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● やっぱり君じゃなきゃ嫌! --- -4- ●

俺はあまりの恐怖に目元から雫を落としてしまっていたらしい。嗚咽が止まらない。
 でも…おかしいじゃないか、そんなの。俺、そんなつもりなかったのに…。そんな風な男だって見られていたのが一番辛いよ。
「酷いよ…」
俺の目からポロポロ落ちてくる涙を、双葉は舌を使って飲み干していく。
「双葉っ!?」
嫌、嫌だ!……俺は双葉にこれ以上心も身体も踏みこまれたくなくて、頭を思いきり左右に振る。こんなの嫌だ!いくら双葉でも酷すぎる。
「お前が俺から離れたくても、嫌っても…俺は葉月を一生誰にもやる気はない」
宣言するように双葉は俺の目の前で呟くと、いきなり首筋にその顔を押し付けてきた。そのとたん、首に雷のような痛みが走る。頭がキーンとする。痛いんじゃない……熱いような、心臓を突くような痛み。
「や…やめっ!」
俺の首に赤い印がつけられていく。俺が押し付けられている壁の向いの壁についてある鏡にそれが艶かしく映っていて、俺の羞恥心を煽る。
「ダメだ…やめてやんない」
双葉は葉月の真新しい制服のブレザーを、ボタンを破りちぎる勢いで左右に開く。せっかくの出来立てホヤホヤの制服なのに、しわになっちゃうじゃないかっ。
「なっ…壊れちゃうじゃないかっ」
俺は慌てて拘束を振りほどき、ちぎれ落ちたブレザーのボタンを拾おうとして、そう叫んだ。でも、双葉はニヤっと怪しい笑みを浮かべた。
「壊れちゃうのは…葉月だよ」
「ふっ…」
双葉は葉月の唇を強引に奪う。何もかもを奪ういきなりのキス。恐いくらいのキス。でも、なんだか…なんだか…胸が痛い!
「んんっ…んぁ…」
双葉の唾液が俺の口の中に流れ込んできて、それでも唇を離さない双葉のせいで、俺は口の中に増える双葉の蜜を飲みこむしかない。
 ゴクン…って俺が飲みこむ音を出すと、双葉はうれしそうに微笑んだんだ。小さい頃に見た…幼い頃の顔ってやつ。
 そんな顔…するなよ。抵抗できなくなるじゃないか。
「葉月…葉月…」
双葉は俺の涙を流す目に軽い口付けをする。それを期に、俺の目から涙が再び出始める。たぶん、恐いとか、嫌いとか、嫌だとか、そんなんじゃなくて…混乱してたんだと思う。けど、双葉にそんな俺の微妙な気持ちなんてわかんなくて、再び険しい表情に戻った。
「そんなに嫌か」
「そ、そうじゃな……」
慌てて弁解しようとしたのに、双葉は俺の第一ボタンまでしっかりかけてるワイシャツの首もとを掴んだ。すっごく、苦しいっ!俺は歯を噛み締めて、その痛みをどうにか和らげようとする。
「ひゃっ」
双葉が変なコトするから…俺は妙な声をあげてしまった。だって、双葉が、俺のワイシャツをさっきのブレザーみたいに開いちゃったんだ。俺はワイシャツの中にTシャツとか着ない性質だから、双葉の前に自分の裸体をさらしちゃうわけで。
 普通に考えて男同士だし、兄弟なんだから裸の身体みせたって何もおかしなことなんてないんだけどさ。数年前からお風呂一緒に入ろうって言っても、双葉も蜜葉もなんだ、かんだ言って俺を避けちゃってたから、実際裸を見られるのは結構ぶりなんだ。だから、ちょっと気恥ずかしいって言うか。それに…俺、スポーツってまるでダメだから、貧弱なんだよね。クラスメイトの他の子たちはみんなイイ感じに筋肉ついてたのにさ。腹筋くらいはしてたんだけどな〜…うう。
 でも、俺のさらけ出された胸に双葉は、愛しいモノでも撫でる感じにその手を這わせてきた。
「ちょ、ちょっと…双葉っ」
俺はその行為をやめさせようとする。視線でも強く見られている上、撫でられるなんて…なんか、身体がドクン、ドクンって波打ってるんだ。おかしくなっちゃうよ、これ以上は。
 なのに双葉ってば、俺の声なんてまったく聞こえないみたいに今度は顔を胸に近づけると、右胸の突起をペロリ。
「……っひぁん…」
俺は聞かれないように声を抑えつつ、叫んでしまった。だって、いきなり舐められるなんて思わないじゃないか…!それに、そんなことされたの初めてだし…。身体から勝手に声が出ちゃったんだよ。
 恥ずかしすぎる!俺は目を固くぎゅっと閉じた。
 それでも双葉の必要な触りは、止まらない。
 それどころか、ますます酷く…なってる?
 双葉は小さく反応した声を出した、愛しい葉月をもちろん見逃してなんていなかった。自分自身がますますそれで煽られて、恐いくらいに欲情している。
「ぁあん…んっ」
こんな声…どこから出てるの…。恥ずかしさと、初めての快感に、葉月は朦朧としていた。
「葉月、気持ちいいなら、そう言って…」
「い…いや…ぁんっ」
嫌と口では言っても、身体がそうじゃないと語っている。葉月の身体はヒクヒク震え、ピンク色に染まってきている。
 可愛すぎる。愛しすぎる。
 それでもその反応には恐怖も入っている気がする。当たり前か…俺が無理やり行為に及んでいるんだもんな。
 双葉は自分自身を汚らしいものをみるように見てみた。これじゃあ飢えたケダモノだ。けど、もう止められない。
「やんっ…ぁんっ」
双葉は葉月の胸の突起を、その細い人指し指と、親指でクリクリと弄ぶ。
 そのたびに葉月は身体を左右にねじる。すでに拘束をといているのに、葉月は自分の下から逃げ出すようすはない。
 もしかして…葉月は俺との行為を悦んでくれてる…?
 双葉は一瞬自分にいいように解釈しようとして、心の中で首を左右にふった。
 これだけ快感に溺れていて逃げれるわけがないか。
 そう思える自分が悲しい。自信なんてない。あるわけがない。だって、葉月は俺のことを兄弟としてしか見てないんだから。
「やだ…っやめろっ…双葉っ」
自分で勝手に嫌な方向へ想像してしまい、ムカムカしてきた双葉は強引に葉月の下肢に身につけられていた制服のズボンのベルトをはずしてきた。
 ここまで兄弟がしないような行為をされていれば、さすがの鈍感葉月も警戒心がでる。これ以上はダメなことなんだ。頭の中で、ピンときた。
「だめ、ダメ、だめっ」
解かれた手を多いに使って、目の前の葉月は抵抗してくる。双葉はムゥっときて、無理やりに下着のブリーフをズボンと一緒に膝のあたりまで下ろしてしまう。
 あまりの恥ずかしい格好に、葉月は涙を流すのも忘れて呆然としてしまう。
 だって、脱がされて出てきた自分のジュニアは半勃ち状態で、先走りのミルクを滴らせているため、艶かしく、やらしく光っている。
「やだぁ…っ」
葉月はしゃがみこむと、両手でそこを隠して、足をがっちり閉めた。
 こんなの、俺じゃない。俺じゃないんだってば。もう一人にして!お願いだから。そしたらきっと明日には普通になってるからぁ。
 けど、ばっちり目撃しちゃった双葉は、葉月のひざをバッと開くと、葉月の手で覆い被さったそこに、手の上からキスをしてきた。
「葉月のここ…ヒクヒク言ってる。気持ち良かったって言ってる」
 直接の刺激が何もないのに、葉月のそこは大きさをましてしまった。それをわかってるのは葉月だけ。自分自身のそこを握って隠してる葉月だけ。それなのに、目の前の双葉に全部ばれちゃってるみたいで、泣けてくる。
 俺は弟にキスされて欲情したんだ。俺は弟に胸を弄られて欲情したんだ。
 葉月の頭の中で、常識というなのモラルが自分を攻めたてていた。
「ふぅ…うっ…ん…」
膝に顔を埋めて泣こうとしたのに、それすら双葉は許さない。顔を両手で挟まれて、上を向かされると、熱い舌が口の中に進入してきた。
「はっあっんんんっ」
口の中の、変な気分になるとこだけを双葉の舌は絡みとって、攻めて来る。どんなに自分の舌をよけようとしても、吸い取られて、呼吸すら奪われる気になってくる。
「んぁぁん…ふぅ…ふっ」
飲みこめないくらい、二人の唾液が口の中で溢れ、唇の端から細い糸となって垂れ落ちていく。
「葉月…葉月…」
双葉は何度も角度を変えてキスを続けてくる。その合間、合間には必ず切ない声で俺の名前を呼ぶんだ。なんでそんな声で言うんだよ…。
 俺は双葉の顔を押しのけようと、自分のジュニアを隠していた手を退けた。その瞬間、双葉はそれを待っていたかのように、自分の手で俺のそこを握ってきた。
「やだぁ…あっ、あんっ」
双葉は俺のそこを上下に激しく扱く。
 自分でそこを慰めるときみたいにさ。俺だって女じゃないだから、一人でやったことくらいあるよ。男だもん。でも…そんなにやったことないけどさ。だって、恥ずかしいし、そんなにいいものでもないし。
 そう思ってた行為なのに、双葉に握られたそこは膨らみも元気もぐんぐん増していく。自分でやるよりはるかに…気持ちいいって思ってる、俺…変だよね。
「ふぁっ…あぁん」
双葉が十本の指を巧妙に動かして、そこを攻めてたてる。それだけで、熱を帯びてて、敏感になってるのに、双葉は、まさかそんなこと!ってことをしてきたんだ。
 「お願いっ!双葉っ…やめてぇ」
俺は心臓がおかしくなるんじゃないかって思った。身体が急に後へ反りかえった。足がピクピク痙攣してるかのように、震える。
 だって、双葉ってば、俺の…俺の…ソコ…つまりジュニアを…自分の口に含んじゃったんだ。そして、あろうことか、アイスクリーム舐めるみたいに、ペロペロペロ…。舐めるだけじゃなくて、気持ちいいところを吸い上げたり、弄んだり……。
「おかしくなるうっっ」
身体が今までになかった感じになってるんだ。熱くて、熱くて、溶けちゃいそうだよ。泣いているのに、心の中じゃ嫌じゃないっていやらしく囁いてる。
「も…やめてぇ」
「やめていいの?」
双葉は意地悪なことを言ってくる。確かに、ここでやめられて辛いのは誰でもない俺だ。けど、このまま弟である双葉の手の口で達っちゃうんなんて、俺は絶対いやだった。だから、我慢したんだ。必死に我慢したんだ。
 けど、双葉はそれがお気に召さなかったみたい。
 悲しい、辛い、苦しいって表情をして、いっきに俺の性感帯をついてきた。
 俺自身が完全に硬くなって、勃っちゃってて、最高潮を向えているのに、俺は歯をかんで、声すら漏らさないようにこらえる。
 はっきりいって限界なんだよ。葉月の身体も、心も開放の時を待っていた。
 もうだめ…。
 双葉が俺を食い尽くすかのように、そこを大きく吸い上げたとき、俺は真っ白になる寸前の頭でそう呟いた。
 なのに、俺の最後の理性がほんのすんでで思いとどまる。
 今度こそ双葉を怒らせちゃったみたいだ。だって、ずっと俺に気持ちいいことしててくれたのに、いきなりその口をそこから離しちゃったんだ。
 そこはいきなり温かみがとれちゃって、なんだか淋しい…気分。
「なんで達かないんだ」
「え…」
呼吸の荒いままの俺に、双葉は聞いてくる。
「せっかく告白してきた蜜葉の気持ちをふみにじってるからか」
「あ…蜜葉…」
そうだ。蜜葉…。これじゃあ、蜜葉に悪いじゃないか。返事をする前に、他の人とこんなことしてるなんて。
 それまで蜜葉のことを思い出す余裕もなかったのに、いきなりその名前を出されて、俺はまた達けない原因が増えてしまった。
「セックス最中に、他の男の名前をよぶなっ」
双葉は俺を床に押しつけた。頭と背中を思いきり打ちつけて、俺は小さく声を漏らす。でも、それ以上に双葉の言葉が印象的で…。
「せ、セックス?!」
そう、この俺たちの行為に名前をつけるとしたら一つしかなかった。そんなのわかってたんだけど、言葉にされるのとは違う。
 蜜葉も…俺のことが好きってことは俺とこういうことすること望んでるのかな?…おかしいよ、そんなの。俺は…俺は嫌だ。
「これがセックス以外の何だっていうんだ」
「だって…それって…兄弟がやるものじゃないじゃないかっ」
「いいんじゃなか、いやらしくて、ドキドキするだろ」
最悪。最低人間。
 俺は目の前の双葉にそう言ってやりたくなった。もちろん、本当には言わない。だって、人を傷つける言葉は言っちゃいけませんって、昔からよく言われてたから。
「葉月はどう考えてたんだよ、この行為…」
「え…」
考えるも何も…いきなりはじめられて、辱められて…そんな時間どこにも。
「俺は…」
言葉につまる。嫌がってたのに、身体は悦んでたり、泣いてたのに、嬉しがってたり…変だよ、俺…。どうだって告げればいいんだろう。
「蜜葉に操たてるつもりが、こんな間男にやられて、申し訳ないって罪悪感にでも襲われてたんだろ」
「………」
「奪ってやるさ…あいつの悔しがる顔が目にうかぶな」
天使の微笑。絵画か何かの題名にありそうなそんな言葉が似合いそうな笑み。心から愉しいって言うか、全て乗り越えた笑みって言うか。
 でも、その言葉に込められた恐さは肌で感じた。
 恐いっ!
そう強く心の中で思った瞬間、双葉は俺の体制を思いきり変えてきた。
 両足を持ち上げて、自分の肩にかけた。つまり、俺の大事なところは全部、あらわにされちゃったのだ。
「双葉っ」
叫んでみたけれど、双葉はぐっと俺の腰を持ち上げただけだった。
 そして、自分の制服のずぼんのベルトを緩め、ジッパーをゆっくり下げていく。俺は、双葉の次の行動が読めくて、恐怖に陥る。だって、また俺のソコを弄って、達かせてくれるんだと思ったんだ。それなのに、自分のものまで取り出し始めるなんて!
 双葉のそれは俺のナンかよりずっとでかくて、大きくて。しかも、弄られてないのに膨らんでたんた……硬く。
「なんで…それ…」
「勃ってるかって…?葉月は男がどんなとき勃つか知らないんだっけ」
知ってるから不思議なんじゃないか。
「葉月とやりたいんだよ」
!?
 俺の目はうさぎの目よりまん丸になった。
 やるって何を!?男同士でどうしろっていうの。
 けど、俺の知識なんて飛び越えて、双葉は俺の後孔にいきなり自分の人差し指を挿入してきたんだ。
「ひゃああっ」
 大きな痛みが俺の秘められたそこを襲う。葉月は初めての痛みに、苦痛の声を漏らす。双葉もそれに気づいたのか、中に入れた指を動かすのを少し躊躇する…が、葉月の頭の中が、蜜葉や聖司とかいうやつのことを考えてるんじゃないか、と思ってしまうと指先も乱暴に動いてしまうのだ。
 こんなの嫉妬にすぎない。
 そうわかっていても止められない。優しくすることすらできない。それほどに、俺は葉月を愛しているんだ。
「痛…い…やめ…」
葉月はフローリングの掴み所のない床に、爪をたてる。痛さでどうにかなってしまいそうだ。頭の中が朦朧とする。
「…本当にまだ痛い?…熱くなってこないか」
双葉の声がどこか遠くで聞こえる。涙で視界がぼやけていてはっきりしない。
 痛みじゃなくて、熱いかだって…?
 そんなの考えてられるはずがないじゃないか。身体のおくが…おかしいんだもん。
「ふぅっ…ぁあ…っ」
双葉は指先をくい…くいっと上下左右に操り、後孔の中の葉月のいいところを突き当てていく。
 痛い、痛いといいながら、感じるポイントをつくと、身体をよじらせ快感の声をあげる。
「くぅぁっ!」
葉月の顔からだんだん苦痛の色が消え始め、双葉は一気に中指と薬指も中に押し入れる。
「ひぃっ…い、いやぁあ」
葉月の甘い声が少しかすれ声に変わって、色っぽさを増す。
 そんな官能的な声を出させているのが自分の指だと思うと、双葉はそれだけで自分自身が張り詰めていくのを感じる。
「葉月…ここは…?気持ちいい?」
耳元で双葉の嬉しそうな声がする。
 酷い!酷い…。俺はこんなに、やめてって言ってるのに。
「も…お願い…」
火照った口から自然と出た言葉。
 何がお願いなのかよくわかんない。けど、身体は中も外も熱くて、おかしくて。どうにかしてほしかった。そして、それがどうにかできるのは、目の前の双葉だけって気がしたんだ。
「お願いって…どうしてほしいの?」
「いやっ…わ、わかんな…い」
葉月は涙目で必死に首を横に振る。
 葉月の中で双葉の指が、何か生き物のようにその体の中を動き回り、支配していく。
「こうしたり…?」
双葉はその指をいったん引きぬくところまで引っ張り出し、性急に中におし戻した。
「ふぁぁんっ!」
その刺激があまりに強くて、葉月は腰を自ら揺らし始める。
 もりろん、本人にその自覚はほとんどないんだけど。もう、夢見ごこち…くらいの感覚しかなかった。
 でも、その反応に至福の笑みを浮かべる、双葉の姿があったり。
「かわいい…葉月…」
「……ぁ…んっ…」
葉月の頭のてっぺんから、足の先までがピクピクとかわいらしく跳ねる。
「今、気持ち良くしてやるよ…」
「ん…」
ようやくこの感覚から開放される…。けど、どうやって?
 葉月は頭の中の霧がいっきに晴れてしまう衝撃に襲われる。
 さっきまでの双葉の指とは比べ物にならないものが、指を咥えていた蕾に入ってきたのだ。
「いたぁぁっ…っ…ひっ…ああ」
目を見開いてみてみると、双葉の盛ったものが俺の中に…。
 痛みと、あまりのインパクトの強さに、葉月は失神してしまいそうになる。しかし、双葉はそのたびに、葉月の身体に深く押し入って、それを許さない。
「やだぁ…痛い…ぁああん」
「痛くないだろ…ちゃんと感じてるよ、葉月の身体は」
指の挿入と同時に元気を取り戻しはじめた、葉月のジュニアは今やパンパンに上を向いていた。
 それをきゅっと握られ、葉月は自分の方に向かされて、恥ずかしさにどうにかなってしまいそうになる。
「感じて…なんか…な…いっ」
俺は弟に弄られ、しかも貫かれているのに、そんな感情なんてあるわけないっ。
 けど、どうして俺の身体は…こんなおかしくなってるの?
 いやだ…こんなの、おかしいっ。
「感じてるだろ、ほら」
双葉は葉月の中に挿入した状態で、腰を激しく揺らす。
 そのたびに、葉月の身体に激痛と、苦痛と、もうひとつ…もうひとつ何か雷のような気持ち良さが走る。
「あっ、あっ…ぁぁあっん」
葉月は艶かしい声を発する。
「ふ…双葉…ぁ…ふぁ…」
「葉月…葉月…」
自分を呼ぶ、双葉のかすれた声が聞こえて、ますます恥辱心を煽られる。小さな声なのに聞こえる…それほど自分たちは近くにいるのだ。自分たちは、一つになってるのだ。
「こんなの…おかしい…俺たち…兄…弟なのに」
快感にゆがむ顔を見せたくないのか、真っ赤になった顔を隠すように、腕で顔を覆った葉月はボソリと呟く。
 双葉はその言葉に不満以外の何も抱かなかった。
 その態度は、葉月と繋がったその部分に集中した。激しく、葉月の中をぐい…ぐいっと突き上げる。
「ああっ!…はっ、はぁあ」
「兄弟だからダメ?…俺のここを咥えて達きそうになってる葉月に言われても説得力ないよ」
かぁっ、と一瞬にして顔がさらに赤くなる。
「嫌いだ…双葉なんて…」
顔を覆った腕の隙間から、光るものが落ちてくる。
「葉月…それでも俺は…」
双葉はそう呟きながら、葉月の腰を思いきり自分のほうに引っ張り寄せ、深奥を突き上げる。その瞬間、葉月の欲望は弾け散り、双葉のおなかのあたりに、白い白濁としたものを放った。
 同じ時、葉月の中でも、大きさをました双葉のそれが、欲望の全てを吐き出していた。

 葉月はあのあとのことをぼんやりと記憶していた。
 その記憶がただしいように、ちゃんとパジャマをきて、ベッドに入っていた。
 身体を温水でしぼったタオルできれいに拭いてくれたのも、クローゼットの中に入っていたパジャマを着せてくれたのも、ベッドに運んでくれたのも、双葉だ。
 いや、もしかしたら夢だったのかもしれない。あんな夢を見るなんて普通じゃないかもしれないけれど、夢だったらそっちのほうがいい。それで終わってしまったほうがいい。けれど、少し動いただけでも腰にくる重苦しい痛みは、あの行為が夢じゃなかったことを物語っている。
 罪悪感と、恐怖と、悲しさと、胸の苦しみに襲われ、酷い頭痛がする。
 なんで、あんなこと…。
 時計を見ると、朝の五時過ぎ。まだ起きるのには早い時間だけど、今から準備しなきゃきっと間に合わない。それくらい身体の疲労と、痛みは重くのしかかっていた。
 壁を伝ってなんとか洗面台まで行き、顔を冷たい水で洗うと少しだけすっきりした。
 けれど鏡に映った自分の身体に残る、赤い痕に気付き、顔面がカーッとなる。
 これは、これは…キスマークだ。しかも、先輩のじゃなくて…双葉の…。
 消せないものだとわかっていても、ゴシゴシ擦ってしまう。もしかして…消えるかもじゃん?まあ、俺の希望も空しく、赤いのが余計強調されただけだった。
 制服で隠れるかな〜と不安に思いながらも、俺はクローゼットの中から、ちゃんとハンガーにかけられた、大人なブレザーを取り出す。
 確か昨日、俺はハンガーなんかにかけてる余裕がなかったはずだから、双葉がやったんだろう。
 変なとこでマメなんだから。
 クスッと笑って、ワイシャツを着込んでいたところに、コンコン…とノックする音が。
一瞬にして、身体が凍りつく。
 双葉…?だったら、開けないからな。俺は怒ってるだ。絶対、絶対許してやんないんだから!
 そう思って無視していると、遠慮がちな声が聞こえてくる。
「葉月〜?いないの?」
あ…。この声は、信吾だ。昨日友達になった、クラスメイトの。
「信吾…ご、ごめん今あける…」
俺は慌ててドアに近づき、鍵を開ける。
 双葉、鍵までちゃんとかけていったのか。ここはオートロックじゃないから、鍵はかけなきゃ、かからない。
 本当、変なところでマメだな。あいつ。
「もう、何で最初から開けてくれなかったのさ」
怒ってはいないけれど、ちょっと不服そうに腰に両手を当てて、ほっぺたを膨らませた信吾が、仁王立ちで立っていた。
 信吾も俺と同じでそんなに身長が高くなくて、可愛いかんじなのに、高貴なその顔の感じのせいか、大人な感じのここのブレザーが、妙に似合っている。
「ご、ごめん…着替えまだだったから…」
葉月が口篭りながら言うとおり、葉月の格好は、パジャマのずぼんにワイシャツというなんともおかしな格好だ。
「でも信吾どうしたの、まだ学食行くのは早くない?」
葉月は壁に備えられている、スヌーピーの時計を見た。これはまったくもって葉月の趣味じゃない時計だ。ただ、入学祝いに…と三人のお祖母さんが買ってくれたのだから、使わないわけにもいかない。けど、どうして俺はスヌーピーで、双葉と蜜葉はナイキの時計なんだろう…。うーん。酷いよ、おばあちゃん。
「だって、早く迎えにこないと、どうせあいつがくるんだろ」
信吾は床の斜め下にため息をぶちまけながら言う。
「あいつ…?」
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