明るい!永田町ぷろじぇくと

-2- −4− 小説。


第3話―波瀾の花咲く会議室?


会議は、定例会議のようなモノで議題は決まったように、未幸の公約へと話が向けられた。
 未幸の公約。それは『同性愛の人権および結婚の受諾』と言う異例のモノだった。
 世界戦争の平和や、税金のなんたらを語る政治家を押しての当選だった未幸は、スキャンダルと年寄り政治家の格好の餌食だったといえなくも無い。
「それで桐生総理。貴方の公約の話ですがね」
 未幸が戦った選挙で、落選した人と同じ政党の年寄り議員がニヤニヤ笑い混じりで、今までの道路交通事業の話から一変させる。
 会議室内は今日は三十人前後の小さな会議で閑散としていたのだけれど、急に注目は総理へと向けられる。
 実際問題を言えば、みんなそれについては聞きたかったのだが、まさか自分たちの忌み嫌う報道キャスターのような真似は出来ない、と機会をうかがっていたのだ。
 相良はこの部屋には入れない。
 本当は入れても良いのかもしれないけれど、未幸はそれを拒絶した。
 ここは自分の戦場で、お前の戦いの場所じゃないのだから、と。
 だから、相良は未幸をここまで送ると、自室へと引き返した。
 たぶん、未幸が終わる頃にはまたちゃんと戻ってきているんだろうけど。
 とにかくそんなこんなで、ここには未幸しかない。
 アメリカ生まれのイギリス育ちの未幸には、まだ対して仲の良い議員と言うのが卓さんいるわけではない。
 可愛いうさぎちゃんを苛めるように見る議員達は、さしずめ狼か。
「はい、お伺いしましょう」
 それでも未幸は笑顔でその議員に対応する。
 そんな未幸の態度を生意気だと判断した者も少数派でいたけれども、若手の強気な総理と言うのも面白いもんじゃないか、と多くの者が思った。
「総理は同性愛についてオープンに考えているようですが、それは何故ですかな」
 イヤラシイ表情で、舐め回すように未幸を責める。
 この議員の席が未幸のすぐ横とかでなくて良かった。もしそうならセクハラまがいの手が伸びてきそうだ。
 実際、この議員はあまり評判の良い議員ではなかった。
 内閣の中では良く聞く悪い事の噂には、必ず名前が入っているような人だった。
 まぁ、噂なのだから本当はどうなのかわかないけれど。
 火の無いところにはなんとやら、である。
「いけない物と言う感覚がないからです」
「不潔だとか、非生産的だとか思われないので?」
「誰がそう言う理念を広めたのか、僕が聞きたいくらいです」
 会議室の中に少し暖かい笑いが零れる。
 未幸はそれを真顔で聞くと、すこし間を置いて続ける。
「恋愛と言うのは、顔や性格や性別や国やそういった物で咎める事が出来るものでしょうか。僕はそうは思わないな」
 恋愛、と言う青々しい言葉に、その議員は鼻で笑った。
「総理。政治に恋愛事を持ち出すとは少し可笑しいのではないかね」
「僕の恋愛を持ち出したわけではない」
「どうだかねぇ」
 何か意味を含んだその言葉に、未幸はやっとの事で冷静さを保つ。
 それはつまり、どういう事だろうか。
 その言葉を発した人間の、正しい気持ちまでは判断できないけれど、侮辱された事には変わりない。
 未幸がお開きだと言おうとした瞬間、未幸の斜め向かいに座っていた歳若い議員が未幸に向かって発言を示す手を挙げた。
「……総理、発言してもよろしいですか」
 未幸と忌々しい議員の一騎打ちになっていたその会議で、久しぶりに他の議員が口を開いた瞬間だった。
 未幸はどうぞ、と手を差し出した。
「失礼します。和多田広重と申します。蒲田議員、貴方こそ同性愛についてはどうお思いですか」
「わしか」
 和多田と言う青年議員に名前を呼ばれたおかげで、未幸は初めてその失礼極まりない男が蒲田と言う名前だったと知る。
 蒲田は再びフンと鼻を鳴らすと、今度は笑いもせず机に肘をつく。
「そんなもんで悩むだけ時間の無駄だと思うね。第一少子化だ、過疎化だと騒ぐ現代にそんなものを認めてみろ!政治家はアホなのかと馬鹿にされるだけだ」
 未幸が思わず口を挟もうとしたのを、和多田は一瞬早く止めた。
 ここは私が。
 そう言うように口元に手を当て、示される。
 我が道を行くと言う人生を歩んできた未幸だから、人に指図されると言うのが嫌いだけれど、とりあえず黙って聞いている事にした。
「そうでしょうか。では何故、桐生総理のような意見を持つ方が選挙に当選されたのでしょう。国民はこういった方を望んでいるのではないでしょうか」
 蒲田議員が言葉を捜し、ウッと唸る。
「今日本国民は愛に飢えています。恋愛に臆病になっています。アメリカンドリームや、映画のようにとはいきませんが、日本で生活する人々にそういった活気を与える良い機会なのではないでしょうか」
 そこまで和多田が言うと、会議室中からパラパラと拍手が零れた。
 そうなっては蒲田は発言する事が出来ず、小さくうずくまって隣の議員の肘を小突いた。
 未幸はその流れで解散を促すと、そのすぐに和多田の元へと走り寄った。
「和多田議員」
「総理。どうかされましたか」
 自分よりはさすがに年上だろうけれど、歳若い議員に未幸は丁寧に自己紹介をした後、会議中の礼を述べる。
 けれど、和多田はにっこり笑うと、いいえ、と否定を返した。
「私自身、総理の考えに納得していた、それだけですよ」
 人のよさそうな笑みを浮かべる和多田に、未幸は好感を抱いた。
「僕の考えを支持してくれるんですか」
「それこそ謙遜です。貴方の意見は日本を変えるキーになりうるものでしょう」
 廊下でそんな話しをしていると、GPSでも未幸に取り付けているのかと思うほどピッタリの時間で相良が未幸を迎えに来た相良の姿を、和多田が見止める。
「相良君は貴方の秘書じゃないですか」
 そう言われ未幸が振りかえると、息すら乱さず相良が廊下に立っていた。
 いつも通りの相良を見ると、未幸は少なからずホッとする。
 総理だ、内閣の長だと言っても、未幸もまだまだ二十五才の青年なのだ。
「じゃ、私はここで」
「ああ、また」
 和多田は相良には会おうとせず、そのままいってしまった。
 未幸はその後姿と、貰った名刺を見比べ、名刺を胸ポケットへしまった。
「未幸さん、今の方は?」
「ああ、さっき会議で一緒だった、自民党の和多田広重って人……知ってるか?」
「……ええ、まぁ」
 何故か言葉を濁す相良に、未幸は一応疑問は持ちつつも次の仕事のため、自室へと急ぐ事で、そんな事忘れてしまった。
 相良が疑問を持つときは必ず何かあるのに――だ。
 やはり、未幸もそうとう、緊張していたに違いない。

続く。


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