時泉の傍にいられなかったんだろうと思ってしまったから。
 この年の差が憎い。泉より年上のやつら全員が羨ましい。
 他人を、ここまで羨ましいと思う日が来るなんて思ってもみなかった。
「名前を呼んでみせろよ……っ」
 怒っていたはずの言葉は、最後には懇願めいていて、やっぱり今日の自分はどうかしているんだと思う。
 いつもならどんなに発情していたって、寝ている人間をどうこうしようなんて思わない。
 まして、いつも忙しそうな泉のことだから少しは寝かせてあげようとか考えるはずだ。
 陣内なんかに会うから、陣内が泉を抱いて帰ってくるから……。
 この家だけは泉と北斗だけのテリトリーだったのに、その場に足を踏み入れたりするから……。
「んっ……っ……ぉ……っ」
「え……?」
 組み敷いていた泉が、蜜のように甘い声を出す。
「北斗……、北斗ぉ……っ」
 抱きしめるものが欲しいのか、広げた両手を手持ち無沙汰に宙で動かしている。慌てて北斗は泉の前に自身の身体を近づける。
 すると泉はまるで天使のような顔で、北斗の身体を抱きしめた。
「いず……み」
 心臓が跳ね返るくらいドキドキした。
 こんなに緊張したのは、生まれて初めてかもしれない。
 そう思ってしまうくらい、ドキドキした。
「ちゃんと……俺だってわかってるのか」
 震える声で囁けば、少し不機嫌そうな泉の声が耳に飛び込む。
「違ったら、嫌だっ」
 ぎゅっと自分の身体を抱きしめる泉の手に力が入る。
「北斗が良い……の……んっ」
 好きで、好きで、どうしようもなく好きで、北斗は泉の唇を塞ぐ。
 身体が手に入っても、心をあげたと言われても、言葉で言われなきゃ不安にもなるのだ。
 今夜の北斗は、一人で泉の帰りを待っていて、いつもの王様心をどっかに無くしてしまっていたに違いない。
 呼吸とか、綺麗さとか考えない、ただただ動物みたいなキスをすれば、泉の呼吸すら手に入ったような気になって、ますます興奮してくる。
「泉……泉っ」
「んんっ……っ……もっ」
 欲情して出てきたあらゆるもので、身体が濡れていく。
 どんどん魅力的になっていく泉が、さらに追い討ちをかける。
「もっとぉ……して」
「!」
 決定打。
 北斗は泉の両手を泉の頭の上に持っていくと、泉の未だ着けたまんまだったネクタイで縛り上げる。
「あ〜あ、今日はせっかくここまでにしておいてあげようと思ったのに」
 いつのまにか、いつもの北斗様に戻った北斗は泉の手首を綺麗に縛ると、ニィッと笑った。
「泉が言ったんだからな」
 今ここに携帯が無い事が悔やまれる。
 撮っとけばよかったなぁ……北斗の呟いた言葉に、泉が少しだけ身体を震わせた。
「責任とってくれよ……もちろん、朝まで」
 泉の細く長い左足を持ち上げると、肩にかけ、北斗は挿入しっぱなしだった人差し指と中指で、ぐちゅぐちゅになった入り口を広げる。
「泉のせいだからな」
「ァッ……ァアッ」
 その広い寝室の、大きなベッドの上で、泉は朦朧とした思考の中、朝まで叫びつづけた。

 「泉、朝ご飯食べる?」
「……いらないっ」
 起きてから既に三十分以上、泉はベッドの中でブランケットに包まったまま罪悪感と羞恥心と戦っていた。
「でも、朝ご飯食べないとまた痩せちゃいますよ」
 学校用のとっておきの喋り方に、泉はカッと顔を赤らめる。
「煩いっ」
「まったく……誘ったのは貴方の方なのに」
 制服に身を纏い、キチンと優等生になりきった北斗は、朝食用のホットケーキフルーツ添えを片手に泉のいるベッドに腰掛けた。
「じゃあなんで、手が縛られてるんだよっ」
 泉の手首はいまだ昨夜泉が身につけていた深緑色のネクタイできつく縛られたままだ。朝から何度も外そうと試みても、ビクともしない。
 それどころか、解こうとすると手首に纏わりついてくる感じすらする。
「だって、泉あんまり気持ちよすぎると爪をたてるじゃないですか。俺になら良いんですけど、泉の白い美しい肌にはあんまり傷つくってほしくないからね」
 実際、狂おしいほどの快感に耐え切れず疼く身体を抑えようとして引っかき傷を何度も作ってしまった事の有る泉は、再び顔を真っ赤にした。
 やっぱりビデオに撮っておけばよかったな、北斗はそう思いながら苺を指でつまむ。
 昨夜泉の蕾を暴いたその指で、甘い甘い苺を泉の口へと導いた。
「今日は残念ながら学校はお休みですね」
「うっ……っ!」
 苺をほおばりながらも、泉は恥ずかしさで顔を俯かせる。
 泉がベッドから出ないのは、手首が拘束されていて着替えが出来ないだけではない。夜中から朝までセックスをしていたせいで、すっかり腰がたたないのだ。
 その事実を正面きって突きつけられた気がして、どうしようもない。
 きっと酔っていたせいだ。
 それしかない!
 昨夜の記憶が綺麗さっぱりない事から、泉は自分に良いように解釈しようと必死だ。
「で、でも俺は絶対に誘ってなんか……ないからなっ」
 部屋を出ようとした北斗に、泉はそう叫ぶ。
 北斗は意地悪な考えが頭にピンと浮かび、そしてやっぱり止めたとばかりに普通の顔に戻した。
「はいはい分かったよ。じゃあ、行って来ます」
 なんだか腑に落ちない北斗の言い方に、泉は一人残された部屋で首をかしげていた。
 泉のいる部屋のドアに外側から背をもたれかけさせながら、北斗は嬉しそうに笑った。
「俺は、あんたが俺の名前を呼ぶだけで欲情するんだよ……」
 昨夜の出来事は、泉が知らなくても良い。
 きっと知ったって否定するだけだし。
「一生……困らせてあげますからね」
 そうすれば一生離れられないでしょう。
 北斗はククッと笑うと、外へと飛び出した。
 
 その頃、泉はと言うと。
「ああっ」
 ベッド脇にある鏡を見て、自分の首筋についているキスマークに気づき大きな声をあげる。
 これじゃあ、これじゃ……一週間は人前に出られないじゃないかっ!
 それに加え数分後、泉は誰にも手首を外してと言えない状況にある事に気づき、今日一日中北斗が帰ってくるまで魅力的な裸体でベッドの上で過ごすハメになるのでした。

 それを考えながら、今日の北斗はいやに上機嫌で。
 北斗の席の近くの、朝日と西は顔を見合わせて不思議そうな顔をしていた。

 終わり。

田中感想。
うわ〜お。久しぶりの北斗と泉でした。一応読み返してから書いてみたのですがどうだったでしょうか。泉と北斗に変わりは無かったでしょうか。
陣内さん……帰ってこられて何よりです(笑)そんな陣内のお祝いの席に泉が行って酔って帰ってきた……と言う設定。本編では描けなかった北斗の本当の気持ちなんかを書けてたらいいなぁと思ったのですが、どうだったでしょうか。
本当不安です(笑)

これはキリリクだったのですが、こういうのはなんだか楽しいです。自分のキャラをリクエストいただけると、まるで自分の子供を褒められた親のような気分になります。いや……子供はまだいないけど、さ。
本当こんなお目汚しな作品で申し訳ございませんでした。ありがとうございました。
小説。 | 教師。 | 最初。
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