ぱぱコン

−8− −10− 学生モノ


−9−


放心状態の愛実は、相変わらず高そうなマンションを下から見上げ、ボンヤリとしていた。
 時刻は12時過ぎだ。
 普通の人なら寝ているか、自分の時間として使っているかのどちらか。
 つまり、完全にプライベートな時間になる。
 愛実は雨に降られて上気する頬を抑えながら、少し冷静になってきた頭の中で考える。
 宵威の家に来たのは、あの時一度だけだし、もしかしたら両親が帰ってきているかもしれない。
「……迷惑、だよな」
 小さく呟き、踵を返そうとした瞬間、愛実の雨に濡れてぐしゃぐしゃの肩を叩く人がいた。
「愛実さん……?」
「宵威っ……」
 コンビニにでもいってたのだろうか、高級なマンションの人物には不釣合いな買い物袋を手に持った、会おうとしていた張本人が、怪訝な顔つきで愛実を見た。
 怪訝な顔もしたくなるだろう。
 いつもの愛実は好んでこの場所にはこないし、過保護なパパがついてる愛実が雨に濡れるなんて想像も出来ないことだ。
 それに、先刻まで泣いていたのか、目と目の下が真っ赤になり、潤んでいる。
 雨に濡れたせいで体調が悪いのか、赤みがましている頬がいつもより随分色香を漂わせていた。
 危険極まりない、無防備な愛実が一体こんな時刻に何をしに来たのだろう。
 宵威は少し舌打ちし、買い物袋を隠すようにして無言で、オートロックを外す機械の前に行く。
 手馴れた作業でピピピッとドアを開けると、そこでようやく宵威は口を開いた。
「……入らないんですか」
「え……」
 どうすることも出来ず、立ち尽くしていた愛実は咄嗟の問いかけに、躊躇したような声を出した。
 宵威はますますわかんなくなって、少しため息をつく。
 普段の宵威と態度が違う。
 そんな宵威の態度が妙な感じがして、首を項垂せた愛実は、身体から水を滴らせて高そうなマンションのエントランスを汚していることに気づき、慌てて自分から零れ落ちる水を止めようとする。
 けれど、そんな事上手くいく分けなくて。
 それを見ていた宵威は、愛実の手をやや強引に引き入れ、マンションの入り口の自動ドアの中に連れ込んだ。
「宵威……っ痛…」
「俺に会いに来たんでしょう」
 宵威にきっぱり言われて、愛実は声を飲み込んだ。
 ……そう、俺は宵威に会いたかったんだ。
 でも、でも……なんか違う。この宵威はいつもの宵威……じゃないんだって。
 そう思ってみても、その違いがなんなのかはっきり取れない上、もう戻れない状況で、愛実は戸惑いながらも、宵威の後ろに続いた。
 誰かの後ろを歩くという行為を、愛実は好いてはいなかった。
 男たるもの、堂々と先頭をきる!という、なんとも古めかしいというか、愛実らしい思考のおかげで、誉や薫と歩くときですら、わからない道をただひたすらに歩いた。
 そんな愛実のまっすぐな性格を考慮してなのか、宵威は普段決して愛実より先に歩くことはしなかった。
 男なれしていない、恋愛なれしていない愛実に恐怖感を持たせないための配慮だったのかもしれない。
 でも、今日は俺も、宵威もどこかおかしい。
 愛実は滴る雨雫を手でどうにかふき取りながら、宵威の進むがままにエレベーターに乗り込み、あの日、あの時以来のあの部屋へと向かう。
「……傘」
「?」
 こちらを振り向こうともしない宵威の突然の言葉に、愛実は情けなくもビクッと肩を竦める。
 そちらをみなくともそんな愛実の行動が読めてしまった宵威は、己の愛実に対する観察力に後悔する。
 無防備な愛実を前に、怒っているのではなく、切羽詰っているのは、普段は聖人君子な宵威その人だったのだ。
 少し自分より小さめの身長だから、自分を見上げる形になって、あの黒く蕩けるような視線を向ける愛実に、宵威は再びらしくもなく舌打ちしそうになって、どうにか抑える。
 エレベーターという個室は、宵威にとって、精神的にも理性的にもハードな空間だった。
 そしてまた、誉と薫の驚くべき一面を知ってしまい、動揺を隠せない愛実にとっても微妙な空間だった。
 だからなのか、こうやって話し掛けてくれた宵威の一言が嬉しくて、思わず見つめてしまう。
「傘……さしてこなかったんですか」
 宵威は自分の濡れた傘を示すかのように見せ付ける。
 そしてやはり、愛実の方は見ようともしなかった。
 いや、見れなかったといったほうが正しいだろう。
「ぁ……」
 愛実は何かを思い出したように頬を少しだけ染めた。
 雨で濡れて上気したこともあっただろうが、傘や雨やそのことを指摘され、自分が家を飛び出してきた経緯を思い出してしまったのだ。
 愛実の恥ずかしさを隠した表情が、エレベーターのドアのガラスに映る。
 自分の理性を信じきれず、ずっと愛実に背をむけていた宵威にすら見て取れる変化に、宵威はひたすら自身の拳を固め、自分に柵を強いる。
「うん……あの…ちょっと忘れてた…」
 愛実が嘘を付いていることは一目瞭然だった。普段嘘などつかない愛実にとって、こうやって面と向かって嘘をつかなければならないのは、他の人よりももっと難しいことなのだろう。
 波打つように激しく高鳴る心臓を抑えながら、どうにかこの嘘がばれないようにと願う。
 自身が握ったその衣服の感触で、それがパジャマであることを思い出す。
 高校生なのだから、今更キャラクターモノだから恥ずかしいということはない。薫見立てのブランド品で、シルク仕立てのようで、滑らかな肌触りをしている青色の寝巻きだ。
 他よりは高級品だからといって、決して着て外に出歩くものではない。寝具として作られたものだから、寝ているときでも着心地がいいようにとラフな感じにしたててあり、ワイシャツの用に象られた上は、Vネックが愛実の胸元まで伸び、雨に濡れ艶かしく光るその肌を揖屋らしく見せつける。水がかかったせいで、纏わりつくズボンは、愛実の太腿から、腰にかけての下肢にピタリと張り付き、その形の良さがくっきりと見て取れる。
 そして、まるで天使の輪のように煌き艶やかな髪から滴り落ちる水は、愛実の色っぽい首筋に降りかかり、よけいにソレを淫猥に光らせる。
 うっすらと、赤く痕の残る首筋を――。
「そう……ですか」
 宵威はそう返事すると、瞳すら閉じ、前なら嬉しいはずだった愛実と二人っきりの空間を完全に遮断した。
 自分がどれほど出来ていない人間なのかを通達して恐い。
 今、愛実に少しでも触れてしまったら自分が何をしでかすのかがわからず恐い。
 自らの内に秘めた狼のような乱暴な恋心が激しく飛び出してきそうで恐い。
 幼い自分の思考と戦うように、宵威はひたすら開放されることを祈った。
 この、残酷にも卑猥な性欲の檻の中から一刻も早く…と、そればかりを。
「下りますよ」
 ピンと鳴って開いたエレベーターのドアを前にして、急いで出たのは宵威。
 それと相対して一歩も足を動かさなかったのは、奥で俯く愛実だ。
 帰ってしまうのだろうか。
 少しだけホッとする中、何かもっと大きな虚無感のような孤独を感じ、宵威は上へのボタンを押しながら、未だピクリともしない愛実を見つめていた。
「……うん」
 愛実の小さな返事は、宵威の想像に反し、肯定的なものだった。
 愛実は小さく返事を返すと、何かわけのわからない物に怯えながら、その一歩を進めた。

 宵威の家はマンションの一角でありながら、そうは思えない。
 もちろん普通のマンションなので、二階などあるわけではないのだが、平屋のその面積で、優に愛実の家の大きさを追い越している。
 15階建ての15階のこの階には、信じられないことだけれど宵威の家以外の扉は見つけることができなかった。
 つまり、15階全てが、宵威の家なのだ。
「ただいま」
 そう囁いた宵威の言葉と裏腹に、この家には人の存在が感じられない。
 前着たときも思ったのだが、モデルルームのように綺麗で、埃一つ落ちていないようだ。
 愛実は、自分の両親がどんな人でどんな仕事かを詮索されない変わりに、宵威の両親が何をしている人なのか聞いたことがなかった。ただ、この状況と、前の事を考えてみても、あまり家にいることの無い人なのだろう。
 先に玄関から中へ上がった宵威の後に続いて、『おじゃまします』とでも言って入ればよかったのだが、自分は今雨で濡れているし、なんとも親もいないときに勝手にあがれない感じがしてずっと玄関で思案していると、宵威はそのまま一人でリビングのドアを開け、中に入った。
「……っ」
 愛実に聞こえないようにそっとリビングの中のソファを叩く。
 こんな時間に、あんな格好で、この場所に来るという意味をあの人はちゃんと理解しているのだろうか。
 いや、絶対にしていないのだろう。
「試してでも居るのですか…?」
 苦笑交じりにテーブルに広げていた愛実の写真を、巨大なテレビ脇の棚の引出しへと隠す。
 これは、自分で愛実を撮ったものでも、まして愛実に直接もらったものでもない。
 BL学園写真部の皆さんが、美麗生徒会長を日々追廻、追廻、そしてなおかつばれないようにして必死の覚悟で撮りぬいた、よりすぐりの一枚一枚だ。
 そして、それを部費を少しでも稼ぐためと、自分達の趣味の為に、写真部部員総勢18名(内18名が愛実ファン)が、お昼休みや放課後部室で販売しているものだ。
 部費というのは、BL学園はこれでも文武相応を目指している、列記とした強固な男子を育てる男子校なので、文化部よりも運動部に部費を回す傾向にある。
 その上、写真部は愛実が入学した昨年出来たばかりの部で、歴史が浅い、マイナー、実績が無いの三拍子のせいで、ほとんど部費がない。
 まぁ、愛実を撮りたいが為に結成した部と言っても過言ではないので、文句も言えないのだ。
 そして、趣味のためというのは、被写体としてこれ以上ないと思われているのが、愛実と宵威この二人なのだ。
 もちろん、まだまだ愛実の方が注目度は高いのだが、未だ一年生で学生会会長などをしている宵威は、これから上昇するであろう格好の上株。
 そんな二人を撮りたいといっても簡単には許可は下りない。その為、みんな必死こいて隠し撮りをして、自身の欲求を満たしなおかつ、それを販売し生計をたてていたのだ。
 そして、そんな隠し撮りに気づかない宵威様ではなかったのだ。
 もし、愛実にばれようものなら、写真は全部処分。買われたものから、フィルムまで綺麗サッパリ。そして、部は解散はもちろんのこと、恐ろしい結末が待っていたことだろう、
 けれど、しっかりもののくせにどこか抜けているBL学園一の美人よりさきに、その怪しい動きに気づいたのは、他でもない学生会会長芦屋宵威殿下だ。
 暗い校内で写真を撮るとなれば、フラッシュだってたく。学校の廊下や教室でフラッシュの一つくらい光っても別に気にはしないが、さすがに更衣室で光れば怪しくも思う。
 しかも、それが何度も。
 ちょっと罠をしかけて、犯人を炙り出せば、それは写真部員で。
 そのくせ、愛実や自分、その他見目のいいやつらの更衣室写真やあ〜んなショットこ〜んなショットを収めた写真を売りさばいているというのだ。
 自分やその他大勢はどうでもいいが、愛実の、となると話は別だ。
 自分だって欲しくてやまない愛実の可愛い写真を、こいつらはいともたやすく手にいれ、その上自分達が満喫した後は、販売にまでだして、一般生徒に売っていたというのだ。
 なるほど。それならば、前愛実さんの靴箱にへんな手紙を毎日入れつづけていた男が、愛実の写真をどこでゲットしたかが頷ける。
 まぁ、手紙は愛実の目に触れることなく、ちゃぁんと処分させていただきましたが。
 ……で、腸が煮え渡るほど苛ついていた宵威は、写真部廃部案や誰にもばれないように退学させて、この証拠すら消し去ろうなどと言う恐ろしげな事も考えたのだが、そこで一つの案を思いつく。
 自分だって喉から手が出るほど欲しかった愛実の写真だ。
 みすみす手放すのもどうなのか、と。
 そこで、自分達の行く末を不安顔で想像する写真部部員に、宵威はある一つの提案を発表する。
 それは。
 今まで通り愛実さんの写真は撮っていいけれど、それは全て俺に売ること。
 と言う、なんとも身勝手なものだった。
 いや、愛実大好き人間宵威をわかって考えると、至極当たり前のことかもしれない。
 ともかく、それ以来宵威はそれ以来愛実のフリーショットを取得するのに苦労はなかったのだ。
 夜の楽しみ……と言うと少し変態ちっくにも聞こえるが、とにかくそれを毎夜毎夜見て堪能していたのだ。
 宵威は頭の中に浮かび上がる煩悩を振り払うと、写真を棚の中にソッとしまう。そして、その棚の上から、今日洗濯しおえたばかりのふかふかのバスタオルを持ち、もう一度息を大きく吐くと、玄関へと続く扉を今一度開いた。
「あ……」
 そこには相も変わらず、ずぶぬれの愛実が少し困ったような顔をしてこちらをみていた。
「あがらないんですか」
「う、うん……お邪魔します」
 誰もいないことはもうわかってるだろうに律儀に挨拶をこなす愛実に、宵威はフゥとため息をつく。
「これタオルです。お風呂場はあの茶色の扉の中で……シャワーの出し方はわかります?」
 さっきまで少し不機嫌にもとれた宵威が、たった数刻たっただけでいつものように接してくるのに違和感を感じながらも、愛実は宵威の淡々とした説明を聞いていく。
「大丈夫」
「そう……じゃあ、俺は居間にいますから」
 シャワールームまで送ろうとしないのは、宵威の優しさなんだろうか。
 愛実は自分がシャワールームに向かうことすら見送らず、リビングへと戻る宵威の大人びた背中を眺めていた。
 その扉が閉められるまで。

 「ひゃぁ……」
 冷え切った身体に降り注いできた、暖かな温度に愛実は小さく声をあげた。
 普通は最初にシャワーを出したら、それなりに冷たい温度の水がでるものだから、もしかしたらさっきまで宵威が浴びていたのかもしれない。
 ふと頭の中に宵威の事が浮かんできて、愛実は再び曇った表情で鏡の中の自分を見る。
 怒っているのかな。
 だとしたら、何に?
 困っているのかな。
 だとしたら何に?
 悩んでいるのかな。
 だとしたら何に?
 どれを考えてみても、自分に行き着くのは、これは自惚れなんだろうか。
「宵威……」
 どうしようもなくて、ここまで来ちゃったけれど、これはどうしてなんだろう。
 さっきから出てるこの問いの答えは、すきだから。
 俺はどうしようもなく……宵威が好き。
 ……みたいなんだ。
 それは男同士で、俺が最も嫌っていたものであって。
 俺はすぐにそれを公に出来るほど、馬鹿でも天才でもない。
 だから悩むんだ。
 そして、その悩みは果てしなく広がる。
 誉、薫……。
 俺はその名前が思いついた瞬間、シャワーのノズルを弄って、それまで俺を綺麗に流してくれるかのように零れていた水を止めた。
 裏切られたとか、悔しいとか、恥ずかしいとか、そういった感情じゃないんだ。
 これは。
「……っ」
 なんて表現して良いかわからない。
 愛実は飛び出るようにバスルームから飛び出すと、タオル一枚を身体にまといそのままの姿でリビングのトビラを開いた。
「愛実……さんっ?」
 ずぶぬれのままの愛実がドアの前で、あの黒い瞳を濡らしこちらを見つめている。
 どんな事にも寛容な宵威でも、この状況には驚いたのだろう。ソファに座ったまま、冷たい愛実の身体を抱きしめることもできずにいる。
 落ちついていた気持ちが、落ち着きすぎたせいで全てを思いだし、弾け飛んでしまったのだ。
 愛実は宵威の姿を見ると、ホッとしたのか、その場に座りこむ。
「誉と……」
 愛実がその一言を言った瞬間、宵威の顔つきが少し変った。
 愛実の口から、隆二さんや正宗さんの名前が出ても別に妬きもちなんて妬かない。
 それは、愛実がその二人の事は友達だと決めているのを知っているから。
 でも、あの二人は……違う。
 誉さんと薫さんは、愛実にとってパパなんだろうけれど、愛実の最愛の人達で、そして愛実に一番近い男だ。
 昔、愛実さんたちと誉さん、薫さんの関係を可笑しいと言った少女を、俺は許さない。
 それは愛実さんに対する冒涜だ。
 でも、その少女の気持ちがわからなくもない。
 きっと、きっと……その少女は愛実さんを好きだったのだ。
 だからこそ、可笑しいと思ったのだ。
 俺も思ってしまう。
 普通、ただの息子にそこまで執着するものか?
 自分の両親が非情で無情な人間で、実の息子にすら愛を注がない人間だからなのか、俺の頭に家族愛と言うものは存在しない。
 でも、実際に仲の良い家族がいる事も見とめるし、それが作り物だとも言わない。
 じゃあ、何かと聞かれたら、そこに恋人を思うような愛があるのだと思えてならない。
 妻に恋をする夫、そして、夫に恋をする妻。
 それに惹かれるようにして出来た子供たちに、愛情が移らないわけがない。
 それでこそ、仲の良い家族なのだ。
 誉さんと薫さんの間に愛があるのは構わない。
 でも、実の息子でもないかもしれない愛実に、あれほどの愛があるのは可笑しいと思ってしまうのだ。
 もちろん、世の中には実の息子じゃない子を、猫かわいがりする義親だっていっぱいいるけれど……。
 どうも誉さんや薫さんはそれだけじゃない気がするんだ。
 何も、何も保証はないんだけれど。
 そして、その何の保証もない疑いは、俺を始終嫉妬に狂わせる。
「誉と薫が……」
「どうしたんです?」
 話そうと言う気はあるのだけれど、なかなか先へ進まない愛実の言葉を推し進めるように、宵威が聞き返した。
「その……っ」
 続きを渋る愛実の顔が、どんどん真っ赤になる。
「!?」
 その反応から、宵威はまさか、と言う結果に行き着く。
「……誉さんと薫さんがセックスしていたとか…?」
「っ!」
 宵威の直接的な単語に、愛実は驚いたように宵威を見ると、すぐにうつむいた。
 赤かった顔が少しだけ冷めたようなそんな気がする。
 やっぱりそうか……。
「……で、貴方はどう思われたんです?」
「……俺?」
 あからさまに動揺している愛実に、宵威は冷たく聞き返す。
 何故それを貴方が気にしなきゃいけないんです?
 この世に、親の営みの最中を見てしまった子はいっぱいる。
 そう言った子たちはそりゃ気まずくなったり、なんだかイケナイ気になるものだけれど、 でも…。
 愛実さんの反応は過敏過ぎやしないか?
 確かに自分より身長も低いし、身体も細いし、美しい顔立ちは中性的で魅力的だけれども、この人は高校二年生の大の男なのだ。
 普通、そんな人が、ここまで動揺するものなのだろうか。
「俺は貴方が好きです」
 いきなりの宵威の告白に、普段言われなれているのに愛実は気恥ずかしくて目を逸らす。
「俺が好きなのは貴方だ。……だから、誉さんや薫さんの話しなんて俺には全く関係ない話です」
「……そう……だよな」
 話をする前から拒絶されたような言いぐさに、愛実は落ちこみながらも正論だと感じてた。
 なんで俺、宵威に相談しに来たんだろ……違うじゃん。関係……ないのに。
 愛実は濡れた身体のまま重たい足を1歩ずつ後ずさりし、扉からバスルームへと続く廊下へと出ようとした。
 しかし…。
 バンッ!
「宵威っ……」
 そんな愛実の行動を全て支配するかのように、両手を愛実の頬をかすめ両側につき、首を振ることすらままならないほどの近さで拘束する。
「逃がすわけないでしょう……」
「宵……んっ……」
 噛みつくようなスピードで荒々しく唇を奪われる。
「っ…ふっ…んんっ」
 くぐもった声が愛実の口の透き間から漏れるだけで、声や言葉は聞こえてこない。
 宵威は堅く壁につけた両手の右手だけを離し、愛実の水の滴る髪に絡ませる。
「っ…もぅ……止っ…」
「止めませんよ」
 宵威は愛実のもがく足や、必死に自分の胸を押し返してくる手を静止させるかのように、低くダークな声で囁く。
 その声に一瞬怯んだ愛実にさらに身体を密着させ、宵威は愛実の唇を犯し続ける。
 喉まで進入してくるのではと思われるほどの宵威の猛った舌の動きを、愛実は倒れこみそうになりながら必死に逃れようと避ける。
 けれど、巧みな宵威のキスは、宵威のキスに慣れた愛実の口内を縦横無尽に突つき、撫で、口腔にある愛実の性感帯を弄くる。
「っ…駄っ……ぁ…」
 呼吸すらままならないキスは、逃れ様としていたはずの愛実の腰を砕き、愛実はその場に座りこんだ。
 なおも態勢を変えてキスを続ける宵威の瞳が、涙で潤んだ自分の目の間から垣間見えた。
「あ……」
 恐ろしく獰猛で、今まで一番……怒っている気がする。
 あの長谷川の事件よりも。
「宵威……」
 愛実が動けなくなった事に安心したのか、宵威は10分近く繋げていたその唇を離す。
 甘い余韻が愛実の頭を駆け巡り、離れる瞬間どちらのものとも言えない蜜が唇の端から零れ落ちる。
 宵威はそれをイヤラシク指で全て掬うと自らの唇へと持っていき、さっきまで愛実の口内を荒らしたその舌で舐め取る。
 頭が蒸発するかのような時に与えられたキスよりも、正気になってから行われるそんな行為が嫌で、愛実は自らを包むたった一つの布――宵威の香りのするバスタオル――の端をぎゅっと掴む。
「関係ないんだろっ!……なんで、こんな…」
 そう叫んだとたんに、溢れかけていた涙が零れる。
 男なのに…年上なのに、なんでこんなっ!
 虐められているような気分に陥るんだっ!
 愛実はとっさに涙を両腕でぬぐう、けれどどんなに擦っても目は赤くなるだけで、涙は消えてくれない。
「関係ないさ…関係なんてあるもんか!あの人達のことなんか、俺たちの間に何も関係ないじゃないですかっ」
 宵威は愛実の両手を掴むと、床に組み敷いた。
 愛実は無防備にさらしていた自分のあられもない姿を思いだし、顔中が赤く火照るのを感じた。
「止めろ…離せっ……!なんでこんな事するんだっ」
 愛実は唯一自由に動きまわる足で宵威の腹部をけるけれど、宵威はそんなの気にせず愛実の足を割り開き、その中に自身を収める。
「愛実さん……誉さんや薫さんは貴方にとってなんなんですか」
 突然の宵威の真面目な問いに、愛実はムッとしながら答える。
「親だよ…父親だって……言ってる」
 正直な気持ちを告げたのに、宵威の拘束は解かれない。
「ウソツキ……」
 たった一つ宵威の口から零れたのは、そんな残虐な言葉。
 けれど、今の宵威にとって、残酷なのは愛実の言葉だったのかもしれない。
 わけがわからず、放心する愛実の身体に、宵威は唇を落とす。
「っ!!」
 さっきまで唇で繋がれていた為か、唾液が溢れ、すぐに愛実の胸の飾りを濡らした。
「しょ……威……なんで…何、わかんな」
「俺と……」
 ギリリと手首にしがみ付くように拘束してくる宵威の手が痛い。
 愛実は押し当てられる宵威の胸と、力に反逆するように宵威を見つめ返す。
「俺と誉さんと薫さん……一緒に崖から落ちそうになっていたら、愛実さんは誰を助けますか…?」
「ぇ……?」
 宵威の強気だった瞳が、急に泣きそうに見えた。
 なんで……?
「俺じゃないんでしょう?」
 零れる。
 何が?
 何もかもが。
 感情も、恋心も、涙も。
 そう思った瞬間、俺の目からも、宵威の目からも涙が零れていた。
「俺じゃ……ないんでしょうっ!」
 ガツッんと言う音が耳元で聞こえた。
 宵威が右拳を強く俺の頭脇に打ったんだ。
「宵威……」
 つとめて優しく名前を呼んだつもりなのに、宵威はそんな俺の声に耳も貸さない。
「俺が毎夜、毎夜貴方にどんな欲望を抱いているのかも知らず、こんな狼の巣にのこのこ来れるくらいですからね」
 宵威はそう言いながらも、愛実の身体を愛撫し続ける。
「ぁっ…何……どういう意味…っ」
「まさかいくら貴方でも、いつものアレだけでセックスだなんて思ってはいないでしょう」
「あっ……っ」
 宵威の潤った舌先はどんどん下降し、愛実の下肢を愛でる。
「ココを弄って出すだけ出すなんて……おままごとじゃないんですから」
「ひっ……んっ…ぁっ」
 愛実の既に勃起している部分を焦らすように舐め回し、完全な刺激は与えないまま、宵威はそこから舌と手を離す。
「貴方が今晩ここにこなかったら、俺はナニをしていたか想像できますか?」
「何って……っ…」
 宵威は悪戯に笑うと、愛実の欲望のもっと奥。今まで少しも触ろうとしなかった、でも最も触りたかったその場所に指を移動する。
「ひゃぅっ…」
 二人が寝ている場所はフローリングの床だから、そんな事したら痛いだろうに、愛実はそれでも我慢できず頭を後に仰け反る。
「一人エッチ……ですよ」
 愛実の奥まった恥部の廻りを指でなぞりながら、宵威は愛実の耳元で、睦言を囁くように告げる。
「貴方の写真を見て、貴方の悶える姿をおかずにして……自分でするんですよ」
「止めっ…ヤダっ…やだっ」
 拘束がとかれた手で耳を塞ごうとする愛実をさらに煽るように、宵威は言葉を続ける。
「汚いですか?ふしだらですか…?貴方だってするでしょう」
「ぅっ…んっ…も…止めて…宵威…お願いっ」
 普段から強気で凛々しい愛実が、必死に懇願する様子を見て、宵威はさらにサディスティックな気持ちになる。
 自分をいつも恋の病に苦しめるくせに、可愛くて、清楚で、純真無垢で。
 真水のような貴方。
 油が流れ込み、どろどろに汚れたような自分。
 けれど……・
 でも。
「自分でも、自分が怖いくらいに貴方が欲しいんです…っ」
 言葉を叫んだ瞬間、宵威は愛実のそこに自らの唾液と愛実の精液で濡れた指を挿し入れる。
「ああっ」
 普段何もにも犯されるべきでない場所に異物を感じ、愛実は甲高い悲鳴を零す。
「誉さんや薫さんに出来ない繋がりが欲しいんです」
「あっ…あああっ」
 目に見えない場所で縦横無尽に動き回る宵威の指を感じ、愛実は目を見開いたまま涙を流す。
「俺は愛実さんにとって…何番目に大切な人間ですか?」
 痛みに堪え宵威を怒ろうと、宵威を見上げると、宵威の目から大粒の涙が流れている。
 なんで…?
 どうして……?
 こんな酷い事されてるのに…。
 どうして俺のが悪い事した気になるのさ。
「ぅああん…ひっ…痛っ…あっ宵威っ」
 指を三本に増やすと、宵威は指をクの字に曲げて愛実の内壁を弄る。
「俺には誉さんも薫さんも……関係のない人です」
「……っ…ぁあ」
 痛いに、恥ずかしいのに。
 ぐちゅぐちゅと音を出して動かされるソコは、気持ち悪いほどに濡れている。
 張り裂けそうな自身の欲望に、愛実は顔を背ける。
 自分の身体が自分で制御できないなんて事があるなんて知らなかった。
 ダルイような気すらする身体全てが、宵威の手や舌や感情でコントロールされているようだ。
「俺が欲しいのは貴方だけ」
「宵威…宵威…っ」
 しがみ付くものがなくて、その人がこんなに自分を苦しめているって知ってるのに、宵威の肩にしがみ付く愛実は、まるで小さい子のように震えていた。
 荒くなった吐息のまま、宵威はそんな愛実を抱きしめた。
「俺を貴方のモノにさせてください」
 宵威はそのまま自身の身につけていたジーンズの前を開くと、熱く大きく猛ったソレを取りだし愛実の入り口に押し当てる。
「ぁあん…宵威……駄目…俺…っ」
「そう。宵威です。芦屋宵威が今から貴方を抱くんです」
 手で先を入り口に擦ると、それだけで愛実の肉壁は畏縮した。
「しょ…ぃ……」
 怖い。
 怖くない。
 怖い。
 怖い…?
 宵威が何をするのかわからない。
 自分でこれを望んでいたの?
 違う。
 怖い!
 めまぐるしく廻る頭の中の感情に、身体がついていかない。
「もっと呼んで!俺の名前を…。宵威って…っ」
「あああっ!」
 グイッと押しこまれる圧迫感。
 怖いほどの熱。
 そして、これまでに感じた事のない痛み。
「っ…ああっ痛いっ…もっ…ああっ」
 悲痛にも似たその叫びに、宵威は顔をしかめる。
「愛実さん…呼んで…お願いだから」
 抱きしめ、頭を撫でても、愛実の口からは叫びと、苦痛と、拒絶の言葉しか漏れない。
 小さくすぼまった愛実のソコでは、宵威の全てを受けれいるのにはかなりの苦痛を感じているはずだ。
 それでも、ここまで挿れてしまっては、引き返せない。
「も…嫌ぁ…抜いてっ…お願い…もぅっ駄目っ」
 全てを押しこむと、今度は早急な動きで抜き差しを始める宵威の動きについていけず、愛実は涙を流し、宵威にお願いをする。
 けれど。
「呼んで……下さい…っ」
 自分以上に悲痛な面持ちで腰を揺らし続ける宵威の言葉に、わけもわからず答える。
「しょう……い……」
 叫び疲れ、掠れた声で、愛実は途切れ途切れになりながら、どうにかその名前を発する。
「もっと……」
「宵…威…」
「もっと、もっと…愛実さんっ」
「ぁっ…宵威っ…ン…宵威ぃっ」
 壊れちゃうのかと思った。
 溶けてしまうのかと思った。
 俺はなんて残酷な事をしたんだろうと思った。
 いつでも悩んでいるのは自分だけだと思っていた。
 でも、宵威は。
 このだだっ広い部屋で、俺の事を思って、悩んでいたんだ。
 ずっと、ずっと、ずっと。
「ごめん……なさ…」
 人に謝る事など出来ない愛実の言葉に、宵威は酷く辛い気持ちになる。
 謝られてしまったら。
 ごめん、なんて言われてしまったら。
 自分のしている事を改めて考えてしまうから。
 大好きな人を、一番最低で最悪な方法で責める。
 この行動を。
「……愛実さんっ……」
「あぁあんっ……」
 音が聞こえた。
 何かが切れたような、何かが溶けたような、何かが壊れたような。
 ぐちゃぐちゃに混ざり合った二人の蜜は、なくなることはなく。
 二人の身体に放たれ、白濁とした痕が余計にいやらしく愛実を飾る。
 微かに聞こえる愛実の吐息が愛しい。
 愛実の中から抜け出すと、宵威は愛実の額や頬や首筋にキスを返す。
 誉さんや薫さんが貴方にとって大切なのはわかる。
 わかるけれど……。
「百年待っても貴方の心が得られない気がするのは……俺が弱いからですか」
 勝てない。
 金も、地位も、男としての魅力も、愛実からの愛も。
 あの人達が愛実に抱いているのが、本当の親子愛だとも思えない。
 嫉妬だ。
 どろどろに燃える灼熱の業火のような嫉妬。
 この人を監禁し、いつまでも繋がっていられればこの思いは軽くなるのか。
 いや、違う。
 俺はこの人が欲しい。
 全てが欲しい。
 感情も。
 でも感情だけじゃ足りない。
 心も、身体も、過去も未来も現在も。
 全て全て全て。
「俺の事……まだ思い出しませんか?」
 俺が貴方のトラウマになってればいいのに。
 ゲイ嫌いが俺のせいならいいのに。
 違うんだろう……けど。
「愛実さん……」
 床に倒れこむように気を失っている愛実を抱きかかえ、宵威は自身のベッドルームに愛実を寝かせる。
 本当は自分もその横で愛実を見つめ、抱いて居たかったけれど、もし愛実が目覚めて、隣にいるのが俺だと……きっと愛実さんは驚き、拒むから。
 俺はそんな愛実さんを見て、理性がもたないと思うから。
「謝りませんから……俺」

 そう泣き出しそうな顔で告げると、宵威はマンションを後にした。
 愛実が起きて、家に帰るまでは……どこかで頭を冷やそう、と。

 宵威がマンションを出てフラフラしていると、いつのまにか学校近くまで来ていた。
 定期を使って電車に乗ったのだから、当たり前といったらそうなんだけど。
 
「……?」
 BL学園は、その辺の婦女子達にどう見られているか知らないが、規律正しい男子校だ。
 その文武両道の男子を養うその男子校の前に、朝の五時過ぎだというのに、見なれた真っ赤な4WDが止まっていた。
 宵威は自らの目を疑う事なく、小さくその名前を呟く。
「誉さん…」
 男の姿は見えなかったのだけれど、そう呼ぶと、車の影から一人長身な男の姿が見えた。
「お前っ……!」
 男はやはり愛実のぱぱの一人、誉で。
 宵威の姿を見つけると、血相を変えて近づいてきた。
「愛実さんを探していたんですか」
「お前なんでそれ……まさかっ」
 目を吊り上げて息を呑む誉に、宵威は少し微笑みながら宵威の手を払う。
「ええ、愛実さんなら家にいましたけど」
「貴様っ…!」
 叩かれると思った瞬間、瞳すら瞑らず見ていると、その横にいつのまにかいたのか薫さんがその腕を止める。
「……愛実はどこ」
 誉さんの腕を掴みながら、薫さんは抑揚のない声で言う。
 この人……本当に愛実さんにしか興味ないんだな。
「3時くらいまで俺の家にいましたけど……今はわかりません」
 本当に心配しているのだろう姿を見ると、皮肉も嘘もつけなくて、宵威は正直に告げる。
「本当だろうな」
 薫さんに止められた手を渋々下げると、誉さんはそれでも虚勢を張り俺を問い詰める。
「本当だよ」
 俺の変りに薫さんが答えた。
 確かに、この人は愛実さんに似ているかもしれない。
 けれど、親子にはどう見ても思えないんだけど。
 年齢的に見ても、ありえるようなないような微妙なとこだし。
「十六歳の息子が一晩帰らなかっただけで、親ってそんなに心配するものですか」
 俺の言葉に、二人は気まずそうに顔をうつむかせる。
 ああ、そうか。
 あんなシーンを見られたんだっけ。
 睦んでいる場面を見られたら、気まずくもなるか。
 薫さんは急に顔をしかめると、その場に倒れこんだ。
「薫っ」
 普段憎まれ口を叩いていそうな二人の関係が、一変して見えた言葉だった。
「……愛実が帰ってこなかったら……俺…俺……っ」
 普段は男の大人で、田宮家で一番しっかりしているように見えた薫さんは、顔面蒼白で支えている誉の腕に顔を埋める。
「大丈夫だ……必ず見つける。俺の……せいなんだし」
「違う!……俺だ。俺が全部……っ」
「お互い様だな」
 二人の会話をずっとただ聞いていた宵威は、ポケットから鍵をとりだし、ぎゅっと掴む。
 悩んでいるのは、俺だけじゃない。
 まして愛実だけじゃない。
 みんな、みんななのだ。
 今は、嫉妬や皮肉に気持ちを荒んでいる場合ではない気がしたんだ。
 宵威はキッとして顔を変えると、二人に向き直った。
「すみません。俺、愛実さんを抱きました」
 馬鹿正直な宵威の言葉に、落ちこんでいた薫の顔も、それを心配していた誉の顔も一変する。
「な、なんだとーっ」
「……死にたいのか、ガキ…っ」
 二人の想像通りの態度に、宵威は両手を腰にあて、二人を見下す。
「セックス現場見せた貴方がたとは同罪でしょう」
 しゃあしゃあと言ってのける宵威に、二人は怒りマークを頭の端に浮かべる。
「何が同罪だこのガキ……っ。俺の愛実に…俺の愛実に…っ」
「……絶対許さない」
 愛実がいなくなったこととか、それ以上に、愛実の貞操を奪った事は誉たちの頭をそれでいっぱいにさせる。
 気力と怒りのみで立ちあがろうとする薫に、宵威は苦笑しつつ、その薫に殺される前に退散しようと捲くし立てる。
「俺だって愛実が好きなんだよっ。世界で一番愛実の事を愛しているんだからなっ。抱きたいと思って同然だろっ」
 カミングアウトと言うか、開き直ったと言うのか、真顔で言ってのける男に、二人は怒りが最高潮に達する。
「好きなら何してもいいと思うのかっ!だからガキなんだお前はっ」
「ガキですよ。ガキだから……自分も苦しむし、愛実さんも苦しめてしまう」
 ぎゅっと握った手は汗ばみ、決して解かれることはない。
 愛実さん……好きです。
「俺も愛実さんを探します。いいですよね」
 よくない、と言われても探すけど。
「……愛実が見つかったあと殺してやるから、覚えとけ」
 薫さんの恐ろしい言葉に、宵威は一礼すると駆け出した。
 それは、愛実がマンションを飛び出た1時間半後だったけれども。
続く。


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