−3− | −5− | 教師。

● やまとなでしこ☆ダイナマイト --- −4− ●

肯定分で言われてしまっては、もう俺に否定権はないってわけで…。
 だって、叶の目には俺のぺったんこな胸が、丸見え。
「くっ…っ」
叶は俺の首筋から、鎖骨、胸の二つの突起へと手を這わせ、ピンクの突起を掴んでは、軽く摘んだり、手の平で転がしながら遊んでいる。
「ひっ…ぁ…」
なんで…俺…胸を触られたくらいで…こんな声だしてんだよ〜。
 でも、叶は俺がピクピク反応するたびに、すっごい嬉しそうに微笑んだ。
 本当に嬉しそうに見えたんだよ。
「男の子の胸だ」
当たり前だろ…。男なんだから。
俺はキッとして叶を睨む。
「だって…それに、ここ……」
そう言いながら叶は、俺のお腹から、下半身にかけての中心部分を押し当てるようにして撫でる。
「ひゃっ!」
そんなとこ…触らないでぇ!
 そこには…そこには…俺が男だって証拠があるんだからっ。
 しかも…そこはなぜか、ちょっとだけ膨らんでて。
 スカート越しでも寝転んでるこの態勢なら、それがバッチリわかった。
「女の子に…ここはないよ」
いやらしそうに、勝ち誇ったように語る叶を、俺は蹴飛ばしてやりたくなる。
 けど、ここで変に叶を刺激したら、俺は本当にここを追い出されてしまう。そして、そしたら、俺は一生根本 ヒトミにののしられ生活しなきゃならないんだ。
「ここも…心臓も…ドクドク言ってるね…気持ちいんだ?」
「んくっ…んっ…」
叶は俺を言葉で辱めながら、指の動きを止めない。
 撫で回すように、俺のジュニアの位置を確かめるように触り、その輪郭をつかむと、輪郭を強く握る…。
「んぁ…っ」
俺は、大事な場所を握られているせいで、自由に身動きが取れない。
 でも、どうにか叶を身体から離さないと…俺、なんかおかしくなるって思ったんだ。
 だから、少しの抵抗とばかりに、口元に手をやって、必死に声を押し殺す。
 甘い声で喘ぐココロの声が、叶にどんな影響を与えているかなんて、実際のところココロには全然わかってなかったんだけど、それでもココロは声を出したくなかった。
 だって、だって…自分からこんな声がでるなんて思ってもみなかった。
 身体の奥が震えるほど甘美で、何かを誘っているかのような、欲望の声。
「ふぅっ…っ…ぁっ」
「ほら、だんだん大きくなってきた…」
さっき一度、北条にいかされてしまったからといって、健全な男子である十七歳のココロ君は、叶の巧みな指さばきに、直接場所に刺激を与えられて、我慢ができるわけなかった。
 でも…なんか…北条にされてるときより…変な感じ…。
「…で、君は一体誰に食われたんだ?」
「……っ…へ?」
何言ってるの?…上手く、聞き取れない。
 もう一度…言って…。
「しらばっくれる気…?こんな可愛い顔して、さっそく教師を誘いこんだわけだ…」
「な…何…?」
叶の声が、どんどん厳しくなる。
「もしかして、無理矢理犯されたとか?」
そうだったら、それこそ許せないけど…。
「犯す?」
その言葉の意味すらわからないココロは、再び首をかしげる。
「ここを…こうすることだよ」
そう言って、叶は俺の腰をかかえあげ、自分の下肢に近づける。
「な、何して…っ」
こういう態勢をどっかでみたことある。
 そう、中学の友達と、友達の家で見たアダルトビデオのワンシーンだ。
 もちろん、それは女と男がやってたけど。
 すっごく似てるんだよ…あれと。
 女の方が今の俺みたいな格好して、叶がそのときの男の方で…。
 そんなことを考えていたから、俺はスカートが完全に身体から抜き取られていたことに気がつかなかった。
 もともと上半身ははだけさせてあったから、ワンピースになっているスカートを脱いじゃったら、つまり丸裸…。
「ちょ、ちょっと…っ」
俺をこんな姿にしといて、叶は俺をそのままにすると、いきなり自分の指をぴちゃぴちゃと音を出して舐め出した。
 叶って本当に綺麗な顔してるんだよ。芸能人にもそうそういないよきっと。ノーメイクでこんな綺麗なヤツって。肌とかもさ、すごいしっとりして見えるし、唇なんか本当に綺麗な赤でさ。
 だから、そんな叶が自身の指を舐めってる姿を見ただけで、俺はなんか顔が赤くなってきちゃって。
 うわ〜っ!な、なんなんだ、俺ぇ。
 この状況で、この反応はおかしいって。
「よし…いいかな」
アイスクリームを舐めるように舐めていた人差し指は、叶の唾液の蜜でとろとろだった。
「?」
なにが、いいの?
 俺がそんな気持ちで見ていたのが、伝わってしまったのか、叶は苦笑を漏らす。
「本当に知らないのかい?」
「だから、何…痛っ!」
普通の会話中だったってのに、叶は俺の腰を抱えなおすと、いきなり…いきなり…俺にも見えないところに、何かしでかしたのだ。
「痛いっ…あぅっ」
「痛くないはずだよ…ちゃんと十分濡らしてるから。」
「お前っ…な、なにして…」
身体に何か入れられているのはわかる。それが指だってことも。けど、けど…その行為の意味がわかんなくて、俺は上手くしゃべれない言葉を必死に繋ぐ。
「僕の蜜で濡れている人差し指を、君の可愛い蕾の中にいれたんだ」
「っ!?」
「すっごく可愛い…ここ。熱くて、情熱的に締めつけてくる…」
そんなことを聞いたんじゃない。
 むしろ、そんなこと聞きたくなかった。
 誰が自分の…そんなとこの状況なんて聞きたい!?
「な…んでぇ…っ、あっ…」
入れた苦しみがなんとかなくなってきたかと思ったのに、今度は叶はその指を俺の中で動かしてるみたいだ。
 ううん、みたい…じゃなくて、そうなんだよ。
 だって、俺の身体の中のことだもん、俺が一番よくわかってるさ。そりゃあね。
「ひゃっ…やっ…やだっ」
叶の指が、くの字型にまがって、俺の中の方を弄くるのが、わかる。
 なんか、目隠してして、箱の中のものを触って、それがなんなのか当てるゲームしてるみたい…。
 叶は本当にそんな感じで、俺の中を触りまくる。
 どちらかといえば…蹂躙してる…感じ。
 もちろん、ココロに蹂躙なんて言葉わかるはずがなかったんだけど。
 なんとなく、イメージで。
「もしかして…本当に初めて?」
どんなに優しい行為にも、かならず痛みを見せる俺を、初めて気遣った声だった。
「あ…たり…前…っ」
そう苦痛交じりでいってるのに、中の指は抜かれない。それどころか、動きも止まらない。
「本当に?」
俺が必死なって、首を縦に振るたびに、叶は嬉しそうに微笑む。
 王子様の微笑。
 そんなタイトルをつけたくなった。
 それほど綺麗だった。
 本当、こんな状況でなんだけど。
 でも、何がそんなに嬉しいの?
「叶…?」
「違うよ」
え?何が?
「名前で呼ぶんだ。さっき教えただろう。さぁ」
だから、なんで、コイツはいつも肯定分なんだよ…。
 俺が戸惑っていると、叶は俺をじっと見詰めてくる。
 そ、そんな瞳で見つめられて…拒絶できる人間がいたら、教えて欲しい。
 それくらい、叶の潤んだ大きな目は、俺に何かを訴えていた。
「……英吏…?」
そう呼びかけると、英吏はにっこり笑って、俺を抱きしめる。
 そして、叶の…入れてないほうの左手は俺の背中に回った。
 背中の上を愛撫し、撫で回していく。
「んっ…」
少し強い力で背中を触られ、爪で遊ばれる。
 でも、その痛みにすらなにかを感じ取る俺の身体は、熱を発するだけで、苦痛は、もうほとんどなくて…。
 なんで…?さっきは嬉しそうだったのに、どうしてこんな乱暴な…。
「じゃあ言うんだ。この痕は誰につけられたんだい?朝はなかった…この情欲の痕は」
「…っ…ひゃっ…そ、それ…ふっ」
叶の気持ちと、指の動きは比例してるみたいだ。
 声がちょっと声音に鳴ると、指は激しく俺の中をつく。
 だから、つまり…上手くしゃべれないんだって。
 それなのに、叶は俺が隠そうとしてると思ったみたいで、ますます怒りモードに入っていく。
 違う、違うんだってば〜!
 お願い、ぬ、抜いて…っ!
「もしかして…ここの学校の教師の中に恋人がいて、それに逢いにきたとか…?」
俺は今度は必死に首を横に振って否定した。
 いるかぁぁぁ!そんなもの。教師の中って…教師はみんな男じゃないかっ!普通に考えれば、生徒の中に…だろ。
 まあ、俺にはありえないことだけどさ。
 うう…自分で言ってて悲しくなる。だって、だってだめなんだもん。女の子って。
 でも、すぐその発想にいきつかない、英吏も英吏だ。
「じゃあやっぱり…誰かに…襲われて?」
「男を襲うヤツなんか…いない…だろっ」
じゃあ、北条のしてきたあの行為はなんなんだ…という突っ込みはおいといて、ココロのないに等しい、そういう知識の中で、男と男…っていうのは考えられなかった。
 ニュースで、男性教師に教われる男子生徒っていうのを見ても、殴られたのか〜くらいにしか受けとめてなかった。
 そんな、純真無垢なココロは、叶の感情をさらに盛り上げた。
「じゃあ、俺は君を襲ってるわけじゃないね?」
つまり、これは公認の行為…。
「えっ!?あ、違っ…」
俺はこんなの望んでないぃ〜!
 心の中では確かにそう思っているのに、頭と身体はそうはいかないみたいだ。
 叶が中を動き回るのを感じると、勝手に頭に感じろって指令がいって、身体をピクピク動かさせ、声を漏らさせる。
 しかも…鼻にかかったような、擦れた、あの甘美な声。
「ぁっ…やぁっ」
まだわからないことでいっぱいの、恐怖の入ったこわばった身体を、叶はひたすら撫でて、緊張を解こうとする。
「大丈夫…ここでは最後までしないよ…だんだんと教えて上げる。ステップワン…君はここで俺の指で達くんだ…いいね」
「ん…っ」
前の方が気になって、俺はそっちを自分で触ろうとする。
 たぶん正気の俺なら、死んでも人前で自慰なんてしない。
 絶対しない。
 神様に誓える!
 けど、けど…初体験な英吏の妙な行動…俺の中を指で掻き回すその行動は、なんでか俺の理性をなくしちゃってて…。
 今は、どうしても我慢できないんだ。
 だって、そこが一番今…切羽詰ってる場所なんだもん。
 しかたないでしょ〜…これでも現役バリバリの高校生なんだから。
 でも、自身を慰めようとした俺の手は、英吏にとがめられる。
「だめだよ。今は俺の手だけでいくって教えただろう。大丈夫、君は後ろだけで達けるよ。なんせ、この俺がしてるんだからね」
何言ってるのかわからない…。たぶん、めちゃくちゃなこといわれてる。けれど、けれど…身体はわかってるみたいに、そこは大きさをます。
「ふぁっ…ああっ」
「そう…良い子だね」
「ああーっ」
もうだめ、英吏の声も聞こえない。
 俺は叶に全てを投げ出してしまった。
 気を失うほんの一瞬、俺は英吏が至福の笑みで俺にキスをするのを感じたけど、きっとこれは夢。なんだかおかしいけど、気持ち良い夢だ。
 だって、男が男に…こんな…キス…しないよね。

 「先生…遅いわ」
先ほど、ココロに色馬鹿女とまで言われた道明寺 詩織は一人プールからあがり、じだんだを踏んでいた。
 遅い…遅すぎる。
 たかが、水着探しにいっただけのなのに…。
 一体どういうことですの。
 詩織は水が滴る身体にフワフワのバスタオルを身に着け、廊下に進み出た。
「詩織さん、どこへ?」
西園寺が目ざとくみつけ、声をかける。
「化粧室よ」
そういいながら、さっき叶が、根本ヒトミと共に出ていった方向に歩いていく。
 そして…叶専用の衣装室を見つけると、そこには人の姿がない。
 おかしいわ。
 叶様はいつも、誰かをあそこで着替えさせるときは、必ずドアの少し後ろで待っているのに。
 衣装室のドアには鍵がしまったまま。
 嫌な予感がして耳をつけてみる。
 レディにしてみれば…ちょっといけない行為だけど、今はそんなこと言ってられない。
「んぁっ…はっ」
耳に入ってきたのは、根本ヒトミの…喘ぎ声。
 もともと甘いボイスに、大人なエッセンスが加わったその声は、男を誘っている声。
 じゃあ…相手は?
 道明寺詩織は悪い予感を感じつつも、耳を研ぎ澄ます。
「すっごく可愛い…ここ。熱くて、情熱的に締めつけてくる…」
聞こえた声は…叶様の声。
 私達の王子様、叶様の声。
 神様より授かったかのような、あのお綺麗なお顔の叶様の声。
 生徒には絶対手を出さないで有名な、叶様の声。
 不可侵条約を生徒たちに結ばれている、あの叶様の声!
 道明寺は身にまとっていたバスタオルをぎゅぎゅっと握り締めると、思いきり左右に開いた。
 可哀想なバスタオルは、今日おろしたてだっていうのに、真中あたりできれいに半分こに。
 道明寺はそれをドアに投げつけるが、やはりタオル。どんなに強くぶつけても、鈍い音一つしない。
 それすら、道明寺詩織の心をいらだたせた。
「…根本…ヒトミ…っ」
憎らしき女の名前を呟き、プールへと戻っていく。
 ココロの女嫌いに拍車をかける出来事を…考えながら。
 「……ココロさん?」
「ん…?」
誰?…眠いんだよ、俺。
「ココロさん、夕食の時間ですよ」
夕食?
「あっ!」
俺は現状を思いだし、身体を急いで眠りから覚まさせる。そうだ!俺…なんか…プールの時間だったのに、叶と…うわぁぁぁ…変なことしちゃって…そして、そのまま眠っちゃったんだっけ。
「あれ?…俺」
どうやって部屋まできたんだろう。
「叶先生にお姫様だっこで連れてきていただいたんですよ」
俺の聞きたかったことをサラリといってのける。
 ってか、それって…ますます、あの女どもに嫌われる原因になっちゃうじゃんかぁ…。
 嫌うのはかってだけど、近寄ってこられるのはマジかんべん!
 どこで男だってばれるかわかんない上、俺は…俺は…女性険悪症なんだから!
 ほっといてくれぇ!
「西園寺…」
うん、この人だけはなんとか女だけどなれてきたな…。人間慣れが大切だな。
 ベッドサイドに立ち姿も綺麗に立っている西園寺は意地悪そうに微笑む。
「ちなみに、私はそんな可愛いネグリジェはもってないし、ヒトミのものでもありませんから」
ん?ネグリジェって…スカートみたいなパジャマのことだよなぁ。
「うわぁっ」
自分にかかっていたシルクのツヤツヤのブランケットを払いのけると、その下の俺の身体が身にまとっていたのは……ピンクのふりふりが印象的なネグリジェ。しかも…ミニスカートだ。
「な、何…こ…これ」
それは、肩が見えるくらいに広げられた首元、その中には白いレースが何重にも重なっていて、ちょっとちくちくする…。
 俺の膨らみのない胸のアンダーできゅっと薄ピンクのシルクリボンで縛られていて、そこから下は軽く、自然に広がっている。
 ミニになっているスカートの中には、首元同様白いフリルがたくさんついていて、蝶々の形をかたどっているレースは印象的だ。
「叶先生のご趣味でしょうか」
西園寺がそんなことを呟くもんだから、俺は顔を真っ赤にさせてしまう。だって、だって…さっき何をやってたかを鮮明に思い出しちゃったんだ…俺は。
「し、しらないっ!」
たちあがってわかったんだが、ミニスカートは本当にミニで。
 俺のももの半分あたりまでしか、そのスカートの丈はきてなかった。
 俺はすそをなんとかひっぱってみて、出た足を隠す。
 ココロの白く細い足は、ピンクのスカートからイヤラシク伸び、とても官能的だった。
 まあ、ココロはたんに恥ずかしかっただけで、それを見た男たちが、えっちしたいって欲望を燃やすようになるなんて思いもしなかったんだけど。
 俺はもともと自分でもあんまりそういうことをしなかった。
 つまり、一人えっち…ってやつ?
 友達は気持ちいって言ってたけど…やっぱり、一人って悲しいよ。
 だからといって、その辺にいるやつらとするんじゃなくてさ…ほら、もっと。うん、大好きな人とだけしたいじゃん?そういうのって。
 俺って…えっちに夢見過ぎかなぁ…。
 男のくせに、変かなぁ。
 ううん、でも、それくらいでいいんだよな。だから、俺は一人でやってても、あんまし気持ちいいって感じたことがなかったんだ。
 なのに、なのに…さっきの叶に触られた全身が…まだ熱くて…とろけそうで…叶の…英吏の言葉が耳から離れない。
 俺…どうしたんだろう。
「ココロさん?勝手な妄想に励むのはよろしいんですけど、そろそろ夕食にまいりませんか?」
「も、妄想なんて…っ」
必死になって動揺を隠そうとするココロの顔には、すっかり『妄想してました』って言う文字が書かれている。
 そういう態度だから、簡単に男に悪戯されるのに…まったく。
「え…あ、夕食って……?何?」
「ここの寮の夕食は、七時から九時までってきまってるんですが」
西園寺がそう言ったとたん、お腹がぎゅる〜って急に鳴り出す。
 そういえば…俺、お昼抜いてるんじゃん!
 えーと…今は何時なんだ。
 部屋の中の時計を探せど、見つからない。
 今日日、女子高生はみな時計は携帯電話でみるものらしい。
 携帯持たない主義な精神の俺は、仕方なく西園寺に時間を尋ねてみる。
 まあ…たんに、機械オンチってのもあるけどさ。
「八時四十五分です」
「な、なにーーーっ」
俺のご飯がぁ!
 慌ててドアに向おうとして、俺は身体全身に伝わる変な間隔に顔をゆがめる。「あ、あれっ?」
か、身体が…動かない?
 前に進もうと足を動かしてみても、前に足がでないのだ。
 おかしい…。
 それどころか、腰が…立たないってこういうことをいうのかな?
 ペタンと俺はその場に座りこむ。
 いきなり、しゃがみこむという変な行動にでたのに、西園寺は少しため息をついただけだった。
「今日は無理せず休んだらどうです?」
そんなぁ〜!ご飯も食べずに寝ちゃったら、それこそ身体がどうかなっちゃう。
「お腹減ってるんだよぉ……」
下から覗きこむように、西園寺に助けを求める。
 食べたい!今すぐ生徒食堂に行きたい!けど……身体が、何よりも自由にいかないんだ。こんなの初めてだよ…。前に足を踏み出したいのに、そのたびに、足はガクガク、腰はクラクラ。
 全身で、歩くことを否定してるんだ。
「部屋への宅配サービスはないんです」
西園寺にきっぱり言われて、俺は首をうなだれる。
 や、やっぱりだめかぁ。
 落ちこむ俺に、西園寺は着ていた制服のポケットからカロリーメイトを差し出してくれた。
 ありがたいし、確かに美味しいけど…。やっぱり俺はご飯が好きなんだよなぁ。しくしく。あ〜…お腹すいた。
 俺は空腹に耐えきれず、カロリーメイトをカリカリと食べて、なんとかお腹の虫を慰めた。
 
 ベッドに入ってどれくらいたっただろう。
 時計がないからわからないけれど、眠れず過ごした時間はすごい時間だと思う。
テストなんかないから勉強することもないから、俺は早々と風呂に入って、まともなパジャマに着替えると、ベッドに10時前にはもぐりこんだのだ。
 でも、全然眠れなくて。
 やっぱりカロリーメイトなんかじゃたりなかったみたい。
 だって、俺は一応高校男子なんだよ!?たりるわけないじゃんっ。
 つまり、お腹の虫のコーラスが大合唱を向えちゃったのだ。こんな夜中に。
「どうしよう……」
このまま布団の中にいたって眠れるわけがなく…。
 少しだけ身体をベッドの上で動かしてみる。
 なんとか腰の鈍さがなくなってる。うーん…もしかして、やっぱり英吏とのことが原因…だよね。
 かーっ!
 いきなりホッペが真っ赤になる。そして、目の前の真っ暗闇に、今日の英吏との行為が浮かんでくる。
 うわ〜っ!やめてっ。やめてくれっ。あれはきっと…俺、どうかしてたんだよ。きっと。うん、じゃなきゃ、いくら妹のためだって、身体を差し出すようなマネはしないよっ!
 そんな、時代劇の身売りにでる町娘…じゃあ、あるまいし。
 でも……英吏の言葉と、表情と、指の動きと…鮮明に思い出されるのは、そればっかりで。
 オレってもしかして…えっち?
 もしかしなくても…えっち?
 違うっ、違うっ、違う〜!絶対違うんだぁ!そんなの。
 グルルルル〜。
 そんなことを考えていても、お腹の虫は時と場所を選ばず、鳴り響く。
 やっぱ、お腹減ったな…。
 オレはカーテン越しに寝ている西園寺の様子を見てみるが、熟睡…と言うか、寝息すら立てずに静かに眠ってる。予想通りというか、なんと言うか…。
 確か、西園寺は生徒食堂があるとかなんとか言ってたよな…。ここは隔離された学校だから、きっと料理のおばちゃんかなんかも泊まりこみだよね。ってことはさ、もしかして、まだ起きてたりしないかな?最悪、冷蔵庫だけでも自由に開けられないかな。
 オレの頭の中に、現在不安や、心細さはなく、あるのは空腹に対する欲求と、本能一直線。
 オレは、ベッドからそーっとおきあがり、抜き足差し足で西園寺のベッドの脇を通りぬけ、部屋のノブを回した。
 カチャ…。
思ったより大きな音がして、俺は慌てて後ろの西園寺を盗み見た。けど、さすがの西園寺も、寝ている時はただの女…らしかった。ピクリともしない。
 ほーっと安堵のため息をつくと、オレは廊下に飛び出した。
 
「予想通り、行っちゃいましたか」
雪は、ベッドで静かに呟く。別に狸寝入りしていたわけではないが、西園寺様はココロが思っている以上の女なのだ。
 同じ部屋にいる人が、歩きまわってて気付かない人ではない。ココロがベッドから起き上がった頃には既に、目を覚ましていた。
 まあ、声をかけなかったのは、どうなるか見てみたかったからでもあるけど。
「…ココロさん。LLC学園の夜は危険でいっぱいですよ…?」
雪は再び、人知れず暗闇の中呟いた。

 食堂…。食堂…。
学校の案内板を頼りに、懐中電灯の明かりと、常夜灯でなんとか薄暗い廊下をココロは歩いていた。
 本当は暗闇はそんな得意じゃないココロ。
 内心ビクビクだったから、今誰かに肩を叩かれでもしたら、学校中に響き渡る声で叫び散らしたであろう。
「ん……?」
懐中電灯で照らしていた先に【ラウンジ】と書かれた看板を見とめ、ココロは下がり気味だったテンションを、一気に上昇させる。
「食堂ってここでいいんだよなっ」
うきうきしながら、その横開きのドアに手をかけると、意外にも簡単に開いた。
 いつも、ここには鍵をかけないのだろうか。
 ま、そうだよな。なんだかんだ行って、お嬢様女子校なんてそんな厳重じゃないよな。
 だって、お嬢様ってことは、夜中に冷蔵庫漁るようなハシタナイマネはしないよな。
 うんうん、それでこそ女だよな。
 機嫌がよくなったせいか、久々に女に対して感心したココロは、真っ暗のラウンジに入っていく。
「うわっ…すごっ」
ここも、我が男子校の学食とは全然違う…。
 ココロは再び、ショックをうける。
 真っ白い丸型のテーブルが四十個位散らばっていて、上には真っ赤とグリーンのテーブルクロスが交差ささってかかってあった。
 それにもしっかり金色の糸で、白百合が刺繍されていた。
 各テーブルには、テーブルと同色の白い椅子が六脚均等に供えてあった。
 うう…。うちのガッコの学食なんて、古い理科室みたいなテーブルと椅子なのに。
 もしかして、ここって出る食事もフランス料理とか言うんじゃないよな。
 オレ、今はお茶漬けみたいなの食べたい気分なんだけど…。
 なんか場違いな気がしてきた。
「あ、冷蔵庫あるじゃん」
オレは目ざとくキッチンを見つけることができた。
 それは、キッチンだけ電気がついてたからなんだけど。
 あれ?なんでここだけ点いてるんだろう。消し忘れ?
「ま、いっか」
もともと楽天的なのと、危機感がないのと、空腹のおかげで、オレはそれ以上考えずに冷蔵庫まであっさり進入できた。
「…うーん…」
冷蔵庫を開けて数分。
 オレはわけのわからない野菜とにらめっこしていた。
 ず、ずっきーに?何これ…。ちこり…ってこれ、本当に野菜かぁ〜?
 頭の中に、既にカタカナにすら変換し忘れている変な言葉がぐーるぐる…。
 オレは、普通に残りもののご飯とか、パン。せめて、リンゴとか探してたのに…。オレの期待をみごとに避けた、不思議な食材の数々。
「やっぱり、我慢しろってこと…?」
せっかくここまで来たのに〜っ!
 オレは急に空腹に拍車がかかり、その場に座りこむ。
「くそっ!馬鹿〜っ!LLC学園の馬鹿っ、馬鹿っ」
手に持っていたずっきーにと書かれた袋に入ったままの、野菜をその辺に思いきり投げつける。
「ダメ。野菜は大切に扱わなくちゃ…」
「うわっ!」
さっきまでまったく人気がなかったのに、いきなり背後から声がして、オレは身体をビクッと震わせる。
 そうか…誰か人がいたのか…だから、電気が点いてたのか…。
 オレはガックリ頭をうなだれる。
 しくしく。怒られるかな〜…そんでもってご飯は食べられなくて、泣き寝入りなんだ。
 もしかして…朝食も抜き…とか言わないよねっ!
 そんなことしたら、オレ、オレ…死んじゃうっ。
「ご、ごめんなさいっ!朝食は抜かないで下さいっ」
オレは慌てて叫んでしまった。
 よく考えてみれば、朝食抜き…なんて一言も言ってないのに。
「フフ…お腹すいてるの?」
オレはそちらを向かないままでコクンと頷く。
「ちょっと待っててね」
え…?怒らないの?
 オレは、慌てて振り向いた。
 そこには、長袖の白いTシャツの袖をまくって、黒いタイトジーンズを格好よく履き、腰から巻くタイプの紺色のエプロンを、こんなに似合うヤツやいないだろう、と言うくらい着こなしていた。
 …誰?
 冷静になったオレは改めてその人の存在に疑問を抱く。
「あの〜…」
後姿のその人に話しかけようとするが、その人は料理に夢中らしく、後ムキのまま答えてくる。
「ちょっと待っててね」
優しい声。
 全然怒ってないみたいだ。勝手にしのびこんで、冷蔵庫開けて、あまつさえ野菜を投げつけていたのに。
 オレは大人しくその場で待っていた。
「はい」
コト…っと目の前に置かれたのは、俺が今一番食べたいと思っていたお茶漬けで…。
 でも、オレがいつも食べるようなご飯にお茶漬けの元をかけて、お湯ぶかっけるタイプのじゃないよ。
 のってる具はよくわからないけれど、鯛みたい。あとは、いろいろ。それに、本当にお茶をかけるタイプのものらしく、目の前に端と急須も準備されていた。
「京太郎スペシャル、真夜中のディナー…編!」
自身満万で言うもんだから、俺は少し吹き出してしまった。
「あはは」
「あ、笑ったな〜!よし、食べてみてよ。うん、美味しいはずだから」
はず…じゃなくて、絶対美味しいに決まってる。さっきから、俺のお腹は薫りだけで我慢できずになってるもん。
「頂きまーすっ」
俺は丁寧に挨拶をすると、黒塗りの端を勢いよく掴んで、お茶をお茶碗にかけると、がっついた感じに食べ始めてしまった。
 だって、だって…お腹すいてたんだもん!しかたないじゃん。
「熱っ〜う」
「あ、すっごい熱いから気をつけてね」
返事するのも億劫で、俺は適当に頷いて食べる。
 だって、京太郎とか言うコイツがつくったお茶漬け…めちゃくちゃ上手いんだもん!
 それから俺はお茶碗の中身がすっかり空になるまで一言もしゃべらなかった。
 でも、そんな俺をアイツは、嬉しそうにずーっと見てたんだ。
 人に見られてると食べにくいけど…そんなこと言ってられなかったんだ。
「ふぁ〜っ、おいしかったぁ」
もう、気分はっぴい、はっぴいだぁ。
 俺はにっこにこ顔で、お茶碗をまとめると、水道のところに持っていった。
「あ、いいよ…俺が洗うからっ」
「え?なんで。食べたの俺だよ?」
なんで、作ってもらった上にあらわさせなきゃいけないんだよ。
「なんでって…俺がここの料理長だからじゃないか」
「へぇっ?」
料理長…って、ここでは料理のおばちゃんすら、男なのかっ!
 俺はLLC学園のいまさらな展開に、まだ付いて行けてなかったみたいだ。
「…君、本当にここの生徒?」
ぎっくぅ〜…。
 俺って自分から自分の地雷踏むタイプだな。うん。
 今日で二人にばれて、その上もう一人に疑われてんじゃん。
「そ、そうに決まってるじゃない…ですかぁ」
慌てて作り笑顔をやってみても、引きつってるのが自分でもわかってくる。
「いや…ここの生徒なら…俺のコトをしらない人はいないよ」
そういって京太郎は俺に顔を近づけてくる。
 フワッとケーキのような、美味しい薫りがする。
 あれ…こいつもよくみると綺麗な顔してる。北条はホストっぽいし、叶は王子様っぽいんだけど、そんなセレブな感じじゃなくて、コイツはなんだか、日本人…みたいな…感じ。
 黒髪、黒い目がそう印象付けさせてるのかもしれないけど、なんか、本当着物とかがめちゃくちゃ似合いそうな感じ。
 でも…やっぱり叶の方が…オレは格好良く見えるな〜…。
 はっ!オ、オレ…何ゆってるんだ。
 そして、相変らず背は高いんだよな。
 つーか、なんでここの先生たちはみんなこうでかすぎなんだよっ!オレ、むなしくなるじゃんっ。
「し、知ってますよ!先生のコトちゃんとっ」
オレは慌てて話を戻そうとする。
 ここで適当に誤魔化して、さっさと逃げ出してしまえばいいのだ。
「京太郎さん…でしょ?」
オレはさっき本人が自分で言っていた名前を大きな声で言ってやる。
 こうすれば…
「フフ…君、ここの生徒じゃないね」
はい〜!?
 なんで、なんで、なんで〜!
 どうしてさっ!どうして、ばれちゃったの〜。
「なぜなら、俺は本物の根本ヒトミちゃんを知ってるから。君、そっくりだけど、ちょっと違うんだよね。なんか…ヒトミちゃんより…。そう、それに、ヒトミちゃんは夜中に冷蔵庫荒らしたりする子じゃあないからね」
「ううっ…」
そう言われれば…そうだ。
 俺はヒトミに似てても、ヒトミじゃないんだから。ちゃんと知ってるヤツには、そりゃあバレルよな。
「それにね、みんな俺のことは京って呼ぶんだよ」
「きょ…う」
ちょっと怯えて上ずった声でそうささやく。
 上目遣いのその姿はなんともかわいらしかった。
「説明…するんですか…?」
こうなったら、説明してわかってもらって、口止めした方が早い。
 ココロはそう決心すると、聞いてみる。
「……するのと、大声でばらされるのと、どっちが面白いかな?」
ど〜……してここの教師は…変に性格悪いのが多いんだっ。
「しますっ」
慌てて返事すると、京はにっこり笑った。
 まさに、天使の微笑みな悪魔な本性の持ち主ってヤツ…?
「それより先に、自己紹介しようか。オレはここの料理長、和泉京太郎。二十四歳」
京はココロに笑顔のまま右手を差し出す。
「……根本ヒトミの兄貴、ココロ。高校二年生…」
馬鹿なココロ。自分から暴露しちゃった。
「男の子なんだ。へぇ」
「っ!?」
オレって…本当に馬鹿かもしれない。
「あの…それは…そのっ」
真っ青になっていく顔、冷や汗のたまる手。
 オレはみるみるうちに、不健康そうな感じになってしまった。
「別にオレは気にしないよ、男の子でも、女の子でも」
「へ?」
「ココロ君、可愛いから全然OK」
どうして、ここの教師はこんな意味不明な甘甘セリフをはけるんだろう。
「オレは全然よくないんですっ」
「そう?せっかく可愛いんだから、有効利用すればいいのに」
そこまでからかうように言われ、俺はムカッとする。
 こんな顔のせいで、この身長のせいで俺はどんなに苦労したことかっ!
 もしオレがあと二十センチ身長が高ければ、オレはきっと…女嫌いにはならずにすんだはずだ。
「オ、オレは好きでこんな格好してるんじゃないっ」
そう叫んでから、俺は慌てて口を閉ざす。
 あ〜っ!オレってば、コイツに弱み握られてる最中じゃん…。
「じゃあ、ココロ君はなんでここにいるの〜?」
お菓子のような甘い薫りのせいで、なんだか気持ちも穏やかになってくる。オレははんとか落ち着くと、京に全てを話すことに成功した。
「お願いします…黙っててくれませんか…ヒトミのことと、オレのこと」
「いいよ」
へ?やけにあっさりすぎません?
「本当に?」
思わずオレは失礼にも聞き返す。
「信じられない?」
オレは再び失礼にも大きくうなずいた。
 そりゃあ、一日のうちに二人に脅されて変なことされてれば…ね。
「やっぱりそうだよね」
「へ」
「ただで…なんて誰も言ってないもんね」
「へっ?」
「有効利用させてもらうよ」
だから、そういう恐ろしいことは…笑顔で言わないで。
 オレは身体をフワリと持ち上げられると、調理台の上に背中から置かれた。
 調理台はステンレスだから、薄いパジャマだったオレの身体は、瞬時に冷たさを感じ、ヒヤリとした。
「もしかして…っ」
二度あることは…三度あるってやつ?
「たぶん、もしかして…だよ」
うぎゃぁぁぁ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
 オレは全身を使ってなんとか調理台の上から逃げ出そうとする。けれど、その身体は上からしっかりと京に乗っかられちゃってて…。
 逃げ出せるわけがない…って状態。
 絶体絶命です。
「怖がらないで…。ちょっと気持ち良くなるだけ…だよ」
「怖がってなんかないっ」
震える身体を叱咤し、オレは気丈で答える。
 ばれたくなかった。いくらなんでも、こんなヤツに怖がってるなんて悟られたくなかった。
「じゃあ、誘ってるのかな」
「んなっ…」
オレは怒りのまま、上半身を起こそうとした。しかし、それは京をもっと悦ばすだけで。
「いただきます」
さっきのオレみたいに、両手を合わせて丁寧にアイサツすると、京はオレのパジャマのボタンを丁寧にはずし、左右に開いた。
 あらわになったオレの身体を凝視する京。
 くそぉ…、すっごい屈辱的。
 どうせオレの身体は軟弱だし、ひ弱だし、筋肉ないですよーだ。
 本当は、胸の周りと首筋に咲いたキスマークが気になって一瞬止まってしまっただけなんだけど。
 身体に自身がないココロは被害妄想が激しくなってるみたいで。
 京は一瞬だけ身体をココロから離すと、さっきの巨大な冷蔵庫に向い、何やらボールを持ってきた。
 中身は察するに…クリームだ、生クリーム。
 でも、生クリームなんてどうするんだ?
「きゃっ…冷っ」
ぼんやりと京のすることを、第三者的な気持ちで見ていたのに、生クリームがオレの胸元におとされて、オレは自分の置かれている状況を思い出す。
「京っ!?」
泡だて器でしっかりあわ立てると、ビニール袋をつかいながら丁寧に胸の二つの突起にデコレーションしていく。
 誕生日ケーキにやるみたいに、可愛くさ。
 でも、なんでオレの体に…?
「でーきた!」
京は自分の手についたクリームをなめりながら、自分の作品…もといクリームだらけのオレの身体を嬉しそうに見つめる。
「出来た?」
「うん、出来た」
何が?
心の中でそう問いかける。
「もちろん、食べちゃう準備」
そして…。
「やっ…やぁ…京…やめろっ」
なんと、あろうことか京は、クリームでデコレーションされたオレの身体をピチャピチャと音を出しながら、舐め始めたのだ。
「んんっ…」
「甘い…すっごいおいしい…ココロのか・ら・だ」
嫌らしい響きに俺は羞恥にまみれる。
 嫌だ…。嫌だ…こんなの…。
「ここも…」
「んあっ」
さっきから何度となく舐められつづけている胸の突起はすでに生クリームはなくて甘いはずがないのに、京はそこに吸いつくたびに、ため息をこぼした。
「はぁ…なんて甘いんだろう。ショートケーキの苺みたいだ」
「ふぅ……っ…んっ」
身体は思いとは裏腹に熱くなり、胸は本当に苺のように真っ赤に火照っていた。
「ひゃあっ」
いきなりずぼんを剥ぎとられて、オレは変なところから声を出してしまう。
「ここも、美味しくしてあげるね」
そう囁くと、京はオレの下着を下ろし、ちょっと成長しつつある俺のそこに再び生クリームをデコレーションしはじめた。
 しかも…念入りに。
 その少しぬるくなった、ヌルヌルの感触がオレの分身に当たるたび、俺は身体を何度も調理台に打ちつけた。
「暴れないで…それとも…気持ち良すぎて、じっとしてられない?」
どっちもだよ。
 お願いだから…誰か…誰かぁ…助けて!。
 怖くなってオレはそう願った。
 目から涙がこぼれる。
 オレは、思うだけじゃなく、声にも出してしまっていたしい。
 しかも、結構大きな声で。
「ラウンジはお静かにご利用下さい」
京はそう囁くと、オレの口を自らの潤んだ唇で塞いできたから。
「んんんっ…ん〜んっ」
離せ…。気持ちいく…ない?いい?わかんない…けど…やっ!
 京の手がオレの先走りの蜜とクリームで変なくらいヌルヌルのそこをきゅっと掴んで、俺の意識が可笑しくなった時…ううん、やっぱり可笑しくなったのかもしれない。
 だって、叶の姿が一瞬見えた気がしたんだ。
「離れるんだ。京……」
ん…叶の声がする…。
 でも、涙と熱で浮かされた俺の思考回路はそれが限界で。
 それが夢か現実か、嘘か真か確かめる前に、オレは意識を飛ばしてしまった。
続く。
−3− | −5− | 教師。
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