−6− | −8− | 教師。

● やまとなでしこ☆ダイナマイト --- −7− ●

「………まあ、その前に…」
英吏は改まったように咳払いをすると、俺の横に立っている男に向って、たぶん今までで一番鋭い睨みをきかせた。
 なんで今までで一番かって?
 それは、あの宮ですら、少し怯んでいたから。
 まあ、一瞬ではあったんだけど。
「まさか、宮が私のココロに手を出してたとはね…正直驚いたよ」
「そうだろうね」
宮は今まで後腐れない遊び相手とばかり、一夜の楽しみを繰り返していた。だから、こんないかにも処女、で、純白系には興味ないとばかり思ってた。
 北条自身そう思ってたから。
「いつ」
唐突に交わされる疑問詞に首を傾げるのは、ココロだけ。
 それが長年の友達…っぽい。
 今は確かにちょびっと険悪ムードだけどさ。
「英吏が保健室を出てったあと…かな」
宮は懐かしむように昨日の出来事を言う。
 英吏が保健室を出てった後ってことは、当然俺もいないし。
 そのあと何があったんだろ。
「まさか、お前パソコンの個人データ……」
英吏は一番最悪な予想をとりあえず口に出してみる。
 だって、本当ならばそれはばっちり犯罪だ。
 まあ、本人……ここでいうココロの了承があれば別だけど。
 今の英吏にはそれこそネタだった。
 ―――宮を落し入れるための…ね。
 例え長年の親友でも、家族でも、恋人でも。英吏様を怒らすとこわ〜いのだ。
 実はね。
 その事実をしる人が、この学校に10人いるか、怪しいところだ。
 もちろん宮は、知る人。
 だからなのか、そうであってもなのか、宮はフッと笑っただけ。
 ??どうなってんの〜?この二人。
「ご想像はお好きに」
「…まあ、いい。それより…だ」
いきなりかやの外だった俺の身体をぎゅっと抱きしめると、英吏はココロという人物全てを覆うようにかかさった白衣を剥ぎ取り、宮に突き出した。
「二度とこんなことするなっ」
白衣はなくなったのに、妙に温かいのは…熱いのは、別に、別に……風邪とかだからじゃない。
 自慢じゃないけど俺、ここ数年熱だけは出してないんだ。
 それこそ、ヒトミや姉のミミは結構アレで病気がちで。
 俺はそんな時だけ、俺ってやっぱ男だよな〜なんてしみじみ思っちゃうんだけど。
 ってか、それはどうでもいくて。
 俺の身体が熱いのは、やっぱ大好きな人に抱きしめられてるから。
 でも、英吏の腕はね、俺を護るって言うよりは、宮から隠そうとすることに必死で、ちょっと痛い。
 俺はちょっと顔を歪ませてみせるんだけど、それすら気づかない。
 やっぱり…怒ってるよね、英吏。
 でもさ………。
 これって、俺を好きだから怒ってるってとっていいの?
 なんか、小さい子の喧嘩みたいなんだけど。
「出ていけ」
 長年の親友に、英吏は一瞥をくれてやる。
 これは酷いんじゃないかな。
 だって、宮はそんな悪いやつじゃない。それを知ってるのはむしろ俺じゃなくて英吏のほうじゃないか。なのに、こんな言い方をしなくたって。
「英吏っ」
俺はつい、英吏の行為をとがめるようにその名前を呼んでしまった。
 英吏は自称コイビトの俺にそんな風に呼ばれて、さっきこの部屋に入ってきたときと同じ位目を大きくした。
 でも、驚いたのは宮もだった。
 俺、何か間違ったことしてるのかな?
 ううん、違う!悪いのは俺じゃないよ。
 だからって、英吏も宮も悪いわけじゃないんだけど。
「宮は悪くないっ」
確かに………襲われちゃったりとかはしたけどさ。でも、それは俺の気持ち。英吏だって同じことしてきたもんね。それでも、英吏にだけ嫌悪を感じなかったのは、俺が英吏を好きだから。愛しているから。
 宮にはそれぐらいの気持ちがなかっただけのこと。
 宮も好きだけど、それ以上に、比べ物にならないくらいに俺は英吏が好き。
 けど、そんな俺の気持ちなんてちょっとも伝わってくれなかった。
「なんで宮をかばうんだ…ココロ。まさか、宮を好きとかいうんじゃないよね」
綺麗な顔がどんどん曇っていく。
「な、なに言ってんだよ」
すぐに否定したのに、英吏の疑惑は晴れないみたいだ。
「……そうでなければ、恋人の俺じゃなくて宮を選ぶわけがない」
「今は……恋人とか、そんなの関係ないっ」
俺はたんに、宮が悪くないってことを伝えようとしたんだ。だって、俺のせいで英吏と宮の仲がこじれちゃったら嫌だもん。
「君は宮に襲われていたんだよ」
けど、結局は止まってくたし。
「わかってる…けど」
「君はわかってないんだよ」
「な……わかってるよ…」
「わかってない。君は知らないんだよ。男に襲われる本当の恐怖を…」
俺達だけの会話になってて、それまで間に入ってこなかった男。宮を、英吏は鋭く睨みつけると、ドアへあごで促した。
「出ていけ…そう言ったはずだ」
宮は、そんな英吏に肩を竦めると、視線を俺にうつした。
 ??
 何か口でしゃべってる。
 けど、口だけの形を動かすだけのそのしゃべりじゃ俺は半分も理解できない。
 うーん、なんて言ってるんだろ。
『辛い………俺…おいで…』
辛いことがあったら俺のところにおいで。
 たぶんそう言ってるんだと思う。
 辛いコト?とりあえずはないけど…。
 今ものすごーく、困ってはいるけどね。気持ちが上手く伝わらなくて。
 宮は俺が理解したのをわかると、クルリと姿勢を換え出ていった。
 ドアがしまる音が妙に物寂しく感じたのは、俺だけかな?
「ココロ」
艶のある、大人な声で呼びかけられて、俺はついビクッとする。
 よく考えれば、昨日あんなことしてから、二人きりで話すのは初めてだ。
 ちょっと気恥ずかしさを俺は感じちゃうところなんだけど。英吏はやっぱり違うんだろうな……恋愛をこなしてきた数が違うから。
 そう思うとちょっと悲しいんだけど。
「ココロっ!」
 再び名前を強く呼ばれて、ハッとして英吏を見なおす。
「君が考えて良いのは俺のことだけなんだよ」
「どうして…違う、違う!」
俺は目をぎゅっと閉じて、少し下を見ながら、首を横に思いっきり振る。
 そんな俺の頬を両手で優しく包むと、英吏はその首の動きを止めさせた。
 手が冷たくて、その指が細く固くて、機械みたいな感じだよ。
「違う…?」
英吏の顔が再び歪む。
 悲しそうって言うか、切なそうっていうか、そういうの通り越して、怒ってる。
俺は英吏とであってまだ数日だけど、それでもわかる。英吏はものすごく怒ってるんだよ。
「ね、聞いて。英吏、俺は……」
落ち着かせようと、俺は英吏の手を頬から離させ、その厚い胸を押しやって、この部屋にある唯一の座るもの―――ベッドに座らせようとした。
 けど。
「あ、えっ!?」
英吏は俺の手首をぎゅっと握ると、ベッドに押し倒した。
 身体はうつぶせているのに、英吏に掴まれている腕は変なねじられ型で背中の方に回ってる。
「痛っ…」
言葉も上手くしゃべれないほどの苦痛に、俺は思わず掴まれてない方の手でシーツを掴む。
「痛い?」
全然痛くないだろう…そういいたげに英吏は問いただす。
 俺はコクコクと機械的な動作で頷く。
「でもね、離してはあげないよ」
「なん…でっ」
荒い吐息が零れる。
「はあっ…ふっ…はぁ…」
痛みで漏れるその声でさえ、魅力的だった。
 英吏はグッと眉間にしわを寄せると、ココロの上に覆い被さった。
「こんな姿をアイツにも見せたのか!?」
アイツ…って宮のことだよね。
 こんな姿って言われても…わかんない…けど。だって、自分ではどんな姿してるのかわかんないし。
 でも、見せたのかもしれない。
 そして、英吏はそれが嫌だったのかな…。
 それじゃあ、俺が悪いの…かな。
「ゴメ…」
素直に謝ったのに、英吏はそれを揶揄するように皮肉そうに笑う。
「なんで君が謝るんだい」
だって…。だって、英吏がそれに対して怒ってるって思ったから!
 だから謝ったのに、なんでそんな…そんな態度するの。
「俺…はあっ…何が…わかんない…はぁっ」
英吏の手に力が篭って、ますます言葉に詰まる。
「わかんない?当たり前じゃないか。君は何もわかってない」
英吏は俺の乱れている衣服―――制服を後から剥ぎ取っていく。着替えるのも戸惑うワンピースなのに、英吏の手に掛かるとするすると綺麗に脱がれてしまう。
 なんか、慣れてる…よね。やっぱり。
 ねえ、今まで何人の女の子の服脱がしたの?
 何人の男の子の服を脱がしたの?
 何人と付き合ったの?恋に落ちた?
 どうしてだろう、そんな疑問が頭から離れない…。
 でも、わかってないって何が?
 ココロが痛みで潤んだ瞳で、覗きこむように英吏を見る。
 漏れる吐息、火照った肌、ピンクに染まった頬、ビクビクと動く肢体、甘い声、どれをとっても魅惑的で、全身で、男を誘っているようなのに…。その人が一番その危険性をわかっていない。
 そんなココロに、英吏の嫉妬心はギリギリだった。
「その声がどんなに魅力的か、その身体がどんなに色めいているか、その性格がどんなに男好きするか…」
そこまで言うと、英吏は色っぽく艶めいている唇を、ココロの背中に落した。
 何度も、何度もチュパチュパと言う音を出しながら、そこに赤い印を残していく。
「んんっ」
唇が背中に触れるたび、そこに熱さを感じて、そこに英吏の吐息が当たって、ココロは耳まで真っ赤にさせていく。
「そんな仕草も…わかってる?君は男を誘ってる…こと」
「んぁっ…知ら…知らないっ」
「知らない?知らないじゃ済ませないよ…。君は俺のもので、その身体も心もすべて俺のものなのに、他の男にその色気を見せるなんて、許される行為じゃないんだからね」
英吏の、俺を掴んでないほうの手が、シーツに押しつけられている俺の下肢へと移動していく。
 やだっ!こんなのやだ。
 昨日はとっても気持ちいいことに思えたこれが、すごく怖いことに思えてくる。
 相手はちゃんと英吏なのに、なんか違う!
 今日はなんか違う。
「英吏っ、嫌、お願い…嫌っ」
暴れる俺を身体の重みで制すると、英吏は冷たく笑った。
「何、何をお願いしてるのかな、ココロは」
「ふっ…これ、腕…放してっ」
「だって、これを解いたら君は逃げるじゃないか」
当たり前だろ!だって酷いじゃないか。こんなの。
「その前に教えて上げるよ…男に犯られるってことを…ね」
英吏の声がすぐ耳元でする。
 その長い舌が耳朶を甘噛みし、中に進入してくる。
「ぁ……っ」
足の先にまでピクンと起こる衝動を抑えきれない。
 嫌って思うのに、英吏にこういうことされちゃうとどうしようもないね、俺。
 やっぱり特別だから。英吏は特別だから。
 それなのに………。
「ふっ…ひっく…吏ぃ…」
英吏にこんなことを強いられた驚きで、急に涙が込み上げてくる。
「そんな可愛い顔して頼んでもダメだよ…ココロ。君が悪いんだ。あまりに綺麗で、純真で、真っ白で…無防備だから」
「ひゃああっ」
ココロは自身をきゅっと握られ、思考が飛びそうになるくらいの快感に恐怖を覚える。
 英吏の指先は、先端を弄くるように、焦らすだけ焦らして触っていく。
「ああっ…英…や…お願…いぃ」
自分が何を言ってるのかもわからない。
 とにかくどうにかして!今の状況から。お願い…。
 英吏はココロの涙を舌ですべて舐めとると、音を出して飲み込む。
 喉仏が動くその仕草が妙に艶かしくて、ココロは羞恥にまみれていく。
「ふっ…はっ、あ、こんなのっ…」
「こんなの…どうなんだい……気持ち良いのかな?」
嫌なんだよっ!そう言いたいのに、身体はまったく逆の反応で。
 英吏に弄ばれてたそこは、ぐんって大きくなってきちゃって、滴る先走りの液が英吏の手を汚す。
 英吏はその手を一度下肢から抜き出すと、わざとココロの前に出して舐めはじめる。
「君も飲んでみる…?君の欲望の全てだよ」
「嫌あっ…」
恥ずかしくて、嫌で嫌で。なのに、それでもそんな英吏の言葉に俺自身は反応しちゃう。
 なんで、どうして?!
「フッ…とっても美味しいのに」
ペロッと最後の液も舐めてしまうと、再び下半身にその手を絡ませてくる。さっきよりちょっとだけ大きくなったそこの変化にわかったのか、英吏はまた小悪魔みたいな顔を浮かべた。
「ココロ可愛い…」
首筋にその顔を押し当てられて、囁かれる。
 身体中に電気がビビビって走って、声だけで俺を独占する力があるのに…英吏の声には。
 それなのに、どうして、こんな酷いことするんだよ。
 俺のそんな目線には気付いてくれたのか、英吏は勝ち誇ったような顔をする。誰よりもかっこいい、誰よりも自身満万で、誰よりも力のある男に見える英吏にもどうしようもならないことはあるのだ。
 ココロのこと。
 快感を与えても、心を与えても、その人の真意をどうしても掴めない。
 だったら、身体を繋ぐしかないんじゃないか。
 ココロが欲しい。ココロが欲しい。
 この欲望が穢れているとしても、この気持ちがココロを悲しませると知っていても…それでも、俺はココロが欲しい。
 誰にも奪われるわけにはいかないんだ。
「あ…んぁっ…え…英吏…!?」
英吏の欲望が自身に押し当てられ、ココロは恐怖を覚える。
 何もわかってないからこその恐怖。
 さすがのココロも昨晩のがえっちの全てだとは思ってない。
 耳知識やえっちビデオ知識はあるから。
 でも、でも…まさか…だって、俺達男どうしなのに…。
「ああんっ!」
どこの指かわかんない。わかんないけど、英吏のさっきまで俺の背中を這っていた指がいきなり奥ばった蕾みに進入してきた。
 グイッと押しこまれたそれはココロ自身の蜜でヌルヌルに濡れていはいたけれど、昨日開発されたばかりの身体には今だキツイものがあった。
「は、ああっ、痛っ…嫌っ、お願…」
指はぐちゃぐちゃって音を出しながら、深いところへと進んでくる。
 そのケモノみたいな動きに、ココロは涙を流しつづける。
 嫌だ!嫌だよ…こんなの。
「ココロ、こんなこと宮としたい?」
俺は瞬時に首を横に振る。
「じゃあ、京としたい?」
もう一度首を思いきり横に振る。
 どうして、こんな俺が否定するってわかりきってる質問をするんだよ。
 わかってないのは、英吏のほうじゃないか。
 なんにもわかってないよ、英吏は。
「誰も…嫌っ…!みんな嫌!」
みんなの中に英吏自身も含まれているコトを悟り、英吏は理性の切れる音を感じた。
 この行為に恐怖を感じ、怯えるのはわかる。
 受身になったことはないけれど、英吏はこれまで何人もの人とこういうことをしてきて、中には処女もいた。
 最初は誰でもこういうものだとわかってる。
 けど、ココロの否定は違った。
 恋人とそれ意外を一まとめにしたその言葉に英吏は思わず、ココロの中に二本目の指を押しこんだ。
「ひゃあっ…痛っ」
怖いのに、痛いのに、出る声は喘ぎ声で、嬌声で。
 ココロはそんな自分が嫌で、思わず口の中に人差し指を押しこんで噛む。
 指の痛みなんて感じない。
 自分自身の下の方で行われている行為に耐えるのが精一杯で。意識を失いそうなくらい大きな衝撃に、ココロは必死に耐えていた。
「んんんーっ」
指が増えた!?
 押しこまれる圧迫感に、初めてのココロでもその本数の変化に気付く。
 痛いというよりはむしろ熱い。あんなに冷たかったものなのに…。
「んんっ!」
中で掻き回されるように動かされ、蹂躙されていく。
 指の形が、向きが変わるたびに、ココロは身体をピクン、ピクンと反応させた。
 そんなココロの艶かしい痴態は、ますます英吏を煽った。
「ココロ…」
英吏の吐息もすっかり熱くなってきている。耳に注ぎ込まれるそれは、ココロの耳をくすぐった。
 どうして、そんな声するんだよ。俺にこんなことしてるのは、英吏じゃないか!
 それでも、涙でぼやける目でみた英吏は無表情ながら、熱があるように汗ばんでて、目が燃え滾ってて、俺はどうしようもない今の状況に、ますます指を噛み締めた。
「ねえ、ココロわかる…?」
「何……んあっ!」
何が、と聞こうとして思わず口を空けると、その瞬間を狙って英吏の欲望と化した、三本の指がぐりっとココロの体内を掻き混ぜる。
 ぐちゃぐちゃとする音と、自分で触れない場所を弄られているという羞恥な状況に、なぜか昂ぶっていく自分…。
「自分の身体の変化」
わかってる。
 わかってるよ。可笑しいくらい俺の身体は、こういう行為に反応してる。
 教えてもらったのは、昨日が初めてなのに。
 既にこうなっちゃえるのって、やっぱり…おかしいよね。
 変なんだよね。
「疼いてきてるでしょ…?」
視界がボンヤリしてくる。涙で曇ってるんだ。
 そんなボンヤリして見える恋人の姿。
 もう、英吏がどう思ってるかわかんない。
 ねえ……俺のこと好き?
 英吏は俺にえっちなことしかしないじゃない。
 これも、愛なの?
「知らな……っあ、や、だめっ」
蕾みを弄るだけ弄って放って置かれた前の性感帯に、英吏の反対側の手が優しく伸びる。
 小指から親指までのすべての指が、ココロのそこを包むと、英吏は上下させるように刺激を与えていく。
「あ…ああっ」
ダメ…コレ以上やられたら…俺…おかしくなっちゃう。
 真っ白だった頭の中に、花火が飛ぶようなそんな違和感…ううん、気持ち良さが俺の理性を壊す。
 嫌だって思うのに、身体は正直で。
「ひゃっ…んぁ…っ」
自分の腕の中で、嫌だ嫌だと言いながらも可愛く喘ぐだけの恋人に、歯止めの聞かない英吏は、せめてもとその行為に快感を背をわせる。
 今までの女の子たちはこれで十分だった。
 恋愛感情で好きになっても、やっぱり初えっちっていうのは、受身側としては誰しも恐怖心があるもの。
 けれど、そんなのもわかんないくらいぐちゃぐちゃに快感に酔わせてあげれば、理性なんて人間の一番弱い感情は、吹っ飛んでくれて、その人の一番淫らなところを見せてくれたのだ。
 いつだって…いつだって。
 ココロが身体をピクピク震わせながら、シーツにうつぶせているのを姿を、英吏はしばしじっと見つめ、グルッとココロの身体を反転さえる。
「え、あ…?英吏!?」
いきなり向いあう形になって、ココロは目をきょろきょろと動かす。
「ココロの恥ずかしがってる顔が、これだとよく見えるからね…」
「っな!」
フッと笑いながら、英吏は俺の耳を噛む。
「痛っ」
俺は痛みに顔を歪める。
 それもそのはずで。
 英吏は俺の耳に傷を残そうと思って、噛んだみたいだ。
 英吏が次に何をするかがまったく読めなくて、ココロはぎゅっと目を瞑る。
「あああっ…何…してぇ…」
 どんな反応をするかが見たくて、ココロの先端の亀裂をチロリと舐めてみると、上半身を無理矢理に起こした。
「ココロを気持ち良くしてるだけだよ」
口から光る蜜を滴らせながら、しゃべる英吏は、すごく魅力的だった。
 ふだんからも、セクシーオーラが出てるのに、今の英吏は、そんなの比べ物にならないくらいに色っぽくて……官能的。
「や…英吏ぃ…お願…それ嫌…」
英吏が、英吏が俺のそこを舐めてる…。
「はあっ…んぁーっ」
やめてっ!お願い…英吏…そんなことしなくていいから。
 目で訴えてみても、英吏がやめてくれるはずがない。
 だって、さっきからずっと叫んでるのに、英吏は続けようとしてる。
 どこまで行くの…?俺たち。
「ああっ!」
チロリと舐められただけでも、可笑しくなりそうだったのに、英吏は、俺のそこを口に咥えたんだ。
「嫌っぁあ…」
気持ち良いって思っちゃう自分が嫌。
 俺のそこは、しっかり勃ちあがってる状態なのに英吏の口にきっちり納まった。
 すぐに舌を使った激しい扱きが始まる。
 輪郭を確かめるように外観を舐め回しながら、付け根をきゅっと搾り出すように指で攻める。
「も…だめぇ…ひゃあっ」
抑えられてもいないのに、逃げることができない。
 ううん、本当はがむしゃらに動けば出来たかもね。
 でもね身体が動かなかったんだ。英吏の下から這い出ることさえできなかったんだ。
 それは………ね。
 わかるでしょう?
「気持ち良すぎて…だめなんだよね。ココロのは」
先走りの蜜が、英吏の口を汚してる。
 目の中にそんな映像が飛び込んできて、かーっとなる。
 その瞬間、後に入れられていた英吏の指を締めつけちゃったみたい。
 俺はわかんないんだけどさ。
 どうやったら締めれるとか、本当わかんないんだよ。
 けど、実際そこはきゅって英吏の指を放さないように締めつけちゃったんだ。
「ぁ……」
気付いて、締めつけられると痛いのかなって思ったから、英吏の顔をもう一度勇気振り絞ってみてみる。
 もうさ、勇気振り絞らないと見れないよ。こんなハズカシイ状態じゃ。
 でも、英吏は痛いのか、そうじゃないのかわかんない顔してた。
 むしろ、痛みどうのこうのって感じの顔じゃなかった。
「ココロ、まさか宮に教えてもらったんじゃないよね…」
複雑な表情の英吏にわけのわからないことを言われて、俺はムッとなる。
「ぇ…っ?あ、んっ」
英吏は不思議だったみたい。
 俺が初心者なのに、初めてなのに、英吏の思った通りの反応をされたことが。
 知らないよ…そんなの。
「ねえ、ココロ。俺は君に聞いているんだよ」
違う…。
 知らないよ。俺は英吏が好きで、好きで好きでどうしようもなくて、そう思うと身体が勝手に反応するんだってば。
 俺は、額に浮かぶ汗が飛び散るくらいの勢いで首を左右に思いきり振って否定するんだけど…。
 英吏は信じてない。
 絶対信じてない。
 それがわかったのは、英吏の表情が曇ったままだったからと、後の指と前の指同時に痛いくらい強く刺激を与えられたから。
 ううん、あれはきっと痛くしようとしたんだよ。
 これは罰だって…小さい子かペットを躾るように。
「痛っ…痛い…」
前はぎゅっと握り、その大きな手に納まれ、悲鳴をあげてるし。
 なんで英吏…ここまでするのさ。
 男がここをこういう風に扱われたら、すごく痛いんだって…大の大人でも涙流しちゃうってことくらい…男の英吏なら知ってることじゃない。
 後は、三本の指を九の字に曲げられ、奥まで突き上げられる。
 指って短いって思ってたのに…すっごく奥まで突かれた気がして、どうしようもなく怖くなる。
 両手をシーツに絡ませ、耐えていると、英吏は嬉しそうに笑った。
「も…嫌……っ」
目に右手を覆いかぶせるようにして、視界を自ら隠す。
 今の状況も、今されていることも、今の英吏もみんな嫌いだ!
「ひっく…お願…やめて…英吏ぃ」
嗚咽がとまらない。そんな俺の涙が伝う頬を、英吏が優しく舐める。
「泣かないで…」
泣かないで!?
 理不尽な注文に、俺はムカッときた。
 ものすごくムカッときた。
「泣くと…もっと酷いコトしちゃいたくなる」
「ヒッ…」
小さな悲鳴をこぼしたココロの中から、生々しい音をたてながら、三本の指を一気に引きぬく。
「ああっ」
すっかり広げられたそこは、ヒクヒクと朝の状態よりもずっと疼いてて、抜かれた瞬間に、俺はもの欲しそうな声をあげちゃった。
 その声を聞いた英吏は、いやらしそうに笑って、自分のスーツのベルトを緩めチャックを下ろし始める。
「ココロ…俺がどんなにココロを愛しているかを知っているかい?」
「へ…?」
淫らに乱れた格好の俺に、唐突に英吏はそんな質問を振りかける。
「知らないんだろうね…君は」
「英吏……?」
英吏の愛…?
 本当に俺を愛してくれてる…の?
 ねえ、だったら俺がどれだけ英吏のこと好きか知ってるのかな、英吏は。
「だって知ってたら、その身体を誰にでも開くわけがないよね」
身体を開く…って、触らせたってこと?
 それは英吏の愛を知ってる、知らないは関係無いじゃないか!自慢じゃないけど、いきなり襲われたんだよ!?
「ココロ…」
英吏は俺の腰をグイッと抱えなおして、その疼いて疼いて仕方ない俺の下肢に自らの盛って大きくなったソレを押しつけてきた。
「ぇ…ぁっ…ええっ」
やだ…これって…英吏の…だよね。
 男同士でこういうことしてるってだけで恥ずかしいのに、こんなダイレクトにその感情を感じられる部分を肌で感じて、自分の下半身が熱を帯び出したのを感じた。
「はっ、ああん…あっ」
「これだけで感じたの?」
意地悪そうに笑うなよ…。
「違…っ…ひゃっ」
否定したいのに、身体は俺の頭とは反対に勝手に反応してくる。
 自分の身体なのに、自分でセーブできない。
 理性が…きかないってこういうコト?
「俺の愛を…全身で感じて」
耳元に、熱い吐息とともに、英吏の下半身直下型のセクシーボイスが入りこんでくる。
「え…?」
その言葉の意味を聞き返そうと思った瞬間、目の前で爆弾を爆発されたかのような衝撃が、ココロを襲った。
「あああーーっ!」
痛い。さっきまでの痛みなんて、痒みくらいに思えるくらいのものすごい痛みが、俺の下半身をひっきりなしに攻めてたてる。
「痛っ…ああっ、やめぇっ」
さっきまでヒクヒク疼いてたそこに、英吏の男の部分が埋められてる。
 足が妙なくらい広げられて、苦しい態勢の中でココロはひたすらソレを抜いてくれるように懇願する。
「抜い……てぇ…お願…」
それでも英吏は徐々に身体を推し進めて、少しキツそうな顔をしながらも最奥まで埋め込んだ。
「ひぃ…ぁ…英…」
声も出せないほどの痛みに耐えながら、この苦痛が早く終わることだけを願う。
「ココロ、聞こえる…平気かい?」
「んぁ…っ…はあっ」
平気なわけないじゃないかっ。
 そう怒鳴りたいのに、身体全身が英吏と言う鎖で繋がれたみたいに、手の指一つ動かすだけで身体が引き裂かれるような痛みがココロを苦しめる。
 これが……みんなが俺にしようとしてたことなの?
 痛くて、苦しくて…恥ずかしくて。
「も…ね、英吏、英吏…」
何度となく名前を呼ぶ。
 その声は朝よりずっと擦れていて、ココロの甘いボイスに色気を混ぜ合わせていた。
止めて欲しくて、抜いて欲しくてそう言ったのに、俺の呼吸が落ちついてくるのを見計らうと、英吏は俺の足を持ち上げてさらに広げると、自分の身体を揺らした。
「ああっ…はあっ」
激しい突き上げに、俺は鼻にかかった変な声をあげる。
「うん…いい声だ。もっと聞かせて」
「嫌…だって…ああっん…ふぅ…あ…」
痛くて、痛くてどうしようもなかったのに、苦しいくらいに感じていた体の奥の疼きは緩められ、自然と嬌声が上がる。
「え…英吏ぃ…」
耳につく嫌な音が、ココロを狂わせる。
 こんなの嫌だって思うのに、痛いって感じなくなってきてる俺がいる…。
「ココロ…」
さっきまでずっと冷静沈着だった英吏の息も、少しだけだけど上がったみたい。
 掻き回すように、俺の理性を可笑しくさせるポイントを攻めつづけ、ココロが自身の下半身をヒクヒクさせ、限界を感じて、涙を流すのを見止めると、英吏はココロの腰をガシッと掴んで、自分のそれをギリギリまで引きぬいた。
「ああっ…ひゃあっん」
抜けちゃうんじゃないかってくらい引きぬいたそれを、一気に元納まっていた位置よりもさらに奥につきあげて、ココロの性感帯を思いきり弄る。
 少しだけ萎えはじめていたココロの前は、その刺激のおかげで再び燃え始める。
「熱っ……」
身体中が熱い。身体の中が熱い。
 英吏を受け入れているそこが、英吏の熱を、思いを一心に受けてて、受けとめきれない。
「………ごめん」
英吏の声が俺の耳にだけ聞こえるだけのトーンで、聞こえてくる。
 何…何を謝ったの…?
「ぇ…」
英吏。
 そう呼びたかったのに、声になったのはそれだけ。
 だって、一瞬英吏のゴメンって言った声が聞こえたかと思ったんだけど、本当にその空気は一瞬で、すぐにまた英吏の激しい注挿は始まった。
「ひゃぁあっ…ああっ」
ドクンドクンとうなるそれは、もうケモノみたいな勢いで、俺の中を自由自在に動く。
 身体中を英吏の薫りが纏って、英吏色に染められていく…俺。
 怖さが何よりも勝っている今の状況で、ココロは英吏だけを感じて、英吏だけを見ている。
 英吏はココロの微妙な変化に気付き、左手でココロのジュニアを扱く。
「あーーーっ」
後は固い熱棒で蹂躙され、前を手馴れた手付きで愛撫されて、ココロは快感を感じているコトを隠すことが出来なくなる。
 もう無理…。
 失神しそ…うだよ。
 こんな英吏は嫌。絶対嫌。許してやらないんだからなっ!
 気持ち良いって…可笑しくなっちゃってる自分もいるけれど…やっぱり変だよ…俺、嫌だって言ったのに。
「ああっ…あああっ…」
ベッドが激しくきしむ音を聞きながら、ココロは再び限界まで追い詰められる。
「一緒に…ね」
そう囁いた英吏の手の中に、ココロは白濁とした欲望を放つ。
 そして、身体の中で英吏のソレも放たれたのだった。
 ココロは肩を上下させながら、ベッドに沈み込むと、涙と汗と唾液と精液でベトベトになった身体を振るえる自らの手で包むと、意識を失った。
 そして、意識を失う前のその瞬間。
 絶対家に帰ってやる!
 そう思った。
 英吏はココロから繋がったままのそこを、意識を失って締め付けのなくなったココロから抜き出し、スーツの中に仕舞い込むと、額に光る汗をぬぐった。
 今までこんなこと一度も無かったのに…。
 自分の欲望のままに、初めてだったココロをこんなになるまで抱いてしまった…。
 けれど、その後悔の念をも上回るくらい、嬉しがっている自分に腹が立つ。
 誰も触れたことのないココロの秘所に触れる事が出来た。
 その悦びは、良いようも無いほどの快感で。
「嫌いになるんだろう…ね」
目の前で、荒い呼吸の中意識を失っている恋人……の髪を撫でる。
 俺だけのココロ。
 そう思ってしまいたくなるのはしかたないじゃなか。
「こんなに可愛いんだから…」
けれど、強姦まがいのことをしてしまったのは事実。ココロを泣かせてしまったのも事実。
「神よ…もし、この罪深き男を許してくれるなら、願わくば……」
いつも首にぶらさげてある、十字架にキスをして、それをココロの唇にも押し合えてる。
 さんざんキスして、あんなことまでしたあとなのに、こんな間接キスが何よりもドキドキする。
「願わくば…」
そう言って、今度は本当のキスココロの唇に押し当てると、英吏は部屋を後にした。
 ココロは夢もみず、長い長い眠りについた。
 まるで、王子様の迎えをまつお姫様みたいに。

続く。
−6− | −8− | 教師。
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