欲情☆発情★ボイス

最初。 4 小説。


−5−


強姦まがいなことを事務所でやられた日は事務所の収集がつかないせいで二人は早々と帰されてしまった。もちろん百合にも逢えなかった。誤解が解けなかったのが気になったが、誰も当事者を責めている場合ではないらしい。自宅謹慎を言い渡たすと優一もどこかに消えてしまった。そして、それから1週間。同じく自宅謹慎中の鞠也と二人でお昼のワイドショーを見ていた。内容はもちろんフジプロと白河プロ一色。特番を組んだところもある。けれど朔也はその情報を右から左に聞き流していた。あれ以来吏人にはあっていない。たぶんあちらも自宅謹慎なのだろうから、逢えないのは当たり前だろうけど。あの日も一言も言葉を交わさず帰ってしまったし、電話くらいあってもいいものだ。いや、俺からしてもいいんだけどさ。でも受話器を持つたびに拒否されることが恐くてボタンを3個まで押して戻すことを繰り返していた。
「朔也…親父に会いに行こうか」
鞠也の突然の発言に朔也は過敏な反応を示す。
「…あいつが会ってくれるわけないじゃん」
「でも、そろそろなんとかしないと。これは僕達の問題から始まったんだし」
朔也のいやがる気持ちもわかるが、そろそろこの問題を収集しないと、と悩んだ末の発言だった。黙り込む朔也の頭をなでなでし、説きふかせる。
「白河社長にも迷惑かけちゃったことは…悪いと思ってるんだろ?朔也も」
コクンとすばやくうなずく。それは2番目に気にしていたことだもの。
「じゃあ、これを解決できるのは朔也だけだよ…」
鞠也の発言は核をついていた。だからといってすぐに返事ができるものでもなかった。悩んで頭を抱えている朔也の前で、いきなりテレビが緊急放送にかわる。アナウンサーの慌てた声が響く。
『に、丹羽吏人さんがフジプロに怒鳴り込みをしているというニュースが入りました!私は今現場にきています』
「吏人!?」
「丹羽君!?」
朔也と鞠也は二人してテレビに張り付け状態だ。確かにそこには自分の家の事務所フジプロが映っており、そして吏人の姿もあった。
『藤 直彦を出せ…話しがある』
テレビの中の吏人はフジプロの受けつけコンパニオンのお姉さんに怒鳴っていた。
『申し訳ありませんが、ただいま社長はとり込んでおいでで…』
恐いくらいの勢いにまけそうになり、顔をあげないようにしているお姉さんに同情してしまう。
『いるんだろっ!出せよ…丹羽吏人が来たっていってやれ…』
吏人の声が響き渡り、たくさんの報道陣が吏人のまわりに集まってきたとたんにテレビがプツンという音を出して真っ黒になった。くるっと後を振りむくと、鞠也がリモコンで電源を消してしまったらしかった。そして、神妙な表情をした鞠也は似合わない決断力のある声で切り出した。
「僕達も行こう」
「うん」
朔也は迷いなく返事をした。
 「吏人!」
吏人は報道陣の海の中からあの声に呼ばれた気がして、怒鳴るのをやめる。あんなに艶があって、セクシーで色っぽい声の持ち主はただ一人だ。うるさく聞きこむ報道陣の声にも負けないあの声の持ち主は…朔也だ!!
「吏人!!」
今度は位置も確認できるくらいはっきり聞こえた。報道陣もまさか真っ向から向かってくるとは思っていなかったようで、自分たちの間をすり抜けやってきた朔也と鞠也にいそいでカメラを向ける。
「たった今、噂の兄弟マリファナの鞠也君と朔也君がフジプロに登場しました!!」
さっき見ていたテレビで報道していたアナウンサーが、まってましたと言った声を上げる。朔也はそれを笑顔でかわし、事務所の自動ドアをくぐった。それ以上は報道陣の人たちは入ってこれないらしい。少し安心したけれど、もう朔也達が聞こえなくなったからと勝手な報道をし始めたのは明白だった。なにやらせかせかとみんな動き出していたから。朔也がやれやれとため息をつくと、目の前には吏人が呆然と立ちすくんでいた。
「朔也…なんでここに…?」
「なんでって、ここまで騒がしたの俺なのに来ないわけに行かないだろ」
「僕達がくれば親父にも会えるよ」
そこで初めて鞠也もいたことに気付き、すこしむっとなる。朔也はそんなこと気付かずに、コンパニオンのお姉さんに話をつけてくると走って行ってしまった。
「そんなに睨まなくてもいいじゃないか…僕と朔也は兄弟なんだから一緒に来てもおかしくないだろう?」
ギロリとした視線をはずそうとしない吏人に呆れがちに言う。
「実の兄弟だからって、男同士だからって簡単に安心できないんだよっ」
「ただの兄弟だよ…本当にね。それ以上でもそれ以下でもない」
「一つのベッドで寝るのがただの兄弟かっ?」
いつのまにマンションの部屋にまで入られたのだろうか…そこを気にしつつも鞠也は答える。
「君のように下心はお互いないからね、いけないことなんて考えもしなかったけど?」
そこまではっきり言われれば信じるしかない。ただのブラコンな兄弟なのだと。吏人はフンと顔をそむける。
「吏人!鞠也!ちょっと、ちょっと…」
目をまん丸にさせて驚いて駆け寄ってくる朔也に二人はきょとんとする。
「どうしたんだよ…朔也」
吏人が朔也の呼吸が整ってから優しく問いかける。
「し、白河社長が…百合さんが来てるって…親父のとこに」
「え!?」
朔也側の事情は知っている鞠也と何もわからない吏人は同じ声をあげる。なんで百合さんがわざわざ来る必要があるんだ?3人の頭の中に疑問がもんもんと募ってくる。そんな朔也達の疑問を吹き飛ばすくらい軽快な大きな声が事務所のロビーに響き渡る。
「よう…お呼びだぜ3人とも!」
「幸四郎さん!!」
朔也と鞠也は再び驚きの声をあげると、吏人は嫌そうな顔で幸四郎を見た。
「幸四郎…お前も何かかかわってるのか…?」
そんな吏人を小さい子をなだめるようにポンポンと背中を叩くと、幸四郎はエレベーターに乗るように3人を促した。3人は勧められるがまま乗りこみ、幸四郎が社長室のある15階のボタンを押すのをただただ見ていた。
「―――で?親父はなんで俺達の案内人やってんの」
いらだちながら説いてくる息子に、ニヤニヤと笑うだけで核心をつく答えは出さない。
「さすがは俺の息子。ホモ宣言にこんな事件おこして、今度はライバル会社に乗り込みか」
朔也はホモ宣言はしてない…と突っ込みをいれようとしたが、それは吏人の声によって阻まれた。
「遺伝じゃねーの?スキャンダル人生は」
「かもな」
皮肉で言ったのに楽しそうに肯定されて納得いかない吏人をよそに、エレベーターは15階についたことをしらせる。
「朔也君はここくるの久々だな」
「ハイ」
幸四郎に言われて素直に答える。もう二度とこないつもりだった場所だ。
「直彦のやつ…心配してたぞ」
いつもふざけた幸四郎がマジメくさって言うから、一瞬本当かなと思ってしまったが直彦にそんな感情があるなんて考えられない。
「あの人は金と数字にしか興味ないですから、それはありえません」
淡々と自分の父親のことを話す朔也に、吏人は違和感を覚える。いつも通りの声だけど、少し震えを察知して、自分の体に密着するように朔也を抱きこむ。
「吏人…?」
びっくりして自分を覗きこんでくる理性を吹き飛ばす顔に一瞬抱きしめてしまいたくなるが、一応幸四郎の手前、無言で歩きつづける。朔也は吏人の優しさを感じ取り囁くように言う。
「アリガト…」
少し後を歩きつつそんな弟の姿を見て鞠也は自分の朔也を守るのも終わりかな…と少し悲しくなってたり。朔也は鞠也を守って生きてきたが、逆に鞠也は朔也を守って生きてきたのだ。麗しき兄弟愛だ。前方を歩く幸四郎の足が止まったので、うつむいていた顔をあげてみるとそこには社長室と大きく掛かれた金縁のプレートと、金色の取っ手のついたダークブラウンのドアが圧倒的な存在感をみせつけていた。3人が少し戸惑っていると、そんなの気にもしない幸四郎はコンコンとすばやくノックしてしまう。
「幸四郎です。呼んで来ましたよ…お宅の息子さん二人とうちの馬鹿息子」
「どうぞ」
中から聞き覚えのある声がする。親父、直彦の声だ。朔也の体を緊張が走る。半年近く父親とは逢っていない。けれどそれを感じ取ってくれた吏人が再び肩を抱いてくれて、体温が直に伝わってきて少しだけ緊張がとける。幸四郎はそれを見届けると、ドアを押し開けた。
 中には朔也と鞠也の父親で藤プロの社長、直彦と白河プロの社長百合が確かにいた。
「久しぶりだな…朔也」
「…」
社長室の中にある社長専用イスに堂々とた態度で座っている直彦に無言で頷き答える。それを確認して次は後の鞠也に話しかける。
「鞠也…明日から仕事は復活だ忘れるな。この騒ぎでCDの売上も伸びているようだし…」
「マネージャーから聞いていますから」
こんなときに何も仕事の話しをしなくても…相変わらずの態度に朔也は怒りを覚える。手をふるふると震えさせながら必死に抑えようとする。うつむいて黙ったままの朔也をいきなり抱きしめて安心させてきた柔らかい温かみに、朔也はびっくりする。だって、吏人に抱っこされても柔らかいはありえない感触だ。このメンバーで柔らかい女性の体をもつ人は一人しかいない。
「ゆ、百合さん!?」
その場に居合わせるティーンエイジャーはみなびっくりして目を見開いた。目の前には大柄だが母親のような印象を持たせる百合がライバル会社の社長の息子を抱きしめてる図があったのだから。けれど、幸四郎も直彦もそれほどびっくりしてないみたいだ。
「直彦っ!やっぱりあんたに子どもたちを任せたのは私の失敗だったみたいね…」
「え?」
子どもたちを任せた…?ってどういうこと?俺は直彦の子どもなんだから直彦の世話になってあたりまえじゃないか。
「ちょっと、ど、どういうことですか!?白河さん」
鞠也は慌てて会話に飛びこむ。だって、この会話から察すると、まるで自分と朔也は百合の子どもみたいな話になる。
「百合さん…ね。直彦はまったく話しをしてないわけだ…あたしたちのことを子どもたちに」
「話すことはないだろう。お前は立派にそだてるなら文句はないといったはずだ」
「それがこんな騒ぎをおこした人間の言うことかしら」
百合は憤慨したように直彦に食って掛かる。百合の腕の中で朔也は呆然としていた。吏人は人一倍理解力の早い頭をフル活用してなんとか出てきた言葉をつなげてみる。
「まさか…百合さんと…直彦さんは…ご夫婦だったとか言うんじゃ」
百合は自分の息子のようにかわいがってきた吏人にむかって満面の笑みを見せた。
「そうよ、正しくは元夫婦。あたしの人生最大の汚点ね」
「えええええーー!?」
それまでおとなしくしていた朔也は自分の体を百合の体を無理やり離すと、大声を上げた。
「お、俺と鞠也の…母さん!?」
「か、母さん!?」
自分の息子のそんな態度にがっくり肩を落す。確かにわかれたのは鞠也が7歳、朔也が1歳の時だから朔也は覚えていなくても当然かもしれないが、鞠也にまで同じ反応をされると情けなくもなる。自分が腹を痛めて産んだ子なのに。
「そうなのよ…鞠也、朔也。あんたたち直彦にあたしの写真とか見せてもらったことないの?」
「な、ないよな?…全部捨てたって言うから」
「うん…僕もそう言われたよ」
「呆れた!!気になりなさいよ少しは!」
百合にそう言われてはたじたじするしかない男二人。
「直彦も少しは話しなさいよ。朔也があたしの会社でデビューっていうからてっきりあたしは全て話したのかと思ったわよ」
「全て…?」
びくびくしたように聞いてくる朔也の背中をバンっと一発叩くと百合は話しを続けた。
「男の子なんだからしゃきっとしなさい!…ええ、私は直彦とわかれるとき約束をしたのよ。私が引き取るっていうのに、直彦ったら子どもは二人とも引き取るって聞かないんだもの。条件くらいだして当たり前でしょ?」
今の百合の言葉の中に違和感を感じ取った。―――!?親父が俺と鞠也と引き取るってきかなかったって!?だって、あの直彦だぞ。鞠也にハードな仕事をさせ、ぼろぼろにした。そして、俺にもアイドルになるように強要して、勉強よりそういったレッスンを有無をいわせず受けさせたあの直彦が、俺達を引き取りたかった!?
「男手一つじゃ厳しいってみんな止めたのに、俺は息子をどんなにしても絶対幸せになるよう育ててやるー、って親戚中の前で叫ばれちゃ、聞かないわけにいかないでしょ?二人を離れ離れにするのもかわいそうだし。あたしはそのころ仕事がなかったのも確かだし」
「条件って…?」
「ん?…『子どもを二人とも引き取るつもりなら、二人ともを世界中の誰より幸せにしなさい。そして、子どもたちがどんなに幸せか、私がどんな場所にいてもわかるようなビックな人間にさせなさい』って言ったのよ。『破ったら、すぐにでも息子を返してもらいますから』って」
朔也は絶句した。そんな…まさか…。それじゃあ、鞠也を売り出そうと仕事をハードにしたのも、そのCDの売上の数字に執着したのも、俺にレッスンを強要したのも、全て全て愛情から?
自分と一緒に暮らさせるためのしかたないことだった…?親父は俺達を愛してるの?
「…父さん…」
朔也は黙って下を向いたままの父親直彦の側に駆け寄った。
「父さんは…俺達のことを考えて全てやってたの?」
「…だが、お前達を苦しめたのも俺なんだろうな…俺は父親としては失格だ」
「でも、父さんは俺達のことを少しは愛しててくれたんだ…?」
「…毎日、毎日どうしたらお前らが幸せになるか、どうしたら百合にとられなくてすむか、そればっかり考えてたよ。いい大人が…情けないな」
微笑をこぼし髪をかきあげ答える父親に朔也は思いきり抱きついた。直彦は驚いたようだった。だって、自分は嫌われていて、こんな話しをしても疑われるだけだろうと思っていたからだ。
「ごめん…父さん…俺…」
「朔也…」
朔也は涙がじわじわ溢れてくるが、父親に見せないように顔を直彦のワイシャツに押し当てたまま離す。
「大丈夫…幸せだよ…俺…」
「朔也…」
「僕もだよ。ちゃんと幸せだよ。確かに仕事が大変なときはあるけれど、それは父さんががんばってくれた証拠でもあるんだから」
鞠也は朔也と反対側から直彦を抱きしめる。
「鞠也…お前達…」
直彦は本当に心から幸せそうな笑顔を向けて抱きしめ返してきた。親父がこんな優しい表情もするんだと少しだけ驚いた。この人は不器用なだけなんだ。人を愛することが、それを伝えることが。それだけなんだ。そんな3人の中に吏人の声が入ってくる。
「…じゃあ、どうして朔也は白河プロでデビューしようと思ったんだ?」
直彦から離れ、手で払いのけると朔也ははなしはじめる。
「…鞠也が父親に商品扱いされてる気がして、俺もそうなるのかと思ったら腹がたったんだ。だから、白河プロで売れて、親父がいなくてもしっかりやってる様をみせつけたかったんだ。ごめんなさい…百合さんまで騙して」
「それでお前なんなに仕事に熱心だったのか」
吏人は呆れて朔也のおでこをこずく。素直に謝る朔也に、百合は釣りあがり眉を下げて、にこっと微笑んだ。
「あ〜あ、息子があたしに会いにきてくれたのかな〜とか期待したのにな」
百合はがっかりしたようだが、気分を害したようではなかった。
「こんなことになってるくらいだから、てっきり鞠也と朔也は不幸になってるんだと思って、直彦から奪いに来たのに、とんだ無駄足だったみたいね」
百合は幸四郎に、吏人は返さないわよとウインクを飛ばすと社長室を一人あとにした。
「一見落着みたいだな、我が息子よ」
幸四郎は一人この場の空気が読めていないみたいだ。そんな父親の顔を見ながら、こいつも少しは俺のこと考えてるのかなと思いながら。それはないか…と苦笑した。
 お騒がせカップルとして有名になった朔也と吏人は、次のミュージックカフェにも出ることになった。その時初めて自分たちのCDがマリファナの新曲を抜いて1位をかざり、しかも一〇〇枚突破したことを聞かされ、生放送の前で満面の笑みと特別な声でそのかわいさを見せ付ける。もちろん、朔也にそんなつもりはないのだけれど。
「えっ!?あ、…ほ、本当ですか!?す、すっごぉくうれしい〜」
吏人は司会者のお笑いコンビがまたも朔也にメロメロなのを確認するとおもいきり不機嫌になる。そして、あろうことか生放送のカメラがばっちりこっちに向いてる、この最中!吏人は朔也の唇を奪ったのだ。しかも濃厚なディープキス☆呆然とする朔也、プラス他多数。
「な、な、なにするんだよ〜!!!」
恥ずかしさでどうにかなっちゃいそうだぁ。朔也は真っ赤になった耳を抑える。そして、そこにに吏人が前に俺の印だといって噛んだときのキズを感じ、ますますカーっとなる。司会者は歌にすすませようと、ぎこちない動きの朔也と機嫌を直した鞠也をスタンバイするよう促す。ステージでスタンバイ中、朔也は吏人にくってかかる。
「なんで、あんなとこであんなことするんだよぉ!!」
「したかったから」
「…そうじゃなくてぇ…」
そうじゃなくてさ、ほら、言って欲しい言葉があるんだってば。それを感じ取ったのか、吏人は朔也の顎を掴んで自分の方に向かせると吏人にしてはめずらしくちょっと照れてる表情を見せてきた。
「ね、な〜んで?」
朔也がからかうようにかわいさ一〇〇倍の声で聞くと、吏人も諦めたようだ。
「あー…もう、一回しか言わないからな!いっとくけど、俺は百合さんにも、今まで付き合った女にもいったことないんだからな」
「なんで言わなかったの?」
「俺様がなんでいわなきゃいけないんだっ」
あっぱれ王様気質。朔也は少し呆れた顔をする。そんないちゃつくさまを客席のみなさん、ゲストのみなさん、スタッフのみなさんはドキドキ見守る。二人はすっかり忘れてた。ここは今は生放送中のスタジオでみんなは自分たちのスタンバイ待ちだってことを。吏人が言おうと思った瞬間、仕事一番気質の朔也君はスタンバイしなくちゃ〜とマイクの方にかけよっていってしまうところだった。そんな天然朔也君の腕をひっぱって、自分の胸に戻すとまたも熱烈な欲情したキスをした。
「愛してる…朔也」
「吏人…!?」
朔也はこんな面前でキスされたことよりもこんなとこではっきり告白してくれた吏人に感激してしまった。
「俺が愛してやるんだ…誰になびくことも、他のやつのものなることも、他のやつにその欲情する声きかすのもなしだからな」
独占欲みえみえの言葉に、朔也は嬉ながら少し戸惑う。
「こ、声は無理だよ〜…俺歌手だよ?」
「歌う時は声変えろ」
無茶言う〜…。朔也はえへん、ごほんと咳払いして声を変えてみようと努力してみる。
「こ、こう?」
むしろ透き通ってキレイになってしまった声に吏人はがっくり肩を落す。まあ、仕方ないか。俺が目をはなさなきゃ済む事だ。吏人は朔也の背中をポンっと押して、スタンバイを促した。それまで黙って生唾もののその現状を見ていた観客一同は、いっせいにキャーっと叫ぶ。そして、それを合図に司会者は番組を進行する。
「そ、それじゃあ歌ってもらいましょう。今週第1位Say you love me」
朔也の声はこれまで一番艶があって、色っぽくて幸せを含んだ最高の声だった。終わった瞬間、客席、視聴者から問い合わせが殺到したことはいうまでもない。そして、その過半数が男からだったことで吏人の独占欲はさらに酷いものになったことは言うまでもない。
終わり。



最初。 4 小説。


Copyright(c) 2004 tanakaoukokukokuounakata all rights reserved.

-Powered by 小説HTMLの小人さん-

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送