−11− | −13− | 教師。

● やまとなでしこ☆ダイナマイト --- −12− ●

英吏に会いたくない…。
 そんな思いが胸の中に出来る日が来るなんて。実際、会いたくないというよりは、会って何をどうすればいいのかわからない。って言ったほうが適切かも。英吏を大好きな自分がいて、英吏を独占したい自分がいて、英吏のことばっかり考える自分がいて、同じくらいの英吏の気持ちを欲してしまう…。
 そんなこと………叶わないのに。
 叶わないって思ってしまうのは、ココロの自分に対する自信のなさと、英吏を信じきれてないからなのかな…。
 信じてないわけじゃない。でも、昨日の男の言葉がいやに耳につく。
 好みの男なら誰でもいいって人もいる。
 俺と似たような顔の人はこの世にいっぱいいるかも…そして、そっちのが性格よくて、背もすらっとしてて、可愛かったら…英吏はどっちを選ぶんだろうって考えた時、ココロは素直に自分、と言いきれなかった。
「西園寺、俺…図書館に行って来るけど…英吏に聞かれても言わないでくれる?」
「…何かあったんですか?」
ルームメイトというものは、嫌でも空気を感じてしまうもの。狭い空間の中で、その人の感情の動きなど、手に取るようにわかる。
 それが、今日のココロの様子なら尚のこと。
 昨日はデートのはずだったのに、朝起きてからボンヤリと過ごしている。朝ご飯に誘っても、ずいぶん悩んでからやっぱりいいの一言。お腹は一応減っているようなのだが、ソコに行きたくない原因でもあるかのように。
 それが今明確になった。
 ココロさんは、英吏先生に会いたくないのだ。
 あんなにラブラブしてたあの二人にいったい何が?
 普段なら、自分の人生をいかに楽しくすることしか考えてない西園寺だが、さすがに今日は、ココロの悩みを悪化させようとは思えなかった。それほど、ココロは悩み、憂い顔だった。
 季節は夏だと言うのに、そこだけ一帯、秋の空気でも流れるように。
「何も。何言ってんだよ、西園寺、おかしいな」
ハハハ、と乾いた笑いで制服に着替え始める。
 少し小さめのヒトミのパジャマを脱ぎさると出てくる華奢な肢体。その白いうなじや胸には無数の情欲の痕が残されている。
 普段のココロなら、こんな痕見られないようにものすごく慎重に着替えをする。西園寺はそんなココロをからかって楽しんでいたのだ。
 けど、今日はそんな身体の変かにも気付かないほどぼーっとしているようだ。
「じゃ、行ってくるから…お願い、な」
日曜日で、晴天で、夏で。
 普通のカップルなら海にでも出かけてしまいそうなこんな日に、ココロくんが図書館に行ってしまうなんて…。そして、それを許す英吏先生とは思えない。絶対、探しに行くと思うけど…。
「わかりました、行ってらっしゃい」
西園寺は、複雑な気持ちでニコリともせずに見送った。
 ココロの開けた扉が、申し訳なさそうに音を出して閉まる。
「おかしいのは…ココロさんですよ」
西園寺の呟きは、ココロ自身わかってることだ。

 こんな気分の時は、読書しかない!
 自分のモヤモヤも、英吏に感じるイライラも、嫌!こんな俺、絶対嫌。
 ココロは廊下をずんずんと怒り顔で進んでいく。すれ違う女子生徒みな、おかしな顔で振りかえったのは言うまでもない。
 まるで、何かありましたって顔に書いているようなものだ。
 そんなことに気付かないあたり、根元ココロくんなんだけど。
「失礼しまーす…」
ムダに広いLLCの図書館は、今日は開いているようだ。
 本が天井までびっしりと並んでいて、上のほうは一体どうやって取ったら良いのだろう…なんて、考えてしまうほど。
 で、なぜムダかというと。
「ほんっとに…ここ、誰もいないのな」
本大好き少年ココロは、ガクッと頭をうなだれる。
 図書館に興味のない生徒にわざわざ来てもらって騒がれるのも大嫌いだが、利用者が少ないというのも少し悲しい気がする。
 いや、こんなに本があるのに、なんってもったいないことなんだ!
 見渡す限り本の空間に足を踏み入れながら、LLCにいる間に図書館活性化計画なんて考えようか…なんて、ココロはホンキで思っていた。
「えーと…アレないかなぁ…」
ココロは普段から読みたがっていた小説を探し始める。本屋さんでもなかなかないその蔵書は、ネットでたまたま見つけてずっと気になっていたのだ。もしかしたらここにはあるかもしれない。
 と言っても、これだけの量がある図書館では、あるか、ないかを判断するのも時間を要する。
 でも、まぁ…今日は一日暇だし。
 ココロは手始めに一番近い棚から探し始める。
 けど。
「ん?」
なんだ…この本。
「んん?」
ちょっと待て、ちょっと待てぇ!
 なんか…タイトル…おかしくない?
 ココロはその棚全てのタイトルをざっと見回し、一番マシな『真夏の夜の誘惑』という本を手にとって中をみると…。
「うげぇっ」
それはいわゆる、官能小説ってやつだった。
 本好きのココロ、そういう小説があるのは知ってたけど…手に持ってみたのは初めて。まして、中を見たのなんて生まれて初めて。
「み…見なかった事に…」
ココロはそれをそっと定位置にそっと戻すと、誰にも見られてないかキョロキョロとあたりを見回した。
 まるで、初めてエロ本を買ってしまった青少年な心境…。
 ココロは改めて、本を探し出すことにした。
 もちろん、その棚は除外!記憶から抹消済み!
 けれど。
 隣の棚も、後の棚も、向いの棚も。全てそれ関係の本だったことは、ココロの頭を多いに悩ませた。
 やっとのことで、官能ゾーンを抜けたと思ったココロの目に、今度はもっとわけのわからないタイトルが並び始める。
「ん……何コレ」
さっきのはいかにも!って感じの大人がよむタイトル類が並んでいた。
 例えば『人妻の情事』や、『結婚前夜の過ち』なんて。
 けど、この棚にあるのは、背表紙のタイトルを見ただけじゃ、本当になんとも言えなかった。そこにあるタイトルたちというのは…。
「『アイツのスキャンダル』…?『保健室の冷たいアイツ…?』…?『強引にキスして気付かせて』……って何これ。」
ココロは無意識に一冊に手を伸ばし、『お金もないっ!』というタイトルの小説をひっぱりだしてみる。
 けど、その瞬間、表紙の挿絵がココロの表情を崩す。
「…………ぇ…あ、ええ?」
 ココロの顔が、真っ赤になっていく…。
 それは風邪を引いたからでも、まして夏の暑さのせいからというわけでもない。
 むしろ、図書館というのは、本を労わるために暑くもなく、寒くもなくという空間になっているものだ。
 では、なぜ?
 それは愚問だ。
 なぜなら、ココロが今しがた手から落としかけたその恐ろしい小説の表紙に全てが描かれていた。
 『お金もないっ!』と書かれたその本の表紙には、可愛い感じの男の子といかにもガッシリとしたスーツ姿の男が。
 そして、それだけならまだいいのに、男の子の方は、服を男に淫らに脱がされかけていて、あられもない場所を愛撫されている…そんな絵。
「な…何、何これ!」
 普段英吏ともっとすごいことをしてるココロなのに、さすがにこんな絵で表されしまっては、混乱せざるえない。
「何かありましたか?」
「うわぁぁっ」
 ただでさえ混乱中だったのに、いきなり後から声を掛けられて、心はすっとんきょうな声をあげてしまう。
「しー…。図書館ですよ」
 恐る恐る振り向くと、男にそう咎められる。
「あっ!!あなたは…」
 けれど、そこにいた男の姿にますますココロは大声を出してしまった。
「しー…!」
 再び注意され、咄嗟にココロは自分の持っていた小説本で自分の口を隠した。けれど、その本の絵を思いだし、慌てて自分の後ろの隠す。
「おや、どうかされました?」
「う、ううん…別にぃ…」
 冷や汗流しつつ、微笑んでかわして見せても、後の棚にある本はその類ばかり。俺は、自分がこういう本を読んでるなんて思われたくなくて、それとなく場所と話題を変えようとする。
「そ、それよりも…あなた!昨日の…」
「ええ、そうですね。驚かせてしまいましたか?」
 紳士的な落ちつきを払い、ジェントルマンな笑みを浮かべるその男は、昨日映画館でジュースを買うときに、英吏たちの好みを教えてくれたあの男。
 歳は…やはり英吏たちよりも年上に見える。20代後半くらいのすごく優しそうなお兄さんと言った感じの印象をうける男だ。
「え、と…あの、ここで働いてるんですか?」
 つまり、教師…?
 そうかと思ってたけど。だって、英吏や、宮たちの好みまでこと細かに知ってるのなんて、ここで働いてたりする以外、ありえないことだ。
「うーん……まぁ、そんな感じかな。だいたい図書館にいるんだけどね」
 男は言葉を濁すと、ココロに向ってちょっと困ったように微笑んだ。
 違うの?
 まぁ…、LLC女学園はよくわかんないから、他の仕事があるのかもしれない。
 ほ、他の仕事ってなんだよ…。
 妙な考えをしてしまって、ココロは真っ赤になる。
「どうかしたかな?」
「全然!」
 いきなり話しかけられて、ココロは焦って否定する。
「それにしても……女の子…いや、男の子でもこういった小説は読むんですか?」
「えっ…!?」
 ココロは言われた言葉に二つの驚きを覚えた。
 落ちつけ…。
 落ちつけ…。
 俺。
 まずは、一つずつ解決していかなきゃ。
「…男の子って………」
 今はちゃんと女の子な格好はしてる。
 制服着てるし…カツラつけてるし…。
「だって、君映画館で会ったって言っただろう。俺があったのは男の子だったと思うよ。確かに……女の子に見間違うくらい可愛かったけれどね」
「っ!」
俺ってやっぱりバカ?
 ってか、再確認しなくてもバカなんだっけかぁ…うう。
 俺が途方もなく落ちこんでいると、男は言葉を続けた。俺が…度肝を抜くような。
「でも、まぁ…僕は知ってましたけどね、君が妹さんと入れ替わってることは」
「ええっ!?」
「アイデアを出したのは僕ですから」
「は!?」
 俺は頭がクラクラした。
 つまり、ヒトミがこの人に…そそのかされて、俺はここに来るはめになったってことだろ。聞いてない!
「君が来たときに挨拶すればよかったんでしょうけど、僕はちょっとここにいなかったので…。えーと、ここの図書館司書兼、習字なんかも教えている新堂 新です」
 大きな手を差し出されて、ココロは流れで手を出してしまう。
 少しだけ差し出しただけなのに、手は強引に男の手中に収められ、ぎゅっぎゅと握られる。
 優男な感じなのに…ちょっと、強気な感じもあるのかな…?
 俺は疑うような感じになり、ついつい上目遣いになる。
 でも、これは俺が悪いからじゃないぞ!
 新さんが背が高すぎるんだよ〜!
 俺が自分を紹介するのを戸惑っていると、本当にヒトミから話しがいっていることを表すために、新さんは話し始める。
「市内の私立男子校に通う17歳。女性嫌悪症。3月3日生まれの〇型。押しに弱い性格で、趣味は…読書…当たりかな?」
「………当たり」
 まじでヒトミにそんな計画を建てさせたのかよ…コイツ。ありえない…いや、ここの教師に常識を求めることのが間違ってるのかなぁ。
「ヒトミくんがね、彼氏とどうしても夏休みを過ごしたいって相談してきてね、だったら…お兄さんを替え玉によこせば良いってアドバイスしたんだ」
 な、な、なんて余計なアドバイスを。
「僕はヒトミくんとよくおしゃべりしていたからね…まぁ、ここの利用者がヒトミくんくらしかいなかったからなんだけど。君の話をよく聞いてて…個人的に会いたかったからなんだけどね」
「え……?」
 ヒトミが俺の話しをしていたのも驚きだし、それにそれを聞いて会いたかったって…どういうこと?
「ま、それはいいとして…で、その本面白かった?」
 話しが急に戻されて、俺は二つ目の驚きの原因を忘れるところだった。
「ち、ち、違うっ!違うってばぁ〜!」

 「ココロがどこにいったか知らない?」
 ココロさんが出てってから30分しない頃、やはり来たのは英吏さま。
「………知りません」
「………そう」
 ココロがあれだけボンヤリしていたのに比例するように、英吏も本調子ではなさそうだ。いつもの、おかしいくらいに振りまいている王子さまスマイルはなく、今朝のココロのような憂いがある。
「何かあったんですか」
 普段、教師に別段仲良くなろうとしてない西園寺の始めての問いかけに、英吏は少しだけ驚いた顔をした。
 これが、他の生徒なら笑顔でかわすところだが、西園寺相手ではそうはいかない。
「……ココロくんが何か言ってたのかい?」
「彼なら言葉に発しなくても、誰でもわかる気がしますけど?」
 ココロのバカ正直なトコロを思いだし、英吏はフッと笑う。
「そうだね」
 ココロの全てが愛しくて、壊れるくらい愛を注いでいるのに、ココロはいつも浮かない顔をする…。
 抱いているときだけ…。
 ココロを自分のものだと感じられるのは…。
 そう思ってしまう自分が嫌になるよ。
 ココロの悩みがわからない。それが、恋愛の悩みならなおのこと。何を悩んでいるんだ…。君が恋愛しているのは俺だろう?俺の何が嫌…?俺の何が不満…?
 真実は口にしようとしないココロ。
 なぜ黙ってしまうんだ。
 どうして俺だけを見てないんだ。
 万人に優しくて、万人に同じ態度をとるココロ。
 そんな君を誇らしく思う反面、ものすごく不安になる。君は…俺じゃなくてもいいんじゃないかっ…て。
 そんなわけない。そんなわけないと自分に言い聞かせるたび、不安は募る。
 純真なココロが誰にもその身体を開くわけないとわかってる。けれど、あの魅力は麻薬で、いろんな男を吸いつける…。それが怖い。
 いつか、俺以外の男に不本意だろうと、本意だろうと抱かれてしまうんじゃないかって。たまに、妄想の夢にうなされて起きる時がある。
 ココロが他の男の腕に抱かれて、『じゃあね』って去っていく悪夢。
 そんな笑顔すら可愛くて、焦って引きとめようとして目がさめる。
 ココロ…ココロ…。
 どうしたら、君は俺を好きになる?
 今の君の気持ちを疑ってるわけじゃない。
 君が、俺を好きだといってくれて、愛してると囁いてくれて、足を開いてくれる君を疑ってるわけじゃないんだ…。
 ただ…。
 俺の目には君しか写っていないのに、君の目にはたくさんのものが写っている。
 君の周りのものを全て、全て壊してしまいたい衝動にかられる俺の心情を話したら、君はきっと怯えてしまうに違いない。
 ココロを手放しはしない。
 始めて抱いたときに、嫌われる覚悟をした。
 それは無理矢理にでも欲しがった俺の欲情した心を鎮める方法が思いつかなかったから。
 嫌でも側にいて、監禁してでも俺を受け入れさせて、一生愛しつづける。
 そう思った。
 ううん、思っている…。
 けれど、ココロが本当に嫌がっているって思ってたかな。
 どこかで、心のどこかで、俺は、ココロは俺をなんとなく好きなんじゃないかなって思ってたから、そんな行動に移せて、そんな考えをもてたんだ。
 だけど…。
 どうしてだろう。
 今はココロの気持ちが読めない。
 不安になる。
 心細くなる。
 抱きしめたい…抱きしめたいと思うけれど、もう誤魔化せない。自分の不安を。
 なんでも話してもらえないのは、俺がココロにとって、頼りない存在だから。
 俺はココロの恋人で。
 好いてる人で。
 でも、悩み一つ相談させてもらえない。
 憤る気持ちの処理方法がわからない。
 溜まりに溜まる気持ちは、ぐるぐると英吏の中を回りつづけていた。
「……戻ってきたら…伝言……。…いや、やっぱりいい。休み中失礼したね」
 英吏は下にうつむくと、踵を返して、その部屋から去ろうとする。
「いいんですか?」
 確認のタメにもう一度聞くが、英吏は首を振るばかりだ。
「ああ。じゃあ、楽しい休日を」
 そう言って出ていった英吏と入れ替わるように、入ってきたのは隣のクラスの女の子。英吏がいたせいか、きゃあきゃあと騒いで、勝手に部屋に入ってきた。
「ね、ね、なんで英吏さまがお休みにこんなところに来てたのさ!」
 うるさい子は嫌い。
 西園寺はあからさまにその子をそんな目で睨みつける。
「用事があったからでしょう」
「…根元ヒトミに?」
 なぜ、どうして刃先がそちらに向くのだろう。
 もしかしたら、私が思う以上に、英吏は学校内でココロに接触しすぎたのかもしれない。
 ヤバイ…気がする。
 そんな警報が西園寺の中で鳴り始める。
 女の子の情報ほど、不適切で身勝手なモノはない。
 噂は噂を呼び、すぐに校内中に散らばり始める。
「…私に。明日の会議の資料作り頼まれていたのを、どうやら間違ったみたいで」
 フォローしようとそう言ったのだが、少女は疑いの目をすこしも揺るがそうとはしない。
「ふぅん…まぁ、いいわ。ハイ、これ。手紙」
「手紙?」
「そう。差出人不明だけど、あなた宛よ」
 なるほど、初めてこの少女がなぜ勝手に入ってきたのかがわかった。この子は事務室に届いた手紙や小包を生徒に割り振る仕事をしている子だ。どっかで見たことがあるなぁとは思ってたけど、なるほど。そういうわけね。
「確かに渡したわよ」
「……ありがとう」
 やたらと偉そうな郵便少女から手紙を受け取り、西園寺は部屋のかぎをしっかりしめ、塩まで振ってから、部屋のベッドに腰掛けた。
 海外からのエアメール。ものすごい丸字なその字を書くのは一人しかいない。
 ヒトミだ。
 差出人は、わざと書かなかったというよりは、忘れただけだろう。ヒトミは結構そういうところがある。
 けど、今回ばかりは書かなくて正解だったかも。もし、書いてたら、あの子になにをされてたかわかったもんじゃない。
 西園寺は中の手紙を破らないように、そっと端を破り、薄い便箋を取りだす。
 それにはたった一言。
「金曜日に戻るねぇ〜!それまでお兄ちゃんよろしく」
 の気楽な文字だけ。
 でも…ということは…。
 あとココロがここにいるのは、今日を入れて五日ということになる。
「あと五日…」
 西園寺は確かめるように、呟き、手紙を机の中に隠した。
「今日も図書館ですか?」
 月曜の朝早くから、朝ご飯の時刻よりも早く出かけようとする俺に、西園寺は自ら声をかけてきた。
 別に悪いことしに行くわけじゃないんだけど・・・なんとなく、ドキンとしてしまう。
 それは・・・なんとなく自分でもなんでだかわかるけど。
 俺は土曜日から、あからさまに英吏を避けてる。
 自分でも悪いことだってわかってる・・・わかってるんだけど・・・。このままじゃだめだってことも。
 だけど、俺自身いまいち何にぐだぐだしてるのかわからないし・・・。
「う、うん・・・あのさ、また・・・悪いんだけど」
「英吏先生には言うな、でしょう。いいですよ、別に」
 相変わらずな西園寺の態度にホッとする。
 だって、前まではあんなに英吏にベッタリだった俺なのに、今じゃ会いたくないなんて言ってるんだ。普通の人なら、おかしいって詮索してくるはずなのに。西園寺は違う。
 俺、初めて西園寺がヒトミとルームメイトでよかったって思ったかも。
 女はやっぱり苦手だけど・・・。
「じゃ、俺・・・行ってくるね。あ、朝ご飯は行くから!」
 そういうと、ココロは逃げ出すように寮から出て行った。
 昨日は英吏先生、探しに行かなかったみたいだけど・・・。
 今日はそうはいかないと思うんだけど。
 ココロ激ラブで、恋は盲目中のあの先生が、二日もココロさんに会わずに生きてられるはずがないから。
「さあ・・・新先生が、どうでるか、ですね」
 今となっては、ココロに図書館なんて見せなきゃよかった・・・なんて、珍しく後悔気味の西園寺さんは、とりあえず朝の身支度を整え始めた。

「おはようございます・・・」
 ココロが図書館につくと、そこはもうクーラーガンガンで、涼しく。
 まるでココロが早朝から来ることを予想していたかのようだった。
 ココロは静かに挨拶しながら踏み込むと、頭上約四メートル上から話しかけれる。
「おはようございます、ココロくん」
 朝にお似合いなその笑顔を振りまいていたのは・・・ここの司書の新先生。
 どうやら、上の方の本を整理していたらしい。
 頭上数メートルある本棚にかけられた専用のハシゴから、するすると慣れた手つきで降りてくる。
「おはようございますっ。新先生」
「先生はいらないですよ。新さんで結構ですよ」
 うーん、でもやっぱり英吏たちより年上だから、緊張するっていうか、敬語使いたくなっちゃうんだよね。
「あ、じゃあ・・・新・・・さん?」
「うん、いいですね。なんか、新婚家庭みたいじゃないですか」
 うわぁぁ。なに言ってるんだよ・・・!
 そんなの英吏に聞かれたら・・・。
 って、俺・・・何考えてるんだよ。英吏はここにはいないし、ってかそもそも、なんで英吏が出てくるのさ。
 もう、いろんな嫌な事忘れたくて、いろんなこと考えたくて、一人になろうとしてるのに。
 一人になればなるほど、考えはだめなほう、だめなほうに向いてっちゃうし、すっと英吏のことを考えちゃう・・・。
 俺って中毒か、バカかどっちかだよ・・・これじゃあ。
 新といるのに、俺は変なことばっかり頭に浮かんできて、嫌になってきて、本を探すフリをする。
 本当は、本なんて読んでる気分じゃなかった。
 前は、読んでいるときはいつも幸せな気分だったのに。
 今は違う・・・。
 違う幸せを見つけちゃったから・・・。
 無意識に近い棚の本を手探っていた俺は、さっき新が降りてきたハシゴに思わずつまずいてしまう。
「うわっ」
 って叫んだのに、俺の体はフワリとした香りの中に飛び込んで、もちろん痛みもない。
 あ、あれ。
「大丈夫ですか?」
「ぁ・・・・・・・・・」
俺の体は向かい合わせで抱き合うように、新に受け止められていた。
 まずいってばっ!
 俺はふいにそんな考えが頭によぎり、新の体を押しやる。
「た、助けてくれて・・・ありがとうございます。も、・・・いいからっ」
 全然大丈夫じゃないって顔でいるココロは、真っ赤になってて。
 英吏とどんなに身体を重ねようと、どんなに唇を重ねようと、こういう肌が密着する行為がココロは苦手だった。
 というか、弱い・・・と言ったほうが正しいんだけど。
 けれど、身体を押しやったのに、新の身体は離れなかった。
 ど、どうして・・・!?
 慌ててもう一度力をこめてみれば、そちらから反発するように強い力で抱きしめられる。
「あ、新さんっ」
 何・・・どうして・・・。
 こんなの英吏に見られたら・・・。
 後が怖いのに・・・って、何、俺こんなときまで英吏のこと・・・。
 赤く火照る頬は何のせいなのか・・・。
 ココロはクッと唇を噛み締め、もう一度身体に力を入れる。
「離してっ・・・・・・」
「どうして・・・、あなたは言葉では嫌がっているようですが、身体はそうじゃなさそうですよ」
 新はそういうと、ココロの背中を怪しげなしぐさで撫でる。
 その撫で方に、性的なニュアンスを感じ、ココロは眉をひそめる。
 や・・・だ・・・っ。
「それに、言ったでしょう。私はあなたに興味があったから、ヒトミさんに入れ替わるように言ったんです、って」
 そういえば・・・そんなこと言ってたけど。
 で、でも・・・こんな状況で言わなくてもいいのにぃ!
 せめて、数メートル離れて、俺が落ち着いてから。
 それに、その言葉の意味・・・よくわかんないし。
「ココロくんはそうとう鈍い方だとお聞きしてましたから、ストレートに言って差し上げましょうか?」
 ますますぎゅっと抱きしめられて、本当苦しいんだってばぁ!
 俺は新の身体を離させようと、後ろに手を回し、夏だというのに英吏同様きっちり着込んだ高そうなスーツジャケットをシワになるくらいぎゅっと引っ張ってみる。
 もちろん、撃沈。
 ど、どうして、みんな俺より力があるのさぁ〜!
 しくしく・・・。
 トレーニングでもはじめようかなぁ。
「ココロくん、ちゃんと聞いてくださいね」
 いきなり新の声は、低く大人な声に変わる。
 普段の声が、柔らかい印象を受ける分もあって、ここまで変わると別人みたい。
 って言うか、英吏の声とちょっと似てる。
 声が似てるっていうか、この雰囲気とがか似てる。
 ドキンと胸が疼く。
「あなたが好きです」
「・・・・・・・・・ぇ」
「写真であなたをヒトミくんから見せていただいたときから・・・良い大人が一目ぼれですよ」
 ど、どうしよう・・・そんなこと急に言われても、俺、俺・・・。
 すぐに断ればいいのに、俺はなぜかその後の言葉が続かなかった。
 どうしてだろう。
「驚いた?」
 なんの反応も見せない俺に、まるで小さい子に尋ねるように新が聞いてくる。
 そういえば、俺、宮や京にも襲われかけたけど(いや、襲われた・・・か)、こうやって好きっていわれた事なかったから・・・対応がわかんないだ。
 ど、どうしたらいいんだろ。
 えーと、えーと。
「返事は急がなくていいですから」
 新はそういいながら、抱きしめていた俺の肩をつかむと少し離し、吐息がぶつかるくらいの位置でとめた。
「っ・・・・・・新さんっ」
 この位置のが、恥ずかしいです!
 俺は視線をそらし、新のほうをみにようにした。
 だって、だって・・・この人、本当、ちょこっとだけど英吏に似てるんだもん。
 だから、余計ドキドキしちゃうんだってば。
「俺、ダメ・・・っ」
 ようやく出た言葉は、必死に選んでこんな答え。
 これじゃあ・・・傷つけちゃう。
「何がですか」
「・・・・・・・・・好きな人・・・いるの。だから・・・」
 もうこういうの止めて・・・。
 けれど、新は相変わらずマイペースで微笑むと、あからさまに怯えている俺のおでこにキスをした。
「思うだけでもダメですか・・・」
「ふっ・・・・・・」
 新の唇が俺の唇に触れる。
 そんな状態でしゃべらないでよ・・・っ。
 まるで、キス・・・焦らされてるみたい。
 俺からしなきゃ、してあげない、みたいな感じに。
「んんっ」
 けれど、キスは突然やってきた。
 クーラーで冷え切ったその唇が、暑いところから来た俺の唇を冷やす。
「ぁ・・・・・・っ・・・ん」
 舌がゆっくりと伸びてきて、ココロの頑なで一途な唇を開き進んでいこうする。新の大人なキスは、こんな優男風でも場数を踏んでいるのか、濃厚で。
 少し厚みのある唇が、二人の隙間を埋めるように密着している。
 繋がっている・・・という感覚が、ココロの羞恥を誘う。
「ぅ・・・・・・嫌っ・・・・・・ダ・・・メぇ・・・」
 無言のキス。
 新は何も言わない。
 ただ、ココロの甘美な声だけが、本の犇くこの図書館で響きとおる。
 まるで、新はそれを楽しむように・・・。
 これが、大人のキスだよと教えるように。
 ぬちゃっとした音とともに、唾液が注ぎ込まれ、口の端から零れ落ちる。
 そんなのなんでもないかのように、新は気にせず角度を変えて、ケダモノと化した絶倫状態の舌を巧みに使い込んでくる。
「・・・・・・・・・っぁあん」
口の中の性感帯をつつかれ、ココロは思わず喘ぎ声をあげる。
 おかしいっ!
 英吏とじゃなきゃ嫌って思ってたのに、他の人とのキスにこんな声だしちゃうなんて・・・っ!
 そのことがココロを正気に戻らせたのか、ココロは背伸びしていた足を左右に大きくばたつかせ、無理やり身体を離させた。
「違うっ、違うっ違うっ」
 やめて・・・こんなの違うんだからっ。
 俺は必死に叫びながら、口からこぼれてくる、俺のだか新のだかわからない唾液を拭う。
「何が違うんですか」
 さっきまであんな情熱的なキスを無理やり仕掛けてきたとは思えない、目の前の男は、真顔で聞いてくる。
「ココロくんは少し、大人になったほうがいいですね」
 どういう意味・・・?
 俺、子供だけど・・・さ。
「本当の恋なんてどうやって見極めるんです?」
 この人は、俺が恋人同士でもないのに、キスに感じたことに嫌悪感を自分で自分自身に抱いてることについて言ってるんだ。
「もしかしたら、あなたは運命の相手を間違えたんじゃないですか?」
 なんだって・・・?
 どうして、どうして、そういうこと言うんだよ。
「あなたは私と出会うためにここに来たんですよ。運命だと思いませんか、そんな相手になら、キスに感じてしまってもおかしくない」
 変なこと言うなよ・・・!
 俺は、英吏が・・・。
「じゃなかったとしても、彼にとってあなたが運命の相手だとは限らないでしょう」
 ズキンという、大きな痛みが、胸から全身にかけて広がる。
 まるで、カチンカチンに凍らせたバラが、いともたやすく人の手に砕かれるような・・・そんなイメージ。
 考えたくないことだった。
 英吏と他の人のカップリングなんて。
 ううん、英吏には過去つきあったひとがいっぱいいて、俺はその中の一人に、なってしまうのが怖いんだ。
 怯え、震え始めた俺の肩を、新は優しく包んだ。
 割れ物でも扱うように。
 さっきまで、あんなキス…してきたのに。
 どうして、弱ってる俺を、そんな扱いするかな…。
 どうして。
「僕なら君を悲しませないし、悩ませませんよ」
 そうかもしれない…。
 そうかもしれないけど…。
 手足の感覚がない。
 可哀想なくらい、震えているココロの身体は、まるで雨に濡れた子犬のよう。
 無防備。
 英吏が見てたら、そう言って、ココロを咎めただろう。
 けど、今ここに英吏はいない。
 ガタン!!
「!?」
「誰です?」
 誰もいないはずの図書館の扉の方で、大きな物音がした。
 急いで振りかえってみたけど…誰の姿も無い。
 誰…?
 英吏…じゃあ、ないよね。
 英吏だったら、きっと逃げたりしないから。
 でも、とりあえず、この変な空気から逃れたことで、俺は少しながらほっとしていた。
 早く逃げなくちゃ…。
 焦る心がそう叫んでる。
 ここにいちゃいけない。
「ココロくん…」
「ぁ…あのっ」
 いい訳でもなんでも言って逃げ様と思ったのに、新は再びあのスマイルに戻ると、手をとって、まるでお姫さまに話すみたいに、跪いて、俺のことを見上げてきた。
「良い返事…待ってますから」
「っ…」
 俺は新から無理矢理手を引きぬくと、図書室を後にした。
 はぁ、はっ…はぁっ…。
 廊下を走る、ココロの息遣いが響く。
 寮に向って走ってるわけではない。とにかく図書館から離れたかった。
 ここにいるのも後少しなのに…どうして、幸せでいさせてくれなかったんだよ。
 どうして!?
 女性嫌悪症ながらも、とりあえずは幸せに生きてきたはずなのに、ココロの生活はここ、LLC女学園にきてから、激しく波打ってる。
 どうして…こんな。
 俺の人生の中に無かった出来事が、いっきに押し寄せて、ココロを悩ませ、苦しめる。
 何をどうしたらいいか、わからない。
 後少ししかいられないのに…っ!
 そこで、ココロの思考も、足もピタッと止まる。
「あと…少し…しか、いられないんだ…」
 すぐにソレが恐怖となって、ココロの胸に突き刺さる。
 あと少し…。
 ココロは反すうするように、胸の中で繰り返しその言葉を唱えた。

「見て!詩織さん」
 ココロたちのクラスメイトで、熱狂的な英吏ファン、道明寺詩織の前に掛けつけてきたのは、写真部の子。
 手には、今しがた現像してきたという写真が握られている。
「なんです、騒々しい…」
 もともとお嬢さまな詩織は、ラウンジのカフェで食後のコーヒーを飲んでいた。
 京が厳選した豆でいれるこれは格別。
 そんなことを言いながら、他の英吏ファンたちと、本日の英吏さまなんかについて語っていたところなのだ。
「これ……見てっ」
 写真は二枚。
 一枚は、車の中の写真で、運転席には英吏先生。横には。
「根元…ヒトミ…?」
 似てる…似てるけど、髪が短いし、少し黒めだわ。
 どういうことかしら。
 でも、これはとにかく、根元ヒトミだわ。
 あの子にそっくりな子なんて、いてたまるもんですか。
 最近英吏先生に近づいていると思ったら……まさか、車にまで乗ってるなんて…。
 詩織の持っていたコーヒーカップが、激しい音を立てて、テーブルに置かれる。
「詩織さん、そして、こっちがね……」
 もう一枚の写真は、今朝撮ったばかりのホヤホヤ写真。
 図書館でたまたま資料探しをしていたら、ある本だなの間から怪しげな声がする。喘ぎ声だ。
 LLC女学園で、喘ぎ声なんて珍しくない…珍しくないけど、ちょっと気になって覗いてみれば、それは…根元ヒトミと、新堂先生。
 しかも、熱烈ベロチュー現場。
 LLC写真部部長の名において、撮らずにはいられないシャッターチャンス!だったのだ…。
 詩織は見た瞬間、その写真をビリビリビリ…と細切れに破っていた。
「詩織さんっ」
「詩織っ」
 周りからは、詩織を煽る声がする。
 これは見逃せない現場だわ。
 さぁ、根元ヒトミを今こそギャフンと言わせるのよ!
 そんな、感じ。
「根元ヒトミ…あなたは英吏さまに手をつけただけじゃなくて、新堂先生にまで…」
 英吏に手を出すのも、もちろん気に食わなかったが、英吏に飽き足らず他の人にまで誘いをかけたのは、さらにムカツク。
「そ、そうだわ、詩織さん!あたしね…こんなのもってるのよ」
 詩織グループの一番下っ端にあたる、弱々しい印象の彼女が、珍しく詩織に話しかけた。
「何を持ってるの?」
「これ……加賀美様のアトリエで…たまたま見つけたんですけど…」
 その少女がリッチなブランドバッグから取り出したのは、一枚の画用紙。
「何…この絵」
 それは、絵。
 一枚のスケッチ。
 ただし………。
「顔は根元ヒトミだわ。間違い無い…。けど、これって…」
 どうみても身体は男。
 どういうこと…?
 詩織は、ギロっと、その少女を睨む。
「え、とあの、ね、わ、私は深くは知らないの…。本当にたまたま加賀美先生のアトリエに行ったとき、あったものだから…」
 こっそり持ち出してきたのだ、といい訳のように言う。
 フン、そんなこと…どうでもいい。
 とにかく、ここ数日であの子はおかしい。
 何かがおかしいわ。
「みなさん、参りますわよ」
「は、はい」
 女の子は怒らすと、男よりはるかに怖い。
 詩織は、お嬢さまの皮を破り、その本性を今、出そうとしていた…。

「…ココロがいない」
 生徒たちの食事が終わり、やっと教師たちの安らぎのティータイムがくる。
 この時間だけは、ラウンジに生徒は入れず、多くの教師が情報交換などを繰り広げていいた。
 そして、一番目立つそのグループはやはり、英吏たちのグループで。
 加賀美、京、宮、英吏の四人はそろって京の淹れたコーヒーを飲んでいた。
「とうとう、逃げられたのかな。まあ、それもありだろう」
 加賀美が言うと、英吏はキッとして睨んだ。
「ココロが俺から逃げるわけがないじゃないか」
 自身たっぷりに言う英吏。
 じゃあ、なぜ探しに行かないんだ。
 それは、今一番自分で自分に問いているところだった。
「…まぁ、英吏のその余裕ぶりもいつまで保つか見物だけど」
 宮が白衣のポケットに手を突っ込んで、熱いコーヒーをズズっとすすった。
「なんだって…?どういう意味だ」
 ココロと言うガソリンが切れた、英吏カーは、いまやヒートアップ寸前。
 無理矢理残り少ないガソリンで走っているようなものだ。
「新堂 新」
 京がその名前を出すと、辺りの空気がピタッととまった。
「……………まさか」
「そう。新堂さん、帰ってきてますよ」
「しかも、ココロくんの趣味は…読書なんだよねぇ」
「叶。絶対絶命ってやつだな」
 英吏はバンッとテーブルを叩き、その反動で立ちあがると、わなわなと振るえるその右手を左手で抑えた。
 新堂新…。
 一番、逢いたくなくて、一番ココロに逢わせたくない相手だ。
「くそっ……」
 やっとことの重要性に気付いた英吏がラウンジを飛び出したが…。
 そのころ、ココロはLLC女学園の一角で、頭を悩ませていた…。
 ココロ、帰宅まであと四日。

続く。
−11− | −13− | 教師。
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