シンデレラボーイ

最初。 小説。 学生モノ



 「じゃあ、先輩。次はここに手を回してください」
「ぇえ…?こう…か?」
 可愛い先輩。俺だけの先輩。
 なんて可愛いんだろ。本当に年上ですか?
「でもさ、これが演技指導なのか?」
「もちろんです。今回の演目は聞きましたよね?」
「うん。シンデレラだろ?それにこんなシーンあったっけ?」
 あるわけないじゃないですか。
 王とがシンデレラのベッドシーンなんて。
 そんなの童話にあってしまったら、大変でしょうが。
 馬鹿な先輩。
 でも…そこが可愛い。
「じゃあ、最初からいきますよ」
「あ、待って…俺、台本ももらってないんだけど…」
「いいんですよ。最初ですから、気分で言ってみてください」
「ちょ、ちょっと待てよ。俺はお前と違って演劇部員じゃないんだぞ〜。気分でなんてしゃべれるかっ」
 そう。先輩こと滝沢 夕さんは演劇部じゃない。
 真っ白い肌。女の子のように大きなお目め。そして、揺れ動く黒髪。
 身長も男子の平均身長をはるかに下回る159センチ。
 でも、そんなのをまったくコンプレックスに思っていなくて、元気に走り回ってその可愛らしさをふりまく先輩に、奪われてしまったのは僕。
 高校の新入生歓迎式で、嫌嫌ながらも女子の制服を着てみんなの視線を奪ってしまった、罪な先輩。
 小動物のように動き回る姿は、誰しもを魅了する。
「俺がリードしますから」
「…うん……」
 演劇部の部室にベッドを購入させたのは俺。
 新品動揺のダブルベッドに夕さんの身体を優しく横たえる。
 柔らかい…けど、締まっている。
 女の子の身体とは違う……夕さんの身体。
 体中が欲情する。
 先輩の手をとり、軽く口付けする。
「ぁ………っ」
 夕さんから小さな声がもれる。
 それはいつもの先輩の声じゃなくて、少し怯えてて、少し甘い雰囲気の入った声。
「初めてですか?こういうの」
「………だって、俺女の子にもてないし…」
 先輩は男には狙われまくりですけどね。
 すみません、影で制裁を加えておきました。
 誰彼かまわずに…。
 だって、先輩を好きって言う人を見るたびに、嫉妬で狂いそうなんです。
 今だって、先輩の身に付けているガクランを今すぐに剥いで、その華奢で引き締まった身体を暴いて、濡らして、トロトロにさせてあげたいのに・・・。
 それを抑えるだけで必死なんです。
「王子様・・・・・・?」
 夕さんの口から、演技の中の呼び名で呼ばれる。
 下半身に刺激が走り、脳内が犯される。
 先輩にこの役を始め頼んだ時、断られることは覚悟済みだった。
 だって、もともと先輩は演劇部でもなんでもなかったし、それに俺の欲望の為にシンデレラなんていう女役だったし。
 けど、先輩はいつもの笑顔で。
『面白いならやる』
 って。
 夕さんにはかないませんね。
「シンデレラ・・・俺の花嫁になってください」
 夕さんの手に再び口付ける。
 チュッという音をわざと立てて。
 先輩の顔を見なくても、掌を見るだけで先輩がどれだけ恥ずかしがっているかがわかる。
 だって、掌だって真っ赤。
「でも・・・・・・・・・私は・・・」
 夕さんの声は少し高いボーイソプラノって感じ。
 だから、決して女声じゃない。
 けど、俺は、今まで聞いた全ての声の中で、この先輩の声に一番激しい性欲を抱いていている。
 この声で、喘いで、悶えて、俺の名前を呼んで・・・!
「俺では不満ですか・・・?」
 吐息がかかる位置までその顔を近づけてみる。
 夕さんの温度が直に伝わってくる。
 首筋、耳、うなじ・・・。
 犯罪的に可愛い・・・。
 衝動から思わずその首筋に顔を埋める。
 キス・・・舐めて・・・キス。
 夕さんの身体、夕さんの全て・・・夕さん・・・夕さん。
「王子様ぁっ」
 俺の頭を抑えて、話そうとする花嫁。
 ごめんなさい。ここまできたら、止まんないんです。止められません。
「シンデレラ・・・美しいシンデレラ・・・俺ではダメですか」
 首筋を少し強く吸ってみる。
 真っ白い首に、真っ赤な痕がつく。
 わざと襟からはみ出した、人に見える位置につけたのは、俺の独占欲。
「そ・・・んなこと・・・」
 第一ボタン・・・第二ボタン・・・一個ずつ外していく。
 一応先輩の手が、俺の手の動きをおかしいと思って止めようとしてるけど、組しかれているこの状況じゃ無理でしょう?
 中から出てきたのは清潔そうな薄い白いTシャツ。
 いつもこんなTシャツで体育しているんですか?
 これじゃあ、襲って下さいっていってるようなものですよ。
「っ・・・ぁあっ」
 演技じゃない声が漏れた。
 俺が先輩の胸の突起に触れた瞬間だった。
 固くなっていることに気づいたのは今みたい。そして、こんな事初めてだったみたい。
 戸惑いの声が聞こえる。
「あの・・・っ・・・俺・・・」
「シンデレラ、では俺の城に・・・来て下さいますか」
 顔が真っ赤です。
 耳まで。
 本当に好きです、先輩。
 あなたの全てが。
「ねぇ・・・先輩・・・」
 思わず本音が漏れた。
 でも先輩は、必要に弄られている胸への刺激でもう頭の中でモノを考えられないみたいだ。
 親指と人差し指でちょっと軽くつまめば、前髪が軽く揺れた。
 痛いくらいにつまんであげれば、唇を噛み締め、顔を快感でゆがませた。
 もっと見たい・・・先輩の誰にも見せない姿が見たい。
 いつも元気で、活発で。
 そんな先輩の淫らな姿。
 たぶん、僕意外に見たことがないんだ。
 優越感に、踊らされる。
 ベルトを外し、その下のジッパーを歯で噛んで開ける。
「ちょ、!?・・・っ」
 さすがの先輩でもこれには驚いたみたいだ。
 慌てて俺の頭をまさぐり、止めに触ってきた。
 けど…その感触がまた……こう…なんていうか。
 エロスをそそる。
「先輩……演技中だよ」
「んんっ…嫌っ…あっ…」
 夕さんの制服は、驚くほど簡単に脱げていく。
 下着の上から軽くキスをしてあげると、暖かなその場所はヒクっと蠢いた。
「王子様ぁ…っ…」
「姫……もっと……見せてくださいね」
 今度は唇で下着を脱がせていく。
 嫌だと訴えるように、先輩の首が小さく左右に震えた。
 でも、ダメ。
 やめてあげないよ。
「ああっ!!」
 下着から覗き見えた先輩のそれは、『夕さん』って感じ。
 ここまで妄想通りだとは。
 指を絡め、上下に軽く扱いてみれば、先輩の口から小さな声が連続的に漏れた。
「あっ…はっ…ぁあんっ…」
「触っただけですよ?それとも…自分でやるときもこんな声出てしまうんですか?」
 感じすぎる先輩。
 悶える先輩。
 えっちな先輩。
 全て好き。
 でも…。
「まさか、俺以外にこんなことしてきたヤツ…いるんじゃないですか?」
「えぇ!?」
 演技じゃない(最初から違うけど)俺のホンネに、先輩はびっくりしたようだ。
 そして、少しムッとしたみたいに口を尖らせた。
「………ないっ」
「そうですか…」
 怒らせてしまったおかえしに、愛情込めてそこを握る。
 ピンク色なそこがグンッと体積を増し、先輩にも性欲があることを教えてくれる。
 だって、先輩ってストイックすぎるんですもん。
 だから、誰も手を出そうとしないでくれていたのは、ありがたいですけど。
「もっ…メ…ダメっ…出る…出ちゃうからっ」
「…いいですよ…このまま…」
「あああっん」
 その日1番の声を出し、先輩は俺の手の中に欲望を放ってくれた。
 滴り落ちてきた手首の方から指先にかけて、舐めってみれば甘い…甘い味。
 先輩の味。
「だっ…何して…っ」
「演技中です」
「っ……」
「美味しいですよ?」
 笑っていってあげれば、先輩はこの上なく切なそうに顔を歪める。
 泣かないで、先輩。
「シンデレラ……もっと…もっとあなたを感じたい」
「ひゃあぁっ」
 秘められた奥部に4本の指を伸ばしていく。
 少し触れただけで、先輩は敏感過ぎるから…悲鳴に近い嬌声をあげた。
 まだ…本当に入り口に触れただけですよ?
 でも、初めて人に触れられたその場所は小さくすぼまっていて、万人の侵入を拒んでいるようだった。
 心の中で敬礼しつつ、中指を勢いつけて押しこんでみる。
「くぁっ…っ」
 声にもならないのか、微かな音を漏らし、歯を噛み締める。
「力を抜いて下さい…そっちの方が楽ですから」
 そう助言してみても、目の端に涙まで浮かべ、一向にそこは緩くならない。
 初めてなんですねって再確認して喜んでじゃいけませんか?
「…一応あなたのモノで濡れてはいるんですけど…痛いかもしれません」
「ぇ…?ああぅっ…痛っ…ああっ」
 ベッドスプリングが激しく揺れた。
 先輩の中に中指を最後まで押しこみ、同時に人差し指とくすり指もいれてみたのだ。
 極上……。
 キツク締まったその中は、熱い情熱の塊みたい。
 先輩の隠し持っていた袋とじ…。
「痛っ…ひっ…ふっ…」
 先輩の涙が零れる。
 舌で舐めってあげれば、反則技な表情を覗かせる。
 心臓に悪いです。これ。
「こうしても…痛いですか?」
 中を弄り、先輩の性感帯を探していく。
 先輩の放った精液が手についていて、それと一緒に弄っているから、くちゃくちゃと色っぽい音がする。
「……っああっ」
 見つけた…。
 先輩のイイトコロ。
「気持ちいいんでしょう?痛くないでしょう?」
「ひゃあっ…ああっ…ダメっ…おかしっ…」
 ベッドの上の先輩を、何度想像したことだろう。
 それで一人コトに及んでいたなんて、先輩が知ったら走って逃げてしまいそうですね。
 本当は伝えたいのだけれど。
 左右に弄りつづけていた手を、抜き差しに変える。
「あっ」
 怖いって…顔が語ってますね。
 怖いですよね…けど…わかってください。
「シンデレラ……っ」
 俺は切羽詰った自分のベルトに手をかけ、ジッパーを外す。
 演技指導…などと言わなければ手も出せない。
 臆病で卑怯な俺。
「熱いですね…あなたの中」
「んっ…王子さ…ま……?」
 名前を呼んではくれませんね…さすがに。
 演技指導の表向きが少し恨めしいです。
「俺のも……熱いんですよ」
「?…はっ…はあ…??」
「一緒に溶けましょう…姫」
 指でこじ開けるようにそこを広げて、熱棒と言う響きがぴったり当てはまるくらい猛った俺を押しこむ。
「あああーーっ」
 入り口に先が入っただけで、先輩は目を見開き、嬌声を上げた。
 ごめんなさい。
 でも……。
「ここでやめたら、先輩のが辛いと思うので…っ」
 華奢なわりに引き締まった腰を抱えなおし、もう一度押しこむ。
「ああっ…嫌っ…痛い…痛いよぉ…」
「っ…」
 狭いその空間はまるで天国。
 先輩の中に入っているというだけで、俺は達しそうになる。
 先輩…先輩も俺に感じてください。
 ガンガンと打ちこめば、涙が頬を伝って零れていく。
 なんて酷い後輩でしょうね。
 でも、ごめんなさい…本当にごめんなさい…愛してるんです。
 先輩を……女の人に取られたら、生きていけない。
 男に取られたら、そいつを殺してでも奪い返す。
 それほど、俺の人生は先輩込みなんです。身勝手ながら。
「ひゃあっ…ふっああん」
 先輩の小さくなってしまってきていたソレを握ると、先輩の口から再び甘い響きが漏れる。
 こちらの刺激を強くしてあげて、誤魔化されながらでもいい。
 俺で感じて。
 俺に感じて。
「っあん…」
「…………夕っ…」
 その声は……もう…ダメ。
 そんな声出されてしまったら…俺…ブレーキが壊れるでしょう?
 我慢できなくなって…思わず名前を呼んでしまったのに、先輩はそれどころじゃなくて、気付いてくれない。
「ふぁん…っ…あっ」
「感じてますね?」
 一度入り口付近までひきぬき、最奥まで突く。
「ぅあっん…」
「可愛い……っ」
 愛してる…愛してます…。
 指導でも、練習でもなんでもなくて…先輩が好きなんです。
 でも言ったらきっと嫌でしょう。
 俺もあなたも男だから。
 それでも、誰にも渡せはしない。
 奪う…。
 あなたを取り巻く全ての社会から、あなたを奪う。
 一生ね。
「夕…っ…出し…ますから…」
「っ…ああっ」
 先輩の中に出す気はなかったのに…今日は。
 でも、無理でした。
 先輩があまりに魅力的で、自分にセーブすることができませんでした。
「ン・……っ」
 先輩の中が名残惜しくも、ひきぬけばそこからドロッとした白濁としたモノが漏れてくる。
 俺の欲望の多さがこれで明白。
 今だ呼吸についていけない身体を大きく上下させ、先輩はベッドに横たわっている。
 いやらしい肢体を、盛ったガキの前にさらさないで…。
 また、すぐにでも…食べたくなってしまうから。
「シンデレラ…」
 気持ちを取り繕うとそう呼んでみたけれど、やっぱり先輩の耳には届いていないみたい。
「……めちゃくちゃ愛してるんですけど………知らないんでしょうね」
 汗と涙でしっとりとした前髪を撫でて上げれば、目を開けることすらできない先輩のまぶたが揺れた。

「……シ、シンデレラの台本のどこにもあんなシーンないじゃないかぁっ」
「ありませんよ。あたりまえでしょう」
 翌日。あんなコトがあった後でも、先輩が自ら会いに来てくれたと思ったら、両の手にシンデレラ関連の台本を十数冊抱え、顔を真っ赤にさせて一年生の教室に飛び込んできた。
「だ、だ、だ、騙したなっ」
「いいえ。俺が先輩を騙すなんてするわけないでしょう」
「…え、だって………?」
「俺、シンデレラが夕さんじゃないと出ないって、部長にも言ってあるんです」
「??」
「たとえ、演技だろうがなんだろうが、愛を誓うのはたった一人って決めてるんです」
「?ぇ…??」
「演技指導なんかで自分の性欲を、愛しい人なんかに押しつけるほどバカじゃないんですけどね。俺は」
「ぇえ…?」
「…まだ、わからないんですか?」
 イスに座っていた俺は立ちあがり、首をかしげる先輩の目の前に立った。
 先輩は足を一歩後退させ、ちょっとだけ警戒心を持ってるみたいだ。
「こういうことです」
 先輩の耳元で囁いた。
「……っ」
ばっさーーん。ドタドタ。
 持っていた全ての本が俺たちの足元に落ちた。
「わかりました?」
「い…っ…はっ…はい…」
 本と共にしゃがみこんだ先輩を見て、クラスメイトは唖然模様。
 ああ、なんて可愛いんだろう。
 

 『愛してますよ、シンデレラ』

 はたしてどこまで伝わったんだろう…?
 最後までしても、拒まなかったから、あなたは嫌がるかもしれないけど伝えちゃいました。
 こうなったら、ちゃんと受けとめてくださいね。
 一生……愛してあげますから。

 まぁ、…しばらくはあのベッドは…放課後の俺ら専用で。
完。


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