小説 | ―前編― | 最初

● やまとなでしこ復活編
    
夜まで待てない☆やまとなでしこ後編ー ●

しかし、ココロに変化があったのはその晩のこと。
「……っ」
 いつもなら12時過ぎる頃には眠くなり寝てしまうのに、どうにも眠れない。
 それどころか、今日は一人でアレをしてしまった後だというのに、まだ何か、身体の中で疼くものがある。
 なんだか、どうにも言葉にできない、あの疼きが。
 こんなのは初めてだ。
 ココロは火照ってくる身体を抑えようと、水でも飲もうかと1階に下りた。
 すると、社会人になって家を出ていた姉のミミと1つ下の妹ヒトミの声がする。
「あれ、ミミちゃん帰ってきてたの?」
 ココロが声をかけると、ミミはパァッと顔を明るくしてココロに抱きついてきた。
「いやーんっ!ココロちゃんっ!!!会いたかったわ〜」
「ミ、ミミちゃん……っ……」
 家族、親族女だらけのせいで、小さい頃からイジメ続けられたココロは極度の女性嫌悪症だ。
 それが家族とて同じコト。
 ココロはミミの身体を引き離しつつ、どうにかこうにか込み上げてくる吐き気を抑える。
 首筋にはうっすら赤い反転のような拒否症状が出始めていた。
「あら、やだ。ココロってば、まだそんな変な癖残してたのね」
 あっけらかんに言うところは、妹のヒトミそっくりだ。
 もちろん母とも似ているのだけれど。
「……うるさいなっ!いいだろ、別に」
 早く水を飲んで寝ようとしたとき、ヒトミが絡んできた。
「寝つきの良いお兄ちゃんがいったいどうしたの〜。もしかして、変なことでもしてたんじゃないでしょうね」
 もちろんそんなことはないがドキンとしてしまう。
 ココロは一口だけ飲んだ水が、気管に入り思わずむせてしまう。
「っ、げほ……、何だよ、変なことって」
 夜一人でする変なことといえばたかがしれている。
 しかも、年頃の男の子なのだ。そういえば、1つしかない。
 少しだけ動揺しているココロが面白くて、ミミも悪乗りしてくる。
「いやーん。ココロちゃんってば、いつのまに大人になったの」
 ああ、もうこれだからこの家の女達は……。
 ココロはコップに入ったままの水を、グイッと一口で飲みきると、口をふいた。
「ミミちゃんも、ヒトミも早くねなよっ」
 いつも笑顔で何でもいう事を聞くココロが、ムスッとした顔でそんなことを言うので、ヒトミは面白くない顔をして爆弾発言を言った。
「お兄ちゃん、欲求不満なんじゃないのっ」
「えっ……」
 欲求不満。
 もちろんいろんな意味で使う言葉だけど、なぜだかココロはドキンとした。
 そうなのかな。欲求不満……?
 今までの人生で使うことの無かったその言葉について、ココロはじっと考え込んでしまった。
 そういえば、昨日英吏にあったのは数週間ぶりだった。
 このところ忙しくて2人でゆったりする時間なんてなかったのだ。
 ココロはテストやらレポートやらたまっていたし、英吏だって同じく試験週間で採点やらテスト作成やらいろいろあったから。
 英吏に会っているときは感じられなかった感情が、今ごろこうやってふつふつと身体を苛めてきているのだろうか。
 当たり前すぎて、気付かなかったことが……。
「……お兄ちゃん?」
「え、あ……な、何言ってんのさ……」
 そう言いながら、ココロの頭はここにあらず。
 俺は英吏としたいって……思ってるのかな。
 もう一人じゃ、満足できないくらい……。
 そう思うと、再び心がキュッとして、身体がピクンと跳ねた。
 ココロはパジャマ越しに自分の心臓部分を抑えると、ダッシュで部屋まで戻った。
「ココロ!?」
「ココロちゃん!?」
 ヒトミとミミは不思議そうにそう呼んだが、そんな声はもうココロには届かない。
 部屋に入り、ドアに背をもたれかけると、ココロは抑えきれない動悸もそのままに、深夜にも関わらず電話のボタンを押す。
「はぁっ、はぁっ……」
 トゥルルルル……トゥルルル。
 3回ほど保留音がなったあと、少し枯れた声で、あの愛しい優しい声が受話器に出た。
「……どうしたんだい、ココロ。こんな時間に」
 時刻はすでに12時を越えている。
 しかし英吏の声は少しも怒っている調子ではない。いつもの甘い英吏だ。
 こないだあんな別れ方をしたばかりなのに。
「……ご、ごめんね……遅く」
 我に返ったココロは、気まずそうに謝った。
「君からの電話が迷惑なわけがないだろう。それが例え、死の直前でもね」
 実のところ、英吏は自分から謝りの電話をいれたらいいのか迷っていた。
 だって、ココロにあんなことを言われたあとじゃね。
 節操なしって思われるのは、英吏にとってもっと恐かったのだ。
 これ以上ココロに嫌われたくない。
 誰にも俺様で強気な彼だが、最終的にココロには弱かった。
「どうかしたのかい、お姫様」
 英吏の言葉に、ココロは思わず考え込む。
 どうして電話したかなんて、そんなこと、口がさけても言えない。
 だって、英吏とエッチしたいなんて……。
 そんなこと、ココロに言えるわけがなかった。
 だって、純情可憐なココロ様ですから。
「……あ、こないだ……ごめん、って言おうと思って」
 咄嗟に出た言葉はそれ。
 英吏が少し躊躇するような雰囲気が耳からきいてとれた。
「いや、俺こそすまなかった。勝手に頭にきてしまって勝手に怒って……悪かったね」
 優しい英吏の言葉にじんわりくる。
 英吏に会いたい。
 今すぐ英吏に抱きしめてもらいたい。
 今すぐ英吏を抱きしめたい。
 電話越しに、ココロの情熱はさらに強くなる一方だ。
「英……」
「そうだ、ココロ、今度の土曜日映画にいかないかい」
 ココロの言葉を遮り、英吏がデートの誘いをかけてきた。
 こないだあんな酷いことを言ったのに。
 ココロは嬉しくて、喉がつまってしまった。
 そんな一瞬の間が、英吏にはココロが躊躇っているように感じてしまった。
 自分といるとそういうことがついてまわると思われているのかと、英吏は勝手に再び考え込んでしまった。
「ああ、大丈夫だよ。ちゃんと夕方には君の家に送るから」
「え、っ……」
 やっと声のでたココロの口から出たのは、英吏の考えてもみない言葉に対しての驚きの声。
 なに、それ。
 それって、まさか、自分を避けているようにも思えた。
 触りたくないのだろうか。もう自分には……。
 ココロはあまりのショックに再び声が出なくなる。
「紳士的に君をエスコートするよ。映画はそうだね、君が好きなアクションがいいね。今はやりのアレにしよう。じゃあ、土曜の朝迎えに行くよ」
「え、英吏っ」
「じゃあね、おやすみ」
「英吏!」
 英吏ははやばやと電話を切ってしまった。
 ココロはその夜も眠れない夜を過ごすこととなった。
 英吏はやっぱり自分にもう触りたくないのだ。
 ココロは一人そんな考えをめぐらせていた。
 馬鹿なココロ。
 愛している恋人に触れたくない恋人がどこにいるのだろう。

 
 「ココロ、どうしたんだよ」
「え?」
 ココロは自分がずっとため息をついていたのを気付かなかったらしい。
 宮城に声をかけられてもなお、ボーっとしている。
 今日は金曜日。明日は土曜日。
 英吏とのデートのはずだけど、どうしても心は浮かずじまい。
 だって、英吏は……たぶん、もう自分のことなど触ってはくれないから。
 あの日からずっと続いてる、まるで終わることのない身体の火照りはもう限界だ。
 自分で触ってもみるけれど、まったく収まる気配のない恐怖にも似た欲求に、ココロは泣き出しそうな気分だった。
 英吏に会いたい。
 英吏にあって、キスがしたい。
 キスをして、それから……。
 考えると、ここは教室だと言うのに、こころが揺れた。
 そして、涙が出そうになる。
 もうそんなこと、ないかもしれないのに。
「はぁ……」
 悩めるようにため息をつづけるココロ。
 しかし、どんなにこの一週間蒼志や宮城が声をかけたり、遊びに誘っても、ココロのこの病は収まりそうにない。
 なんたって、医者にも治せないのが恋の病なのだから。


 約束の土曜日。
 今日はクリスマスだ。
 日本では恋人達が愛を確かめ合うとても素敵な日のはずなのに、ココロにとっては、なんだかもうわからない日だった。
 何を着たらいいのか、どんな髪型をしたらいいのかわからず、ココロは朝からてんやわんや一人暴れていた。
 幸い、ヒトミは朝からデートで出ていたので、からかわれることはなかったけれど。
 初めてのデートの時のようにドキドキしているココロの前に、真っ赤なスポーツカーが止まった。
「おはよう、ココロ」
 久しぶりの英吏だ。
 ココロは嬉しくて、恋しくて、すぐに泣き出しそうな気分になった。
 どうしてこんなに愛しいと思っていることが、言葉にできないのだろう。
 不器用なココロ。けれど、そこがまた可愛いココロ。
 普段の英吏ならば、そんなココロの微妙な気持ちをくんでくれるのだけれど、今日はやっぱり喧嘩のあとだし、あんな電話のあとだから、少々気まずいようだ。
 英吏は運転席からわざわざ降りると、助手席のドアをあけてココロを招いた。
「さあ、どうぞ。お姫様」
「ありがと……英吏」
 ココロの英吏と呼ぶその声すら愛しくて、英吏は今すぐココロを抱きしめたくなる。
 けれど、その長く綺麗な指先がちょっとだけココロに触れた瞬間、ココロの身体がビクッと跳ねた。
「っ……あ……」
 小さく声をあげたココロの変化に、英吏が気付かないわけがなかった。
 たった指先が少し当たっただけ。それだけで過敏に反応してしまうほどココロの身体は敏感になっていた。
 しかし英吏はココロが拒絶しているように感じてしまった。
 英吏はすこしだけ悲しそうな顔をすると、ココロから手を離すように身体を離した。
「さあ、行こうか」
 お互い少し心に引っかかるものを感じながらの映画鑑賞が始まった。
 英吏は映画館だろうが、家でのビデオ鑑賞だろうが見ている最中必ずココロの身体のどこかに触れていた。
 しかし、今日の英吏は静かに席に座っている。
 普段ならココロが嫌がるような恥ずかしい言葉も、甘い言葉も1つも飛び出すこともない。
 ココロは楽しいはずの映画が、まったく頭に入らなかった。
 あっという間に映画は終わり、どこか行く?という英吏の言葉に、ココロは何も返事ができない。
 行きたい場所ならある。
 英吏と2人っきりになれる場所だ。
 けれど、そんなこと今の英吏に対して言えるはずもない。
 だって、ココロは、英吏のこの態度を紳士的として受け取らず、自分を嫌いになったからだと思っているんだもん。
「帰ろうか」
 そういう英吏にも、ココロは何も返事ができなかった。
「……じゃあ、帰るね」
 家の前まで送ってくれた英吏は、いつも必ずココロにソッとキスをした。
 しかし、今日は手がその頬に触れることもない。
 ココロは瞳で必死に訴えた。
 英吏!英吏!英吏。嫌いにならないで。
 けれど、英吏にその思いが通じることはない。
 どんな思いも、言葉にしなければちゃんと伝わらないのだ。
 去っていく英吏の姿を見ながら、ココロは玄関先に崩れ落ちる。
 どうすればいいのだろう。
 どうすれば、英吏は自分を許してくれるだろう。
 ココロはただ唯一おしゃべりな身体を抱きしめて、ぎゅっと蹲る。
「英吏ぃ……英吏ぃ……っ」
 英吏が好き。
 英吏が好き。
 心では何度も言えるのに。
 英吏と離れたあとも、ココロはずっとベッドの上で悩みつづけていた。
 なんてクリスマス。
 最低なクリスマス。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
「……ん、ヒトミ……?」
 いつのまにか悩みつかれて眠ったのだろう、ヒトミの声でココロは目覚めた。
「もう、お兄ちゃんったら!ご飯にも降りて来ないと思ったら寝てたのね。せっかくのクリスマスの夜だってのに、こんなところにいていいの!?」
 ヒトミはこれからまたデートに行くのか、ふりふりの可愛らしい服装で、ココロの枕もとに立っていた。
「……俺は、だって……」
 ココロは不貞寝するように、再び寝ようとすると、ヒトミに布団を剥がされた。
「もうなんなのよウジウジウジウジ!この一週間のお兄ちゃんは最低。してほしいことは言わないと通じないのよっ。不満があるなら言いなさいよっ」
 大声で怒鳴るだけ怒鳴ると、ヒトミは去っていってしまった。
 目からうろこというか、なんというか。
 身体も、心も、頭も限界。
 じゃあ、行動するしかないんじゃない?
 ココロはぎゅっと手を握ると、夜の町に走っていった。
 英吏に会いたい。
 じゃあ、会いに行くしかないじゃないかっ!
 ココロの心にもう迷いなんて無かった。
 英吏の部屋は、ヒトミの通っている学校の中にある。
 真夜中だとはいいつつも女子高なので、ココロはひっそり入り込むと、英吏の部屋の前まで来た。
 ポケットに忍ばせていた合鍵でドアを開けると、中は真っ暗。
 留守なのだろうかと不安に思ったけれど、奥のキングサイズのベッドに、英吏は一人で寝ていた。
 英吏も実は不貞寝してしまった一人だ。
 だって、あんなに傍にココロがいながら、抱きしめることすらできないなんて。
 英吏様がこんな欲求不満になったのなんて、英吏様の一生であったことでしょうか。
 いや、ないでしょう。
 だって、こんなことできるのもココロだけなんだから。
「……英吏……っ」
 その端正な寝顔に、ココロの心が欲情するのがわかった。
 英吏が欲しい。
 ココロは英吏の唇にそっと口付ける。
 身体が震えた。
 自分がまさかこんな大胆なことができるなんて、想像したことも無かった。
 だって、これって夜這いです。いわゆる。
 けれど、そんな触れただけのキスはココロの中のスイッチを押してしまった。
 ココロは英吏の唇に舌を這わせ、その眠ったままの英吏の口にディープキスをする。
 まるで子どものように拙い行為だけど、ココロは必死にその甘い行為に溺れていく。
 パジャマのボタンを外し、胸板のあついその肌に手を滑らせる。
「……んっ」
 英吏の鼻に掛かったような、甘い声が少しだけ漏れた。
 ココロは口を首筋に這わせると、そこを丹念に舐めていく。
 電撃のように走る快感が英吏を襲い、英吏は寝ぼけ眼で呟く。
「ココロ……」
「!?」
 ココロはその声で普段のココロに戻される。
 英吏が目覚めたと思うと、今までの自分の行動がすべて恥ずかしくてたまらなくなってきたのだ。
 だって、夜中に勝手に忍び込んで夜這いなんて。
 ココロが去ろうとすると、その腕を英吏がシカと掴んだ。
「ココロ……なのかい……?」
「英吏っ……」
 はっきりと目覚めた英吏は自分の肌蹴た姿を見て、現状把握に時間がかかっているようだ。しかし、さっきまで得られていた快感と、夢か現かわからないがここにいるココロ。
 まさか、いや、そんなはずはない……。
「ココロが、俺を襲いにくるとはね……」
「っ」
 英吏の言葉に、ココロは恥ずかしくて、恥ずかしくて、どうしようもなくなる。
「だって……英吏としたかったんだもん……っ」
「え?」
 ココロの甘えたその言葉に、今度は英吏が目を見張った。
 今の言葉は俺の聞き間違いだろうか。
 だって、ココロが、まさか。
「英吏が嫌でも……俺は、英吏に触って欲しいんだもん……英吏じゃなきゃダメ……なんだもん」
 そこまで言うと、ココロは涙が溢れて、英吏が掴む腕を振り払って逃げようとした。
 けれど、そこまで言われて、ココロを手放す英吏様なわけがない。
 ココロをこっちにむかせ抱きしめると、思い切りキスをした。
「んっ……っやっ……っんんーっ」
 噛み付くような荒々しいキスに、ココロは呼吸すら奪われ、その場に倒れそうになる。
 そのココロの身体を支えると、英吏はココロをベッドへ押し倒した。
 ギシッと大きなベッドがなり、ココロは泣きじゃくりながら、英吏を見上げた。
「なんで……。もう、俺なんて……触りたくないんじゃないの……?」
「こんなに君を愛しいと思っている俺が、君に触りたくない理由を聞かせて欲しいな」
 英吏はココロの火照った頬に手をかざす。
 ココロの熱くイチゴのように染まった身体が、ピクンと跳ねた。
「ほら、君はまるで怯えているうさぎのように、俺の手を嫌がっているようにみえるよ」
 英吏の言葉に、今度はココロは急いで否定した。
「そんなことない……違う……っ」
 ココロが必死な声で言うので、英吏は戸惑った顔をした。
 言葉で伝えなきゃ……。
 ヒトミの言葉が頭をよぎった。
 ココロは腕を抑えられていて、顔を隠すこともできず、その露になった恥ずかしい顔をさらして、必死に言葉で伝えた。
「だって、英吏に触られるとドキドキして、身体が……変になるんだもん」
 あまりに可愛いココロの表現に、英吏は恐ろしいほど自分の身体が発情していくのを感じた。
「俺ね、英吏と……したい、の……。英吏に……してほしいの」
 ココロは流れる涙をそのままに、まるで叫ぶように、まるで懇願するようにその言葉を壊れたおもちゃのように繰り返した。
「ね、お願い……して……英吏。英吏がしたくなくても、俺は英吏としたいの……お願……」
 ココロが最後の言葉を言い終わるか、終わらない間に、ココロの口は再びふさがれた。
「ふっ……っんんんっ……あっ、英吏っ」
「黙って、ココロ」
 英吏は優しくココロにそういった。
「これ以上俺を興奮させたら、ココロが壊れちゃうからね」
 

 普段の英吏なら想像もつかないほど、今日の英吏は乱暴に、荒々しくココロの身体を食べていく。
「あっ、やっ……ダメっ、英吏っ……」
 普段なら前戯をしっかりやってからそういうことにうつるのに、今日の英吏は先にココロのモノを取り出すと、そのしなやかな指先で手早く弄っていく。
「あっん……やんっ、もう……出ちゃうっ……」
「出して、ココロ……。そして、もっともっと乱れて、恥ずかしい姿を見せて」
 英吏はココロを四つんばいにさせ、後ろから襲うまるで獣のようにココロの身体を蹂躙していく。
 まだ英吏の指先はココロの身体の表面しか触れていないというのに、ココロの身体は熱く燃え上がり、立ち上がったソレは一度放っただけでは納まりきらなそうな勢いだ。
 普段のココロなら考えられない。
「んっ、やぁっ、英吏っ、英吏っ……」
 英吏に目隠しのように目をその大きな手で隠され、何も見えず、与えられる恐いほどの強い大きな快感の波に襲われるココロは、それでも絶えずやってくる勢いに、息をつくひまもない。
「あ、あああっ」
 ピチャッという音とともに、英吏の手には白い濃厚な液体が流れ出た。
 ココロはクタッと身体を倒すと、今まで真っ暗だったその視界の先で、掌を愛しそうに舐める英吏が見えた。
「やだ……どうしてっ……」
 ココロが再び泣き出しそうなのを見て、英吏は慌ててココロの腕をつかんだ。
「どうしたんだい、何故泣くんだい」
 ココロが気持ちよくなるようにしたはずなのに、泣き出すココロに、英吏は一人うろたえる。
「どうして……英吏は俺に意地悪ばっかりするの……っ」
 いまだ精液を放ったばかりのココロの身体は小さく震えていて、甘い香りを出している。上気した頬は男を誘う妙な色香をもっている。
「目隠しとか……恥ずかしいこととか……。俺を……嫌いだから、こんなことばっかり……するの……?」
 英吏は困ったように少し笑うと、ココロのいまだ情熱をもったままのソレを加えて舐め始める。
「やっ、やだっ、やめてっ……もっ、ダメっ……」
 この行為もまたココロの苦手な1つだった。
 英吏の舌や口内に自分を含まれ、そしてその動きに翻弄されるなんて、恥ずかしくて、どうにかなりそうなのだ。
「そう?ここはまだしたい、って可愛くおねだりしてるよ」
 かぁっ、と顔が熱くなり、ココロは涙を枯らすことなく流していく。
「もっ……やっ……」
「好きだからだよ」
 英吏はココロの愛しい場所にキスをしながら、英吏は言った。
「好きだから、恥ずかしいことさせたくなるし、ココロが嫌がることもしたくなるんだ。恥ずかしがるココロも、嫌がるココロも、気持ちよさそうなココロも、全て見たくなるんだ」
 ココロは英吏を静かに見つめた。
 英吏が自分を好きと言ってくれている。
 ココロはこんなに付き合っていて、こんなに言葉をかけてもらっていて、それでもまだまだ自分に自信がもてないのだ。
 天然だから、自分が可愛いなんて思ったことないからね。
「どんなココロも全て俺が見ておきたいんだ。全てのココロの感情を、俺のモノにしたいんだよ」
 英吏の恥ずかしくも、愛しい言葉に、ココロは嬉しくてまた涙が出た。
 自分は、エッチがしたいって一言いうためにこんなに悩んだのに、なんて英吏の言葉は滑らかで、美しいのだろう。
 どうしてこんなに自分を満たしてくれるのだろう。
「……英吏、好き……」
 ココロが朦朧とする意識の中で溢したこの言葉に、英吏はドキッとした。
 ココロは愛の言葉を囁くのがヘタだけど、だからこそそのぶん、たまにしか言ってくれないこんな言葉が、何よりも胸に届くのだ。
「ココロ、君が嫌がっても、泣いても俺はもう止めないからね」
 英吏はそういうと、再びココロのソレを咥えた。
「ぁっ、やあぁん……っ……」
 唇でいやらしくソコを扱きながら、細く長いよく動くその指をココロの体液で湿らせると、ヒクヒクと欲望を秘めている小さな穴に二本いっきに押し込んだ。
「あ――ッ……んっ、ふっ、あんっ……英吏っ、英吏っ」
 しばらくしていなかったせいで小さく窄まったそこは、英吏の指を恥らいながらも救急としめつける。
 英吏はココロの声を聞きながら、自分の中の欲望がフツフツと湧いていくのが感じた。
 ココロの甘い声、それだけで自分は絶頂を迎えられる。
 ココロが気持ちよくなる。それが英吏の一番の性感帯だった。
「あっ、ああっ……やっ、動かしちゃ……ああっ」
 英吏は舌と指を同時に動かし、ココロが感じるタイミングを見計らって責めていく。
 何度も、何十回も抱いた身体だからこそ、わかるこの部分を、丁寧に丁寧に責めて、ココロが嫌だと、泣き出すくらい……苛めていく。
 ココロが恥ずかしいことを嫌いなことなど知っている。
 一日に何回もやることも体力の無いココロにはキツイことも。
 けれど、泣かすことで、恥ずかしくさせることで、自分にしか感じない感情が残るのであれば。
 それが怒りでも、悲しみでも。
「ああっ、やっ、もっ、ダメーッ……ぁっ」
「気持ちいいかい、ココロ」
 クスクスと笑いながら、英吏は2度目のココロの精液を飲み干していく。
 肩を動かし息を吸い、ぐちゃぐちゃな身体の状態で、ココロはベッドの上で英吏を見つめる。
「英吏……お願い……もっと、して……」
「ココロ……今日は一体どうしたんだい。君がそんな求めてくれるなんて……俺は夢でも見てるのかな」
 英吏のちゃかす言葉に、ココロは恥ずかしさも忘れて英吏に抱きついた。
「ごめんね、俺……英吏がしたいこと、俺もしたいことだって忘れてたの。英吏としたい、怒ってるのなら壊してもいいから……」
 ココロの中にいまだ入り込んでいた指を抜き去ると、英吏はココロを壁に押し付け、立ったままのしせいで片足だけあげさせた。
「ごめんね、ちょっと理性がききそうもない……っ」
 大人な英吏には似つかわしくも無い焦った声と顔で、英吏はココロの身体に自身を突きたてた。
「あぅっ……っ」
 反り返った英吏の欲望は、小さなココロの中に乱暴に入っていく。
 ココロの小さな嬌声と共に、英吏の声も少し零れた。
 久しぶりのココロの中はとても温かく、気持ちがいい。
 入っているだけで、欲望を締め付けられ、それだけで達してしまいそうになる。
「あっ、ああんっ、英吏っ、英吏っ……」
 片足でたったままの足も爪先立ちの状態で、つらい姿勢のまま、ココロは英吏が求めるがまま身体を差し出す。
 好きで、好きで、だからこそ従順になる。
「あっ、やんっ、ダメっ、ああっ……」
 英吏がココロの二本の足を抱え、壁に背中だけをぶつけ、腰を突きつけられる。
 触れ合っている部分が熱くて、溶けそうで、消えてしまいそうで、ココロは可愛い悲鳴を何度も飛ばした。
「あっ、あああっ……っふうぅ……英吏っ、あっ」
「ココロ……ココロ……愛しているよ、いつでも君を抱きしめたくてたまらないよ……っ」
「俺も……あっ……んんっ、ああっ――」
「っ……」
 身体とか、気持ちとか、心とか、言葉とか溶け合ったこの甘い空間の中で、2人は欲望を放った。
 淫らに崩れ落ちたココロの身体がまたいやらしく艶やかで、英吏は再び情熱が戻ってくるのを感じた。
「本当に壊れるかもね……ココロ」
 英吏はそう呟き、もうすでに今晩だけで三回いっているココロの身体を再びベッドへ抱きいれた。
「聖なる夜に乾杯、ココロ」
 ココロも、ぼんやりする記憶の中で、英吏にキスをした。
 英吏の興奮がMAXになったのは言うまでも無い。
 クリスマスはやっぱり奇跡の日なのかもしれない。
 だって、こんなにいっぱい抱きしめてもらえたんだから……。
 

 「あ、あれ……あっ、うわっ」
 ごて。
 翌朝、ベッドから起きようとしたココロはベッドからごろんと落ちてしまった。
 床に足がつく感覚がまったくしない。足に力が入らないのだ。
「今日1日は無理だよ、ココロ」
 クスクスと笑いながら、いまだベッドの上の英吏が言った。
「そんなっ、え、英吏があんなことするからっ……っ」
 英吏はココロを抱き上げ、再びベッドに連れ戻した。
 ココロは動かない腰と足をかばいつつ、英吏に文句を言った。
「もっと、って言ったのは君だけどね」
「そ、そんなことっ……」
 ココロは昨夜の大胆な自分を思い出して、真っ赤になった。
 そんなココロの頬に英吏はキスをする。
「ね、またいっぱいしたいだろう。何がしたい?」
「え……っ」
 戸惑うココロに英吏はちょっと意地悪く言う。
「してほしいことは言わないとわからないよ。まさか嫌いになって触りたくないだなんて思っていたなんて……」
「……だって……」
 ココロは少し躊躇して、それから、英吏の耳元で囁いた。
 そう、やっぱり言わなきゃ始まらないのだ。
 今日はクリスマスの次の日。
 昨日貰った勇気を使うべき、ですよね。サンタさん!
「まだエッチなことは無理だから……キスいっぱいして……」
 ココロの言葉に英吏はニッコリ笑った。
「仰せのままに。お姫様」
 甘い甘い空気の中で2人はキスをする。
 きっと、これからもいっぱいいっぱい問題も困難もあるけれど、お互いが思い合っていれば乗り越えられるはずだよね。
 ココロは英吏のくれるキスを受けながら、目を閉じた。
 
終わり。


―――田中王国国王中田感想―――

みなさまこにゃにゃちわ〜!田中王国国王中田です(^^)お久しぶりです。
久しぶりのやまとなでしこシリーズはいかがだったでしょうか。
皆様に人気の宮や、京を出せない代わりに、宮城と蒼志がちょっと活躍してます。
というか、ココロのひ、ひ、一人エッチ!!(笑)
いやぁ〜、まさかココロ君で書く事になろうとは!
皆様、いかがだったでしょうか?(・<)楽しめたでしょうか。(笑)
久しぶりに書いたのですが、二人とも相変わらず……と思っていただければ幸いです。
あ、そういえば外国の話で、一卵性が1人と二卵性2人の三つ子ちゃんが生まれたらしいです。田中の小説「やっぱり君じゃなきゃ嫌!」が本当になったというわけです。
本当に驚いております。
人類初らしですが、今後現実に……?
ならないですよね(笑)
では、皆様小説を読んでくださってありがとうございました。
感想をお待ちしております!
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